「ワーク・エンゲージメント」を高めるために
こんにちは。キャリアコンサルタントの松岡澄江です。
みなさんは「ワーク・エンゲージメント」という言葉をご存じでしょうか?
「ワーク・エンゲージメント」とは、働く人が、仕事に対してポジティブな気持ちであること、いきいきと、やりがいを感じて、熱心に取り組んでいる状態のことをいいます。仕事に「働きがい」を感じている状態ですね。
厚生労働省の「労働経済白書」令和元年版でも特集されていて、最近注目のワードです。
【資料】「労働経済白書」令和元年版 - 人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について - より抜粋
「働きやすさ」は採用成果にも直結するが…
この白書では、人手不足の緩和のために企業は「働きやすさ」や「働きがい」を高める雇用管理の改善に取り組むことが大切だといっています。
確かに、少し前までは「働き方改革だ!」「女性活躍推進だ!」と、社員が働きやすい制度の充実が叫ばれていました。残業削減、在宅ワーク、時差出勤、育児休業制度や介護休暇制度、誕生日休暇の創設等、各企業の「働きやすさ」を叶える制度もかなり整ってきています。
働きやすい会社=いい会社、というイメージも強くなってきました。
いまや就活生も、福利厚生やワーク・ライフ・バランスを大切にしている会社かどうかをチェックしています。「各企業ともに着手が早かったのはそのせいなのかな?」と感じるほど。
人手不足の時代、働きやすい環境が整っていることは、とくに採用において大きな効果を発揮するのです。
「働きやすさ」と「働きがい」は両立しない?
けれど、キャリアコンサルタントとして長くキャリアに関する相談を受けている中で直面するのは、「働きやすさ」だけでは実は人が定着しないという現実です。
ある大手IT企業にお勤めの方からキャリア面談で相談を受けました。
相談の内容は、一言で言えば「もっと働きたい!」でした。その企業は「働きやすさ」がとても充実していることで有名な企業です。
「もっと社会に影響を与え役に立つ仕事をしたい」
「もっと自分の成長を感じる仕事がしたい」
「もっと挑戦したい」
なんとも切実な叫びに思えました。
もっと働きたいのだけれど、厳しい残業規制があってあきらめなければならないこともあるそうです。
職場でも、就業時間の範囲内でできることしかやらない雰囲気ができあがっているそうで、新しいことや挑戦的なことは敬遠されてしまい、上司に提案しても通らないことが増えたといいます。
仕事に前向きで向上心がある人は、挑戦する機会を求めて離職を考える人もいるのです。
働きやすい職場環境は、もちろん社員の定着に一定の効果を発揮すると思います。ですが、それだけでは十分ではなく、仕事への意欲や仕事での成長の機会といった「働きがい」を、どうやって生み出していくのかを考えることが、これからの組織には求められているのだと感じます。
なぜわかれる?テレワーク歓迎派/苦手派
新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために、急遽、テレワークを導入した企業も多かったと思います。コロナ禍で働き方は大きく変化しました。
この自粛期間中に複数企業の社員のみなさんにオンライン面談を実施しましたが、テレワーク勤務では、従業員の能力や生産性の差が見えやすかったのではないかと感じています。
「テレワークは仕事上のメリットが多く歓迎している」と話し、在宅勤務でも想像以上に仕事ができることを実感している人は少なくない印象でした。
しかしその一方で、不安や戸惑いを訴える人も一定数存在したのです。
この違い、いったいなぜ生まれるのでしょう?
コロナ禍で見えたハイパフォーマーの存在
オンライン面談でみなさんの本音に耳を傾けながら、「テレワーク下でもパフォーマンスを落とすことなく、モチベーションも保って働けるのはどういう人なのだろう?」と考えました。
分析すると、以下の3つの特徴があるようです。
① 仕事への習熟度が高い
その仕事に対する習熟度が高いほど、自分が何をすればいいのかがわかっていて自分で考えて動くことができ、特に不便を感じることが少ないようでした。一方で新入社員や転職したばかりで、まだ仕事を学んでいる、覚えている最中の社員は、与えられる仕事の範囲も限られるため時間を持て余す傾向にあり、このままで自分は大丈夫なのかと不安が高まっていました。
② 主体的・自律的に仕事をしている
自分の判断で動くことができるのか、指示・命令を待って動くのかで、仕事に対するモチベーションに差がでていました。裁量も持ち仕事の自律性が高い社員は、仕事に対しても意欲的ですが、受動的な立場の社員は上司や他のメンバーと距離が離れていることでコミュニケーションができないとやることが増えないため、仕事への意欲をなくしていく傾向がありました。
③職場での信頼関係を構築している
会社と、上司と、先輩や同僚と、すでに信頼関係がある社員は、精神的にも落ち着いていますし、自分からコミュニケーションを取っていくことができるのに対し、信頼関係が持てない社員は、上司とのテキスト中心のコミュニケーション(メールやチャット等)では十分にお互いの意図を伝え合うことができずに亀裂が入る事例もありました。
仕事への習熟度が高く自律的に働ける社員は、いわゆるハイパフォーマーであり会社にとって貴重な存在です。このようなハイパフォーマーが社外に流出しないためにも、組織が「働きやすさ」と「働きがい」を並行して考える重要性が高まっているといえるのではないでしょうか?
「働きがい」を高めるには?
先に紹介した「労働経済白書」では、働きがいの高め方について以下のように提示しています。※太線は筆者
「働きがい」を高める取り組みとしては、職場の人間関係の円滑化や労働時間の短縮などに加えて、上司からの適切なフィードバックやロールモデルとなる先輩社員の存在を通じて、将来のキャリア展望を明確化することが重要である。
人材育成については、「指導役や教育係の配置(メンター制度等)」「キャリアコンサルティング等による将来展望の明確化」「企業としての人材育成方針・計画の策定」等を実施することにより、労働者の働きがいが向上する可能性が推察される。
以上から、
〈組織〉人材育成方針・計画を策定して社員に明示していくこと。
〈職場〉上司のフィードバックが適切に行われること。
〈個人〉自分の将来を明確にイメージしながら、仕事に取り組むこと。
…というように、組織・職場・働く個人それぞれが、働きがいについて考えていくことが大切なようです。
従業員がこのコロナ禍に何を考えたのか?
そして、どんな働き方を望んでいるのか?
今後、どんな未来を描いているのか?
組織はまず、社員の今の思いを積極的に把握することから始めましょう。
ポスト・コロナ時代の組織活性化は、組織が働く人に対してどんな「働きやすさ」と「働きがい」を提供できるかにかかっていると思います。
キャリアコンサルタントの私は、「働く人がいきいきと自分らしいキャリアを築くことができる社会の実現」をめざし、キャリア面談で働く人のホンネを聴くことで、「ワーク・エンゲージメント」(働きがい)を感じる組織づくりのお役に立ちたいと思っています。
松岡澄江(まつおか・すみえ)
国家資格キャリアコンサルタント、研修講師
ブログ「自分らしい生き方・働き方を考える」
【お知らせ】 7月21日(火)
松岡澄江さんを講師に迎え
「ワーク・エンゲージメント」セミナーを開催します!
この記事の筆者であり、さんぎょうい株式会社が提供するはたらく女性の健康とキャリアプログラム「mezame(めざめ)」のキャリアコンサルタントでもある松岡澄江さんが、組織活性化や社員の働きがいなど「ワーク・エンゲージメント」をテーマにしたセミナーに登壇されます。
7月21日(火) 15:00〜
Zoomを使用したオンラインセミナーです。
ぜひご参加ください!
▼▼ 下記リンク先よりお申し込みいただけます。
ワーク・エンゲージメントを高めるオンライン面談
キャリア面談を通して、社員のキャリア形成や御社の組織活性化をお手伝いするサービスも実施しております(期間限定)。
▼▼「人事支援オンライン面談」
《提供》さんぎょうい株式会社