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選択肢が多い女性の人生だからこそ考えたい「ライフプランニング」

みなさんは、自分の「ライフコース」を考えたことがありますか?

ライフコースとは、ひと言でいえば「生き方の道筋」です。
いつ、どのタイミングで何を決断し、何を選択することによって人生のその先をどう進むのか、といった導線のことを指します。
“キャリア”の語源である“轍”(わだち)ともイメージが重なりますね。

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▲「キャリア」の語源は馬車の轍といわれています。歩んできた人生の道筋そのものがキャリアなのです

生き方を選べる時代になったぶん新たな悩みが…

統計から導き出した日本女性のライフコースは、平均値であっても時代によってこれだけ変わってきています。

【図1】統計で見た平均的なライフコースの変化

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▲厚生労働白書平成24年版より抜粋

〈1920年〉
平均寿命がまだ60歳代前半だった1920(大正9)年。
いまよりも20年以上短い人生の中で、5人前後の子どもを産み育てる女性が一般的でした。人生の大半を育児に費やす一生だったことが想像できます。

〈1961年〉
それから40年ほどたった1961(昭和36)年、戦後の高度経済成長期を境に女性のライフコースは大きな変化をとげました。
学校を卒業後に一斉就職を行い、20代で結婚。専業主婦となって平均2〜3人の子どもを出産する人生が定型化します。

〈2001年〉
さらにその40年後の2001(平成21)年になると、初婚年齢や第1子出産年齢の上昇が見られますが、なにより特徴的なのが平均寿命の著しいのび。
平均的な子どもの数が3人から2人へと減少していることもあって、妊娠期間、育児期間は短くなっているのですが、夫の定年退職以降の期間、さらに夫が亡くなった後の期間も大幅に長くなっています。

そこで、これまでになかった「子育て後をいかに生きるのか?」という新たなテーマが生まれてきました。

また近年は、ずっと専業主婦として暮らす女性の数も減少していますし、社会の変化や価値観の多様化などによって、生涯結婚をしない女性や子どもを持たない女性も増加。ライフコースの多様化・非定型化が進んでいます

「多様化・非定型化」というと少し難しく聞こえるかもしれませんが、つまり、いまの女性は妻や母としてだけ生きるのではなく、ひとりの人間として、自分らしい生き方を自由に選び取れる状況にあるということなのです

どんな生き方を選んでも悩みと不安がつきまとう

「自分らしい生き方を自由に選び取れる」ことは喜ばしいことです。
いまのような世の中になるまでには、たくさんの先輩女性たちの努力や苦労がありました。

しかし、そのような状況で生きるということは、同時に数々の選択に迫られ、岐路に立つたびに自分で決断し続けなければいけないということでもあります。
とくに女性の場合は、結婚・出産・育児といったライフイベントが仕事にもダイレクトに影響するために、男性よりもはるかに選択と決断の回数が多い傾向にあります。

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学校を卒業して仕事に就くまで、男女でライフコースに大きな違いが生じることはありません。

しかしその後、男性の場合は職業を太い軸とした人生が引退するまで続いていく人がほとんど。結婚しても子どもを持っても、その軸が太く成りこそすれ、細っていくケースはあまり多くありません。最近になって介護離職の問題が、ようやく男性が当事者として発信されることが増えてきましたが……。

ところが女性の場合、20代後半くらいから、まず「結婚するか否か」という選択肢で悩む人が出てきます。「パートナーの意向によっては仕事を辞めるかもしれない」「仕事の大変さに家事の負担が加わったら続けられるのだろうか?」という不安が頭をもたげます。
また、結婚を意識し始めると、次に考えなければいけないのは「子どもを持つのか否か」。持つのであれば、それはいつ頃、何人?という想定もしておかなければいけません。
さらには、結婚・出産を機に退職して専業主婦になるのか、仕事も継続する両立型なのか、いったん仕事は辞めるけれど時期を見て再就職するのかでも道は分かれます。両立型を選んだ人は、育児期間中は多少のキャリアダウンを覚悟しつつ無理のない働き方を選ぶのか、家族の協力体制を作ったり外部サービスを活用して育児も仕事もフルに頑張るのかなど、ライフコースのみならず、働き方、暮らし方を具体的にイメージし、そのための準備をしておく必要もあるでしょう。
もちろん、結婚をしないという選択もありますし、結婚しても子どもは持たない、逆に子どもは持っても結婚はしないという選択もあります。

ここに、正社員のまま働き続けるのか、時間に自由のきく派遣社員やパートタイマーに切り替えるのか、独立・起業をするのかといったワークスタイルの選択肢も加えると、現代女性のライフコースはまさに無限にあるといえそうです。

ライフプランを立てれば思考も行動も変わる

そして、自由に選び取れる喜びがある一方で、どんなライフコースを選んでも、そのコースを選んだがゆえのそれぞれの悩みがあるようです。
その理由のひとつが、日本女性のライフコースがこの数十年で急激に変化してきたから。

祖母・母・娘の各世代でも生き方、常識がまったく異なるため、お手本となる先人が少ないのです。それどころか、「私の時代はこうだった」など、職場でも子育てでも各世代の価値観がぶつかり合うことも多く、女性の心身に新たな問題を引き起こす要因にもなっています。

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「生き方のお手本なき時代」だからこそ、いまを生きる現代女性のみなさんにとって、ライフプランニングを行うことはとても重要です。

人生には予測外のことがたびたび起こりますから、プラン通りにならないこともあると思います。それはまったく構いません。
転機ごとに見つめ直して、そのときに最適と思われるプランにどんどん書き換えてOKですし(むしろそのくらいの柔軟性があった方がいいと思います)、目標が達成できなかったからといって、落ち込んだり自分を責めたりする必要もありません。

ライフプランを立てることによって「自分が送りたい人生、望んでいる生き方」がわかる。まずはそのことが重要です。

望んでいる人生の形が見えれば、「そのために何が必要なのか」「何を考えなければいけないか」「いつどのようなことをすればいいのか」が自然と浮き彫りになってきます。

目標が見えることによって、考え方や行動の基準ができる。
明日から、そこに向かって進むことができるようになる。

それがライフプランを立てるメリットです。

それでも「どんな風にしたら良いかわからない」という方のために、今回はちょっとした考え方のヒントをお伝えしたいと思います。

やってみましょう 「ライフプランニング」

今回サンプルにするのは、いろいろな選択肢があるなかの1つとして「いずれは子どもを持ちたい」と考えている場合のライフプランニングの一例です。ご自身のプランを立てる際の参考にしてください。

まず、大前提として知っておくべきは、生物学的に妊娠に適した時期は、キャリアを形成する時期、つまり仕事がおもしろくなってくる時期と重なっているということです。

そしてもうひとつ、現在ご両親が健在の方なら、子どもとしての立場上、いずれ両親(あるいは義両親)の介護にあたらなければいけない時期が来るかもしれないことも念頭に置く必要があります。

仮に、親の介護が発生する時期を40代半ば〜60代までと固定すると、シンプルに以下のようなパターンが考えられると思います。

【図2】子どもを持ちたい人のライフプランの例

ライフコース

◆プランⒶ 「産むのが先!」派

まずは出産を優先し20代で出産。その後、育児が落ち着いた30代に入ってからキャリア形成に本腰を入れるプランです。
他のプランの女性に比べるとキャリア形成が先送りされる不利があります。出産前のキャリア形成が不十分だと、30代に入ってからゼロからキャリアを積まなければいけなくなる可能性もあるので、出産前にどこまで仕事経験を積むのか、職業人として成長するのかを考えておくといいでしょう。

若いうちに出産をすると、親が育児に協力してくれる、成長した子どもが親の介護に協力してくれる可能性があり、メリットの1つと考えられます。

◆プランⒷⒸ 「キャリアが先!」派

プランⒷは、現在の日本女性の平均的なライフコースです(2018年時点で日本女性の初産年齢は30.7歳)。
ここから、初産年齢が遅くなるごとにプランⒸに近づいていき、育児期間と親の介護が重なるリスクが高まります。

また、Ⓒに近づくごとに妊娠する確率が低くなるので、状況によっては不妊治療を受ける可能性も想定しておいた方がいいでしょう。「子どもが自立するまでに経済的に支えられるか?」も考慮したい条件です。

育休復帰後のキャリアは、保育所やベビーシッター、その他人的ネットワークなどの整備がポイントになります。また、職場のワークライフバランス推進度の見極めも大切ですし、上司、同僚、パートナーの理解度を深めておく必要もあるでしょう。

役割と選択肢があふれている女性の人生だから

いかがでしょう。「出産」を軸に少しイメージしただけでも、これまで考えていなかったいろいろなことが頭に浮かんだのではないでしょうか?
「出産は30代になってから自然に任せて…と思っていたけれど、もう少し前倒しで考えた方がいいかもしれない」など、自分の中で変化を感じた方もいるかもしれません。

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ライフプランニングを行えば
「自分が望む人生を送るための前提条件が何なのか?」
「必要な情報はどのようなものなのか?」が見えてきます。

例えば子どもを持ちたい人にとっては「やはり妊娠出産に関する正しい知識は不可欠ですよね」といった具合に。

結婚するのかしないのか、子どもを持つのか持たないのか。持つとしたら何人で、いつどのタイミングで産むのか……。
結婚・出産だけをとっても、女性の人生には選択肢があふれています。

それは、女性にとっての権利(自己決定権)であり、基本的人権のひとつでもありますが、産みたいと思った女性が出産を叶え、子どもやパートナーとともに送る幸せな人生を実現するためにも、「ではどうするのか」「どう叶えるのか」をぜひ考えてほしいと思います。

私たちも、出産・育児と仕事を両立しながら、より子どもを育てやすい社会、キャリアを充実させられる仕組みも、みなさんと一緒に考え、作っていきたいと思っています。

■ 文/西岡 笑子(にしおか・えみこ)
防衛医科大学校 医学教育部 看護学科母性看護学講座教授。順天堂大学医学部非常勤講師。順天堂大学医学部助教、神戸大学保健学研究科准教授を経て現職。母性看護学・助産学とウィメンズヘルスが専門分野。2児の母でもある。mezame女性研修の監修を行う。

(構成/阿部志穂)

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