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許せないヤードポンド法の単位3選

アメリカに住み始めてしばらく経ち、生活にはほとんど適応しました。こちらに来て始めのころにはDMVで身長・体重をヤードやポンドで書かされたり、図面に書かれた謎のクォーテーション記号に悩まされたりしていました。そんな私でしたが、現在ではすっかりヤードポンド法にも慣れてしまい、「華氏から摂氏は32引いて9分の5掛ければ良いな」だとか「1 inは2.54 cmだな」だとか「1 lbは0.454 kgだな」といった具合で覚えなくても良いものに容量を割き、無駄にスラスラと出てくるようになりました。
そこまで進化(?)した私でも、どうしても許せないヤードポンド法の単位がいくつかあるので、その内の3つをご紹介します。

Btu

仕事や熱量の単位です。次元的にはJ(ジュール)やCal(カロリー)と同じです。空調やガスコンロの能力を表すのに使われているのですが、許せないポイントは名前です。
BtuはBritish thermal unitの略で、直訳するのであれば英国熱量単位になります。自国の名前を単位に入れ、あまつさえそれを標準単位として広めようとしていたとは恐ろしい話ですが、フランスを見倣って欲しいものです。しかも、主張しすぎないようにBtuと略すことで、こっそりと浸透させていたのです。あまりに巧妙に隠されていたせいで、一時期イギリスアレルギーになっていたアメリカがそのまま使用し続けてしまうほどです。
ちなみにBtuはBのみ大文字にするのが正しく、BTUは間違いだそうです。

inH2O (IWG)

水柱インチは圧力の単位です。賢明な読者の方々は既にお察しの通り、mmH2OやmmHgなどのお仲間です。そもそも、メートル法を基準とした水柱ミリメートルや水銀柱ミリメートルですら許しがたいのに、水柱インチなど許容できるはずがないのです。
圧力の単位は日本でよく使われているものだけでも沢山の種類があり、Pa、kgf/m^2、Torr、atm、bar、mmH2Oなど勘弁してくれと言いたくなります。
単位が違うと、同じ定数であっても値が変わることがあります。代表的なものには気体定数Rがあります。圧力にPa、体積にm^3を使うと8.31となり、圧力にatm、体積にLを使うと0.0821になります。こういった都合から単位は統一されいるほうが良いのですが、inH2Oはそれに真っ向から逆らうかのような単位です。
inH2Oは水の関係する圧力を表示する際によく見かける単位です。例えば差圧式レベル計の出力であったり、排水処理槽内の圧力であったりといった具合です。しかし、それ以外のところで使われることはほとんどなく、誰も他の単位への変換式など覚えていません。結果としてこのメーターの数値がこれ以上(以下)だったら異常ね、というような慣用的な使われ方しかしないのです。
なお、ヤードポンド法で最も良く使われる圧力の単位はpsiですね。

°R

華氏温度版の絶対温度でランキン度と読みます。多くは語りませんが、お願いですからケルビンを使ってください。

余談

今回は選外としましたが、重量を表すtonも中々のカオスになっています。元々ヤードポンド法の単位であったtonは現在イギリスで使われている英トン(ロングトン)、アメリカで使われている米トン(ショートトン)、メトリックのトンの3種類に分かれています。

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