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『東大合格発表』

2021年3月10日に東京大学の合格発表がありました。
これで今年度の一連の入試もほぼ終了となり次年度へ向けての新たなスタートとなります。東大の合格発表というと

<東大合格者数高校別ランキング>なるものが毎年発表されますがどうやら今年も合格者数第一位は開成で144名のようです。


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【東大合格者数ランキングの変遷】

『日比谷一強時代の終焉』

東大への合格者数は都立高校入試で学校群制度が導入された1967年までは
日比谷高校が長年にわたりトップで1964年には193名の合格者を出して現在の開成のような状況で<日比谷一強>時代でした。この記事については

今年度も続くか? 都立日比谷の復活劇

といった表題で以前記事を書いているのでご覧いただきたい。

その日比谷に替わりトップの座を奪ったのは<灘>です。
関西の灘高校が何故、東大合格者を多数輩出したのか?
その理由は灘の創設に深く関与した加納治五郎氏にあるようです。
柔道家として有名な同氏ですが長く東京師範学校の校長を務めてもいました。そんな関係から灘には東京師範学校出身の教師が多く、彼らが生徒たちに東京の話を良くしたために灘高校の生徒たちは関西の大学より東大を目指すことが多くなったようです。
この時期から灘と同様に地方の学校から東大に多数の合格者を出すことで有名になったのが鹿児島のラサールでした。

その後1970 年代は東大合格者数トップの座は

灘・筑波大付属駒場(通称:筑駒)・開成の3校が入れ替わりで争っていました。しかし1982年以降、新たな時代へと変化します。

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『開成ダントツ時代スタート』

1982年に初めて開成がトップになりました。
この現象を生んだ最大の理由は1974年に開成が高校入試の募集定員を100名に増やしたことです。
元々、同校の大学合格実績に大きく寄与していた高校入学組の増加により
その生徒たちが卒業し始めた頃から同校の東大合格者数は増加し始め、
ついに1982 年にトップの座につきました。
以降、今年まで40年間にわたり開成は一度もトップの座を譲っていません。
まさに<開成ダントツ時代>でありこの状況はまだ当分続きそうです。


『ランキングに見る特筆すべき学校TOP5』

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<第1位>桜蔭(オウイン) 

文句なく進学実績No1の女子校
従来より女子校としてはダントツの東大合格者を輩出してるが近年はさらに勢いを増し昨年は 85名で全国第3位。今年は71名で6位。さらに最難関 の理科3類(医学部)へ2桁近く合格するモンスター級の女子校。

<第2位>聖光学院

神奈川にある中高6か年の男子校。以前は神奈川の私立校といえば栄光学園が最も有名でしたが、その栄光に肩を並べさらに近年では栄光をしのぐ合格実績。
東大合格者数も昨年は62名で8位。今年は79名で4位。

<第3位>渋谷教育学園幕張(通称:シブマク)

千葉県の男女共学の私立校。近年の進学実績の伸び率は間違いなく全国でトップ。東大へは昨年が74名で5位。今年は67名で7位。
共学校としては進学実績全国第1位の存在で業界では<渋幕の奇跡>とも言われている。

<第4位>西大和学園

奈良県にある1986年(昭和61年)設立の進学校。設立以来、進学実績に重きを置くことで有名。地域柄、京都大学への合格者数ではつねにトップ争いをしているが今年はついに東大合格者数でも76名で第5位に躍進。
関西地区では灘に次いで進学実績を出す学校。

<第5位>都立日比谷高校

誰もが知る公立の雄ともいうべき伝統校。全校挙げて進学実績強化に取り組んだ成果がメキメキと表れ、東大合格者数は昨年が40名で13位にまで復活。
そして今年は63 名で8位とベスト10に入る。この勢いで行くと数年後には100名突破してトップ争いに割り込むことが濃厚。

*日比谷高校と同様に注目すべき公立高校がもう1校あります。
神奈川県立横浜翠嵐高校(よこはますいらん)です。
東大合格者数でみると昨年の26名で第24位から今年度は49名で第10位とついにベスト10 入りと急上昇。
*両校とも学区制の撤廃で都内・県内全域からの受験が可能となり優秀な生徒(特に女子)が入学するようになったことが最大要因となります。
*従来は神奈川県立高のトップは湘南高校が有名でしたが近年は横浜翠嵐に替わったと言えます。
(神奈川県の進学塾の間では翠嵐高校の合格者数をめぐって熾烈な競争があると言われるほどです)

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『着実な合格者数を輩出する県立高』


東大合格者数で上位を占める私立勢ですがその中にあって毎年着実に合格者を出す公立(県立)高校勢の存在も見逃せません。
浦和・大宮(ともに埼玉) 千葉・船橋(ともに千葉) 横浜翠嵐・湘南(ともに神奈川) 土浦第一・水戸第一(ともに茨城)などの関東地方の学校以外に注目すべきは岡崎・旭丘などの愛知県勢が例年上位にランクインします。
このことからも愛知県受験生は関西よりも東京志向が強いことが伺えます。

『地方受験生の東大離れ=医学部へのシフト』 

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最近の東大合格者数高校別ランキングに於ける顕著な特徴はベスト10 に入る学校の殆どが首都圏の中高一貫校であるということです。
(今年度は関西私立の西大和や関東の公立の日比谷・・横浜翠嵐高校が
 ベスト10入りしましたが昨年までのここ数年間は灘高校以外は全て首都圏の中高6か年
 一貫教育校でした)
これは先述した聖光学院・渋谷幕張に代表されるように首都圏の新興勢力の
学校の台頭はもちろんですが、ラサール(鹿児島)久留米大付設(福岡)愛光(愛媛)などに代表される地方の私立進学校や県立トップクラスの高校の生徒の中に<東大離れ>現象が進んでいることも大きな要因と思われます。
東大を出て公務員(官僚)・一般企業へという道よりも将来の人生設計を考えた場合、医学部へ入学し医師となる選択をする生徒が多くなっています。
つまり東大受験生の医学部志望へのシフトが進んでいます。
但し医学部の場合、私立大の学費は非常に高額になるためそこは避けて、
従来東大を受験するはずの理系志望(場合によっては文系志望も)の生徒が
地方(地元)の国公立大の医学部受験へと移行しています。
現在では殆どの国公立大医学部の偏差値が東大の理1・理2と同列となっています。
この流れの結果・延長線として私立大医学部の受験戦線も年を追うごとに
難化傾向が進み私大医学部の下位校でも合格偏差値が早慶の理系学部と
同等もしくはそれ以上にまでなっています。

少し極端な言い方をすると現在の大学受験の最大のテーマは
<東大受験>か<医学部受験> 

医学部VS東大-800x450


の二拓になっています。

現在は大学受験予備校・塾の殆ど(全てといっても良い)が東大受験か医学部受験をメインテーマに掲げているのが現実です。

この大きな流れ・傾向は当分の間続くと思って間違いないかと思います。


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