「好きだよ」「確かにね」
僕は彼女に言う。
「好きだよ」
彼女はすぐさまこう答えた。
「確かにね」
いや「確かにね」ってどういうことやねん。そこはベタに「私も好きだよ」とかじゃないん?「確かにね」と答えられた僕は、何て返事をすればいいか分からないよ。
「ま、まあ、僕が君のことを好きなのは確かなことだけどね。あははは」
もう彼女は反応しなかった。
おもむろに目を開けると、いつもの天井が広がる。
起きしなだというのに、彼女の顔はもうすでに朧気だ。無理に思い出そうとすればするほど、その面影が薄れていくような気さえする。
昔の彼女に似ていたような似ていなかったような……。
ただひとつだけはっきりとしている、彼女と僕が再び逢うことはないということは。
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