シナリオの書き方【中級編】ドラマ①
【drama/ドラマ】
この言葉ほど、日本で曖昧かつ多くの誤解を受けて広まった言葉はないと思います。
一般的に日本で【ドラマ】というとテレビドラマの事を指しますね。
もちろん映画にもジャンルとして【ドラマ】が存在します。
恋愛、ホラー、クライム、サスペンス、コメディ、歴史、アクション。様々なジャンルがありますが、それ以外を【ドラマ】と捉える傾向があるのは近所のレンタルショップのラインナップを見ていただいても明確だと思います。
特に日本人にとって【ドラマ】とは確たる派手な特徴も出来事もなく、なんとなく地味な印象のジャンルとして浸透しております。
海外の制作現場ではシナリオを制作会社に持って行った時に、
まず一番に何を判断されるかご存知ですか?
それは『【ドラマ】があるか、ないか』です。
【ドラマ】のない作品は一瞬でボツになります。
【ストーリー】があるのは当たり前。
その【ストーリー】に【ドラマ】があるか、ないか?
恋愛も、ホラーも、クライムも、サスペンスも、コメディも、歴史も、アクションも、どのジャンルにおいても【ドラマ】の無いシナリオは即刻ボツとなります。
では【ドラマ】とは一体なんなのでしょう?
ここからは少しつまらない語源の話になりますが、少しお付き合いしてください。
そもそも「Drama」とはギリシャ語で "行動" を意味する言葉が鈍ったものです。
ギリシャはギリシャ悲劇でおなじみのように古代演劇が大変発達しました。そもそもは日本の能のように神殿にて神への奉納の為に行われたのが始まりのようです。ステージの上で "行動" する事によりストーリーを表現した事で "ドラマ"という言葉がそのまま "演劇" という概念に結びつき "ドラマ=演劇" と認識されるようになります。
その為【drama/ドラマ】は英語において現在もそうですが、ジャンルの他に、演劇を意味します。ですので "I watched drama." と英語で言うと"テレビドラマを見たよ" ではなく "演劇見たよ" と思われてしまいます。(あとは映画のジャンルだと思われます。)
また悲劇(tragedy )が大変人気を博した影響で、そもそも演劇=ギリシャ悲劇と認識されて世界へ広まっていきます。その広がりに大きな役割を果たしたのがローマ帝国です。【Drama】は演劇=ギリシャ悲劇という意味を持ってラテン語に取り入れられます。
ギリシャ悲劇といえば話の細かい筋は置いておいて、主人公がこれでもかというくらい、次々と難問に襲われ、その都度、悩み、争い、葛藤し、最終的には自滅しゆく…というのが基本です。
そう、これこそが【ドラマ】の真の意味となります。
大事なのはもちろん『最終的には自滅しゆく…』の部分ではなく
『登場人物が難問に襲われ、悩み、争い、葛藤し』の部分です。
これに、もう1つ付け足しましょう。
『…解決策を導き出す』と。
シナリオに置ける【ドラマ】とは通常【葛藤/conflict】と訳されます。
もしあなたのシナリオに「ドラマが無い」と言われれば、それはシナリオの中に【葛藤/conflict】が無い事を意味します。
前回まで、延々と言葉の意味の説明を続けてきましたが、全ては【ドラマ】をきちんと把握していただくための物です。
ただし、いきなり【ドラマ=葛藤/conflict】と言われても戸惑うでしょう。
【conflict】を辞書で調べてみると【争い、論争、対立】と記されています。そして、もちろん【葛藤】も記されています。これらは英語においては全て同義語です。日本語で【葛藤】いうと途端に心理的な印象になります。しかし、皆さんはもう知っているはずです。【葛藤】は感情の一つです。感情は外的要因によって生じます。
あれ?
ここまで聞くと、ある言葉を思い出すと思います。
そう【ストーリー】です。
【ストーリー】と【ドラマ】は同義語ではありません。なぜなら、感情変化は【葛藤】なしに起こすことが可能ですから。では、【ドラマ】をシナリオに組み込む為にはどうすればいいのでしょう?
次回はその方法を詳しく解説していきます。
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