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シナリオの書き方【中級編】ドラマ②葛藤の仕組み

さて、前回は【drama/ドラマ】という言葉について書いていきました。
今回はその【ドラマ】をどのようにシナリオに組み込んでいくかを解説していきます。

日本語で【ドラマ】という言葉が曖昧になってしまうのは【ドラマ=葛藤】と訳してしまうからです。日本語で【葛藤】と言ってしまうと多くの人が
”頭を抱えて何かに思い悩む様" を思い浮かべてしまいます。

では、なんという言葉が一番なのでしょう?
それは【conflict】。前回も少し書きましたが【conflict】の和訳は【争い、論争、対立】です。実はこの【conflict】という言葉には【葛藤】という訳が内包されています。大事なのは、どこからその【葛藤】が生じるか?ということなのです。

それは正に【争い、論争、対立】から生まれるのです。

そう、シナリオに【conflict=争い、論争、対立】を埋め込んでいけばいいのです。

では、どのように埋め込んでいくのか?

答えは簡単です。【ストーリー】に【ドラマ/葛藤】を組み込めば良いのです。

もっと分かり易く書いてみましょう。

感情変化の過程に【争い、論争、対立】を組み込めば良いのです。

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さて、すでにお馴染みのこちらの図で解説していきましょう。

最も簡単なのが登場人物AとBを対立させることです。ただし、この対立構造は双方がなんらかの要求を相手に持っている事が条件です。

説得する、助けを引き出す、救う、恋人になりたい、喜ばす、目覚めさす、etc...

このようなポジティブな要求と、

痛めつける、拒絶する、社会的に抹殺する、関係を断ち切りたい、絶望感を味合わせる、etc...

といった、ネガティブな要求があります。

登場人物AとBは必ず相反する要求を持ちます。

前回この図には3箇所のアクションポイントがあると言いましたね。

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まず、【アクション】前 の登場人物AとBの欲求を設定します。
仮にA "説得する"  B "拒絶する" という要求にしましょう。

当然ですが最初に【アクション】を起こすのは"説得する"という欲求をもつAになります。
これがアクション❶です。

このアクションに❶よってBの感情はcというものに変わります。
この感情cを仮に”怒り”とします。感情が変われば欲求も変わります。Bの欲求は"Aを完全に叩きのめす"というものに変わります。

そのためアクション❷を起こします。これは相当攻撃的なものである必要があります。

この攻撃を受けてAの感情はbに変化します。ここでは感情bを"怒り"とします。

怒りは"説得する"という欲求から"相手を平伏させる"と変化します。
Aは相手をひれ伏せるためにアクション❸を試みます。この欲求はBのアクション❷よりも更に大きなモノである必要があります。

Aからのアクション❸を受けたBはここで大きな感情の変換点を迎えます。
それを"納得する"にします。

それを受けてAの欲求も変化します。Aは"和解する"としましょう。
これにより、このイベントでは2人の感情変化のみならず、関係性さえも変化します。

この対立による感情変化、状況変化を【ドラマ】というのです。

ここで、皆さん思い出すことがあるのではないでしょうか?
それは俳優への指示です。皆さん動詞とオブジェクト指示を覚えてらっしゃるでしょうか?
(覚えてない方は以下の記事をお読み下さい。)

俳優演出の冒頭でも申したように、俳優指示とシナリオは密接な関係性があります。

そう、ここでやっていることは "俳優指示" に欠かせない動詞&オブジェクト指示そのものなのです。

実は優れた映画監督はシナリオを書き上げた状態で既に俳優への指示を全て把握しています。

シナリオ完成後の仕事はいわば映画製作上で出てくる誤差の修正のみです。
例えば、俳優に合わせて俳優への指示の仕方を変えたり、創り込んだり…
しかし、核のところでぶれる事はありません。

良質なドラマをシナリオ上で完成させるという事は、良質な映画への第一歩です。まずは皆さんのシナリオにドラマがきちんとあるか確認してみましょう。

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