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ママであることの不安に押し潰されそうになった夜

1年前、授乳しても抱っこしても全然寝てくれないまだ0ヶ月のあかりを、夜中に何十分も抱っこしていた。出産の疲れと連日の睡眠不足で心も体もボロボロだった私。腕も腰も痛い。部屋に響く泣き声に気が狂いそうになる。

これ以上抱っこなんてできない。そう思った私は、泣きわめくあかりを布団に置いた。激しくなる泣き声。でも、もう無理なんやもん。私だって泣きたいよ。どうしたらいいとよ。私は泣き叫ぶあかりの方をぼーっと見ながら、声を出さずにボロボロと涙をこぼした。

そんな私に気がついた母は、そっと部屋に入ってきて、あかりを抱きかかえて、部屋を静かに出ていった。遠ざかる泣き声に少し安心した。そんな自分が、吐き気がする程、嫌だった。

こんなことで、私はこれからちゃんと母親ができるんだろうか。この子を可愛いと思えるんだろうか。そんな恐ろしい不安で埋め尽くされた。私は手で顔を覆って仰向けにバタンと横になった。

そんな時、部屋の外から母の歌声が聞こえてきた。

『ゆーらゆーらゆーらり ちょうちょにのって おはなのなかを ゆーらゆーらゆーらり』

「あ、お母さんの曲や」
母が作った曲はたくさん聞いてきた。メロディーですぐにわかる。

「あかりのうた、作ってくれたんや」
私は目を瞑って、遠くから聞こえる母の声に耳を傾ける。あかりの泣き声はもう聞こえない。

さっきとは違う、あたたかい涙が私の頬をつたう。そして私は、きっとあかりより先に、母の子守唄で眠っていた。

これがその、子守唄です。
私のガチ母が歌っています。

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