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秋元康と“風”の向き

どうも、2回目の投稿になります。

今回のテーマは昔、自己解決した気になってたけど、もうちょっと具体的に考えていこうと思ったヤツです。

そいじゃ、検索をはじめよう、最初のキーワードは“風”…

F/はじめに

それでも未来へ 風は吹いている
頬に感じる生命(いのち)の息吹
それでも私は 強く生きて行く
さあ たったひとつ
レンガを積むことから始めようか?

(風は吹いている/AKB48)

この曲が発売されてしばらくしたとき、当時の私(中学生)はこう思った。

「や(間投詞)、康、“前書いたこと”と矛盾してね?」

“前書いたこと” is …

Boys&Girls! みんなで行こうぜ!
風は未来から吹いている
Boys&Girls! どんな今日だって
一度しか来ないんだ

(未来の果実/AKB48(Team4))

どういうことだってばよ…!!!

W/風の指し示すもの

とりあえず、辞書で「風」引いてみる。

みなさん、辞書で「風」引いたことありますか?
私は人生で初めて引きました。
意外と辞書で引いたことない漢字一字単語選抜総選挙だったらフューチャーガールズ(64位以上)は堅いと思います。

①空気の流れ。気流。特に、肌で感じるもの。
②なりゆき。形勢。風向き。
③ならわし。風習。しきたり。流儀。
④(接尾語的に)そのようなそぶり。様子。
⑤㋐風の病。㋑(「風邪」と書く)感冒。

出典:『広辞苑』第六版、岩波書店、2008

ですって。
④⑤は論外だとして、③は時間軸を移動し、「吹く」ものではないと思うので、そうすると①か②ということになる。

で、②的なものを指すのだと私は考え“た”。
その根拠を歌詞ではなく、AKB48の状態に求めた。

その正当性は「川」にある。
2009年に発売された「RIVER」と当時のAKB48の親和性の高さはあらゆる所で語られているから、改めてここで深くは言及しない。
勝負の年であったAKBにとっての覚悟、試練のようなものが「川」でたとえられたこの曲でオリコン1位を獲得したAKBは、そのキャッチコピー「向こう岸には夢がある。」の通りに年末には単独枠初の紅白歌合戦出場を果たし、快進撃を続けていった。
そして、「川」は前田敦子卒業ソングの「夢の河」(よく考えると「川」ではないが、一旦置いておく)でも使われ、節目節目のグループやメンバーの象徴として扱われた。
この「RIVER」の話を『AKB48ヒストリー~研究生公式教本~』(週刊プレイボーイ編集部、2011)か何かで読んだ私はこれと同じことが「風」でも言えるんじゃね?と考えた。

「未来の果実」の初出は2007年スタートのひまわり組1st『僕の太陽』公演だ。この頃のAKBについては『AKB48ヒストリー』で「見えないアキバの先」なんて章タイトルに書かれるほどに順風満帆とは言い難い状態だったらしい。
だとすれば、状況は前向きに進みがたい向かい「風」であり、「直線的な時間」(真木悠介『時間の比較社会学』、岩波現代文庫、2003を参照のこと)を描く現代では未来は進む先にあるものであるから、向かい「風」は「未来から」吹くことになる。

一方、2011年に「風は吹いている」が発売された頃のAKBは、東日本大震災があったものの、その支援活動に積極的に取り組んだり(この楽曲もその一環だが)、これが5作目のミリオンだったりと2007年とは比べ物にならない大きな存在になっていた。この辺は良くも悪くも皆さんの実感の方が言葉よりも正確なものだと思うので詳述はしない。まさにイケイケどんどん状態であった。
であれば、状況は追い「風」であり、風は進む先である「未来へ」吹くこととなる。

西兼志氏の『アイドル/メディア論講義』(東京大学出版会、2017)によればモーニング娘。やAKB、ももクロに代表されるゼロ年代アイドルは「未来志向性や未来予持性と呼んできた姿勢」を持ち、それが卒業ソングの歌詞などにも表れているという。

卒業はプロセスさ 再会の誓い
すぐに燃え尽きる恋より
ずっと愛しい君でいて

(10年桜/AKB48)

なんて思い浮かべていただければ、多くを語らずとも納得できるだろう。
ちなみに、秋元康カルタを作成するとしたら「す」は「すぐに燃え尽きる~」にしようと決めてます。

こうした意見も補強してくれるので
これにて一件コンプリート!メガロポリスは日本晴れ!!
めでたしめでたし、なのだが…

R/本当に?

本稿を書き始めるまでは前節までの結論で固まっていた。
だが、書いてるうちに疑問に思えてきた。

まず、2007年のAKBは向かい「風」だったのか?という疑問。
確かに、順風満帆とは言えず、「見えないアキバの先」だったかもしれないが、小さくとも確実に前に進んではいたんじゃないだろうか。年末にはアキバ枠とはいえ紅白出場も果たしているわけだし。

で、そもそも「未来の果実」の全体の雰囲気がとてもじゃないが、向かい「風」とは合わない。「みんなで行こうぜ!」「明るく行こうぜ!」と言ってる曲は確実に前向きな曲である。

僕には何ができるか
ずっと自信なかったけれど
とにかく前へ歩けば
夢はだんだん近づくよ

(未来の果実/AKB48)

この部分なんかは「見えないアキバの先」をなんとか前に進むAKBにぴったり重なる。

前節の解釈通り、向かい「風」の中を懸命に未来に進むAKBとしてもよいが、これまでの疑問を踏まえると、次のような解釈も生まれる。

「未来から」吹く「風」があるということは逆説的に未来の存在を示している。前に立ちふさがる壁に風穴が空いたというようにイメージしてもらうとわかりやすいかもしれない。たとえその「風」が向かい「風」だったとしてもその先には吹き出している大元の明るい未来が待っているわけだから、そこに向かって行こうぜ!そう歌っているのではないかと。

C/最近の“風”と結論

二曲の比較だけだと埒が明かなそうなので、最近の“風”ソングを見てみませう。

三番目のになろう
今までとは違う向きに吹き抜けろ!
まだどこにも見たことない新しい空 切り拓け!
僕たちは恐れてない
希望の使命は
そう 光を作ることさ
自分たちで真っ暗な未来をこじ開けろ!

(三番目の風/乃木坂46(3期生))

(正式な歌詞が出ていないっぽいので動画で)

この辺が正統継承者。
多分体のどこかに方印が浮かんでるはず。

「風」はとうとう自分からなるものになったらしい。

とりあえず、「川」同様の比喩と見るのは間違ってなさそう。

一方、気になる動向も…

どこにいても わかるんだ
その存在を 感じてる
胸の奥を 吹き抜けるみたいに…
君は僕の

(君は僕の風/AKB48グループ センター試験選抜)
を待とう この岬で
もう少しで春は来るはず
青い海に日差しが跳ねて
君を乗せた船が近づくよ

(風を待つ/STU48)
に吹かれても 何も始まらない
ただどこか運ばれるだけ
こんな関係も 時にはいいんじゃない?
愛だって 移りゆくものでしょ?
アレコレと考えても
なるようにしかならないし…

(風に吹かれても/欅坂46)

「風」=「君」
「風」=「春」=「君」
「風」=恋のきっかけ

どうやら、最近では恋愛ソングで使われることが多くなってきたらしい。

「風」、止んだんか?見たことのない光、差すんか?
なりゆき次第かよ怒

あっ!

なりゆき。形勢。風向き。

康、お前が“風”だったんか…

                                   

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読んでくださりありがとうございました。
よろしければ、皆さんの「風」解釈もお寄せください!



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