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メタ観光マップの「レイヤーリスト」・「メタタグデータ」の作り方


 これまでメタ観光マップの制作に役立つ内容としてメタ観光マップの概要と使い方をまとめたすみだメタ観光マップについての解説記事や無料でカスタマイズした地図を作れるumapを使ったメタ観光マップの作成方法 について公開してきました。今回はメタ観光マップに掲載するコンテンツである「レイヤーリスト」とそれに紐づく「メタタグデータ」の作成方法をご紹介します。

レイヤーリスト

  あらゆる視点から地域を見つめ直し、観光資源を可視化するメタ観光で「レイヤー」とは地域の見方、視点です。従来の観光資源に加え、これまでの観光の概念にとらわれない視点=レイヤーは「アニメ聖地」、「インスタ映え」、「地形」など様々です。
 すみだメタ観光マップでは、合計60のレイヤーを作成しました(図)レイヤー全体を8つのカテゴリーに分類し、マップ上のアイコンを色分けすることで、直感的にユーザーがレイヤーの内容を把握する手がかりになるようにもしました

図:墨田区のレイヤーリスト

レイヤーリストの作成方法

 レイヤーリストの作成は自治体データとインターネットで公開されているデータの2つを参考に行います。

 <自治体データ>
 自治体データは自治体サイトや観光協会サイトに掲載されている位置情報に紐づく文化財、古写真、デザインマンホール等のデータです。墨田区の場合、すみだ観光サイトすみだ文化財・地域資料スミファ(すみだファクトリーめぐり)、すみだ小さな博物館デザインマンホール 等に掲載されている情報からレイヤーを作成しました。東京都内の自治体であればオープンデータをまとめた東京都オープンデータカタログサイトも参考になります。

 <インターネットの公開データ>
 インターネット上にある膨大な公開データから自治体に関する多様な視点のデータを作成することは簡単ではありません。そのため、すみだメタ観光マップ作成に際して「レイヤー作成用サイトリスト」を作成しました。リスト掲載のサイトの多くが全国を対象としているため、他の自治体でも活用可能です。以下に、このリストを用いた作成手順を中心に、インターネット公開データからレイヤーリストを作成する方法をご紹介します。

インターネット公開データからレイヤーリストを作成する  

レイヤー作成用サイトリストの活用

  • リストの掲載サイトにアクセスする。

  • 該当する「自治体名(都道府県、市区町村)」を検索する。

  • 該当する検索結果が1つ以上ある場合、レイヤー作成の候補とする。

  • リストに掲載されているが地域限定(東京のみ対象のデータリスト)のリストを該当自治体名で検索する

    • 例:「東京の階段DB」→ 「自治体名 階段」、「東京の坂道」→「自治体名 坂道」、「東京狛犬倶楽部」→「自治体名 狛犬」など

②このリストに掲載されていない、自治体固有のレイヤーを見つける

  • 観光協会、郷土博物館・資料館などのサイトを参考にします。例えば、墨田区の場合、観光協会サイトにモデルコースとして掲載されている北斎、忠臣蔵、相撲などのテーマをレイヤーとして採用しています。

③リストに掲載されてないレイヤーを見つける

  • リストでは網羅されてないサイトもあるので、ぜひ検索して見つけてください。

メタタグデータの作成

 レイヤーが決まったら、次に地図に掲載するためにレイヤー毎のメタタグの情報を作成する必要があります。例えばすみだメタ観光マップのレイヤー「浮世絵で描かれた場所」には隅田川、両国橋、三囲神社など多くの場所が浮世絵師らにより描かれ、数多くの作品が存在し、メタタグとして掲載されています。メタタグの情報である作家名、作品、説明文などは地図に図のようにポップアップ表示されます。ここに掲載されている情報を作成する必要があります。墨田区の場合には60レイヤーに1,700以上のタグを作成しました(⑦、⑧、⑨はあくまでオプションで必須情報ではありません)

メタタグデータの作成フォーマット


 メタタグデータに必要な情報とフォーマットについては、以前投稿したすみだメタ観光マップ / umap用Tips / データのダウンロード に掲載しているのものが参考になります。このフォーマットで作成すると、umapの地図に掲載するのが簡単です。まずはExcel等で作成しても構いません。

  • タグの情報 

    • ID :マップ全体でユニーク。他所から参照する際にこのIDを使用します。

    • name : タグの名称

    • author :ワークショップや作品等でその作者の掲載が必要な時に使用

    • orig_URL :参照元サイト

    • orig_Name :参照元名称

    • spot_name :場所の名前

    • layer :レイヤー名称

    • layer_ID :レイヤーID

    • description :本文。この中にさまざまな内容を記入します。

    • img_URL :画像のURL

    • license :画像のライセンス

    • gm_URL :グーグルマップへの参照URL

    • lat :緯度

    • lon :経度

掲載画像に関して

 メタタグ情報として表示される画像はわかりやすいのでぜひ掲載したいところですが(先程の例のように浮世絵作品の画像を掲載するなど)、画像の利用には著作権の問題があるため注意が必要です。画像掲載の方法としては著作権フリーの画像を利用する、購入する、撮影する等方法がありますが、墨田区では著作権フリーの画像を利用しました。Wikipediaや 「レイヤー作成用サイトリスト」掲載のジャパンサーチ等では著作権に問題がない画像が紹介されているので、参考にしてください。

より魅力的なレイヤーの作成のため


 今回ご紹介したレイヤー作成方法は、自治体データ、インターネット上のデータともに公開情報を元にしています。しかし、地域の価値・魅力はこれら公開情報だけでありません。
 墨田区ではワークショップという手法を使い区民の皆さんからの情報を集めたり、専門家を招いての新たな切り口(電線、暗渠、ドンツキ、見立て)で墨田区の魅力の発見を行いました。また、アーティストには墨田区の新名所となる場所を題材として作品を制作してもらいました。(ワークショップ・作品制作 | すみだメタ観光祭
 これらの成果はすべてすみだメタ観光マップのレイヤーになっています。

 ここで紹介したレイヤーやメタタグを見つけだすための取り組みはあくまで一例です。
ぜひ、それぞれの地域で工夫して、みなさまの地域にあった新たなレイヤーを見つけみてください。

[追記]レイヤーの見つけ方
 地域のレイヤーを見つけるにあたり、上記以外の見つけ方のヒントにしても追加でご紹介します。

①検索関連用語から見つける
 検索キーワードツールを利用すると、地域名と一緒によく検索されているキーワードを見つけることが出来ます。地域名で検索するのは旅行者だけではなく、地域住民もいるのですべてが使えるわけではありませんが、そのキーワードがレイヤーとして使えることがあります。例:ラッコキーワード 「墨田区」の検索結果

ラッコキーワード 「墨田区」の検索結果ページ

 例えば「墨田区花火大会 どこから見える」があるので、花火大会の見える鑑賞スポットレイヤーを作ってもいいかもしれません。
 市区町村名以外に有名な観光スポットでも検索できます。(例:ラッコキーワード 「東京スカイツリー」の検索結果)

②インスタグラムの画像を参考にする
 インスタグラムの検索で「地域名」で「ハッシュタグ」や「場所」の検索結果を見ることが出来ます。こちらは①の検索とは違い、検索ではなく投稿されているものを把握することが出来ますが、同様に何を墨田区で投稿しているかを知り、レイヤーを考える参考にします。

インスタグラムの検索結果「東京都 墨田区」(場所)
インスタグラムの検索結果「#墨田区」

 ③「観光の多様化」に関する調査の質問項目を活用する
 2023年6月27日に当機構で「観光の多様化」の調査結果を発表しました。30の旅のテーマについてのニーズを調べていますで、この旅のテーマがレイヤーに該当するため、こちらも参考にしてください。

30の旅のテーマ

  • 夜景、眺望、絶景など、風景

  • 世界遺産、国宝、文化財、史跡名勝などの観光名所

  • ご当地のパン屋、和洋菓子、ラーメン、うどんなど、大衆的な食事

  • 町中華、大衆食堂、純喫茶、商店街など、地元の人が通う場所

  • 「日本の〇〇百選」ような、あるテーマに基づいた名所

  • 〇〇発祥の地、元祖〇〇、業界の老舗店など、歴史的起源のあるスポット

  • インターネットでトレンドになっている話題のスポット 

  • テレビ番組(例:アド街、孤独のグルメ など)で紹介された、話題性のある飲食店

  • 歴史的、受賞歴がある、有名建築家の作品、看板建築など、特徴ある建築

  • 古地図・古道・旧町名など、過去の時間軸

  • 角打ち・せんべろ・大衆居酒屋

  • 灯台、ダム、水門、発電所など大きなインフラ施設

  • 炭鉱跡、製糸場跡、工場跡など、産業遺産スポット

  • 坂、崖、地層、暗渠など特殊な地形

  • 地元の人が主に通うような銭湯や公衆浴場

  • 有名人が通っていた、アイドルが訪れた、文豪が愛した土地など、ストーリー性のあるスポット 

  • 路上園芸、公共の花壇、オープンガーデン

  • ネオンサイン、地下街、バブル時代の建築、年代物の自販機など、昭和レトロなスポット

  • いわゆる「聖地巡礼」 (アニメ、映画、ドラマなどの舞台訪問)

  • いわゆる「インスタ映え」スポット

  • 廃線、廃道、廃墟など、現在は放棄された建造物や設備

  • 浮世絵、版画、絵画などの舞台 

  • 御朱印

  • 工場などの施設の景観や夜景(いわゆる「工場萌え」スポット)

  • 小説、和歌、俳句、落語などの文学作品の舞台 

  • パブリックアート、ストリートアート、立体看板など「街なかアート巡り」 

  • 文章が珍しい、誤植がある、フォントが変わっている、デザインがかわいいなどの標識・看板 

  • 名サウナと呼ばれる施設

  • マンホール・電線・階段・ガードレール・標識など、特別な路上のアイテム

  • 位置ゲーム(ポケモンGOやドラクエウォークなど)


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