見出し画像

分析軸を変えたら、顧客サーベイから戦略が自動的に出てきた

ブランドの品質を測るサーベイとは

前回に続いて、マンション事業ブランディングの事例について語りたいと思います。

現状分析の一環として、800サンプルほどの顧客サーベイを実施しました。マンションを購入して1年以内の、競合含め数社の既存顧客に向けたものでした。つまり、しばらく住んで現実も見えてきた頃合いのお客様です。

調査設計の段階で、答えが導きやすいように工夫をしました。マンション購入前の期待値と、購入後の満足度の対比を見れるようにしました。

さらに、マンションブランドの品質は何か、という観点から5つのカテゴリーを設けて、さらにそれぞれ詳細な項目を割り当てました。また、そのカテゴリーは「機能的品質」と「心理的品質」の2面から構成されています。

【機能的品質】
  ・物理的品質
  ・サービス品質
  ・情報
【心理的品質】
  ・情報品質
  ・デザイン品質
  ・知名度 / 信頼性

それぞれに設けた詳細項目は例えば、一部ですが以下のようなものです。

・物理的品質(立地や環境、間取り、セキュリティや防災など)
・サービス品質(補償アフターサービス、モデルルームの接客態度など)
・情報品質(建物の構造や施工情報開示、売主の取り組み姿勢など)
・デザイン品質(外観、物件パンフレット、ブランドロゴデザインなど)
・知名度や信頼性(売主の知名度、施工会社の知名度など)

対象となる競合ブランドは、財閥系から独立系、新興系など偏らないように選定しました。

期待値と満足度の差異で分かったこと

まず結果をストレートに分析してわかったことは、ブランド力が高いと思われるマンションの顧客はおおむね期待値も満足度も高かったのですが、その中でも意外だったのは、最もブランド力が高いと思われていたとある財閥系マンションブランドの満足度は、意外に低かったのです。

その原因として、価格が高かったために希望より狭い住居を買わざるを得なかったことが結果から推測されました。そのブランドは広告宣伝費率も高く、販売センターでも派手目な演出で有名なところでしたので、顧客のことを考えると悲喜交々といった気持ちになりました。

また、クライアントの調査結果は思った通りというか、残念ながらというか、期待値も満足度も低く、その両方がほとんど同じ値でした。つまり期待もされてなく、満足もそこそこ、かなり機能的で消去法的な選択肢として見られていたのではないかと思われます。

うなされた3日間と、目の前にあった答え

ここまでは良かったのですが、これではありきたりな予想された結果しか導き出せず、何かが足りない、何かもっとあるはずだ、と私は悩んでいました。それからオフィスに深夜残業でエクセルと睨めっこして3日間、あぶら汗をかくような時間を過ごしていたのです。

あぁ、もうだめだ、こんな結果しか出せないのか!とほぼ諦めて椅子に深く倒れかかった瞬間、私の目に飛び込んで来たのは自分のデスクにあった、とある本でした。

慶應義塾大学名誉教授 嶋口充輝教授 著書
「顧客満足型マーケティングの構図」

それは、顧客満足に関するマーケティングの権威であった、嶋口充輝 慶應義塾大学教授(当時)の本で、当時勉強意欲旺盛だった私は何度か講義も受けに行ったことがあったのでした。

その本を何気なく手に取り、パッと開いたページにあったのは、まさに私が探していた答えだったのです。灯台下暗し…。

そこに図示して描かれていたのは、確か「顧客満足度矯正のメカニズム」というもので、簡単に言うと

「人は期待値が高いところで満足してもそれほど満足度は高くならず、
 反対に、期待値が低いところで満足すると、その満足度は跳ね上がる

と言うものでした。うろ覚えでごめんなさい。
この、「満足度が跳ね上がる」ことがポイントだったのです。

つまり、どんな調査でもその傾向がありますが、人は聞かれると顕在意識で答えます。それはありきたりな答えになりがちですが、この軸で分析をかけると潜在意識(ニーズ)が浮かび上がってくるのです。

この時本当に、「神様っているんですね✨ありがとう✨✨」って本を握りしめて思いました。

分析から自動的に出てきた戦略

実際のケースであるためはっきりとお伝えできないのが歯痒いのですが、この分析軸を当てはめたことで、顕在的には重要視されていなかった要素が、潜在的はとても満足度に寄与していたことが分かり、今後の戦略的注力ポイントとして浮かび上がってきたのです!

確かに、そう思ってみてみると、競合の中でその「とある要素」の満足度が最も高かったブランドが、総合的な満足度も最も高かったのです。

それは機能的品質ではなく、心理的品質の中にあったのですが、普通に分析すると、前回お伝えした私を恫喝した営業マンのおっしゃる通り、機能的な要素が高く出てきます。しかし、実際にはお客様本人も認識していないところから満足度も生まれるのだと思うと、非常に感慨深い結果となりました。

この結果をクライアントにプレゼンし、役員も含めて納得して下さったことから、戦略的な注力ポイントとして、実践に向けてプロジェクトが大きく動き出すことになりました。

この役員の方は大極を見ながら大胆に決断のできる素晴らしい方で、また、担当者もとても有能な方々でした。後日談として、10年後くらいにこの担当者の方々とお会いする機会があったのですが、とても出世されていたのは嬉しいことでした。

以上が、今でも忘れられない顧客サーベイの経験でした。今回は定量調査でしたが、実は私は定性調査の方が好きな方でして、別プロジェクトで経験した定性調査でクライアントが目覚めた瞬間!についても語ってみたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?