長寿の秘密-マジメ編
どういう人が長生きするかを調べた研究があります。ご紹介します。
米国スタンフォード大学の心理学教授ルイス・ターマン(1877年 - 1956年)が行った『天才の遺伝的研究(Genetic Studies of Genius)』という有名な研究があります。1922年から1528人の才児を集めた研究でした。のちにカルフォルニア大学心理学教授ホラード・フリードマン(Howard S. Friedman)がご長寿研究として引き継ぎ『The Longevity Project(Hudson Street Press 2011年)』という本を出版しました。
まず才児の性格、家庭環境を調査し、子供たちが大人になって死ぬまでを追跡調査をしました。すると、早く死ぬ人と長寿を全うする人に分かれるわけですが、子供の頃の性格調査の分類に一致してしまったのです。
一番長生きした人はどういうタイプだったかというと「しっかりした人(Conscientiousness)」でした。「しっかりした人」とはどういう意味かというと、遅刻しない、引き受けた仕事はちゃんとやる、期限を守る、約束を守る、お金を無駄遣いしない、三日坊主じゃない、計画的、頼りにできる人です。
逆に言うと、逆のタイプ、つまり時間を守れない、ルーズ、仕事が遅い、決まり事を守れない、浪費家、何をやっても長続きしない、無計画、当てにできない、頼りにならない人は長生きできなかったそうです。
ようするに、自分をコントロールできる人は長生きし、自分をコントロールできない人は長生きしなかったわけです。ま、そうでしょうね。
フリードマンは、「しっかりした人は健康にも気を使うし、良い習慣が身に付くし、危ないことはやらないし、人間関係も良好だし、自分をよい環境に置くから長生きしたのではないか」と解説しています。
この研究の面白い点は、子供の頃にしっかりした性格だった人は長生きしているという点です。つまり子供の時点で将来の寿命が予測できるわけです。性格というのはある程度遺伝的、先天的ですから。
では運命は子供の時点でもう決まっているのか?フリードマンによれば、100%ではありません。意志によってある程度変えることができるそうです。実は私もそうでした。子供の頃は遅刻の常習犯、ルーズで、いい加減で、チャランポランな人間でした。
ところがメンタルフィットネスに励んだおかげで、今や遅刻なんてありえない、生真面目な、健康に良い習慣だらけの「しっかりした人」に変貌しちゃいました。
子供の頃も大人になってからもシッカリした性格が一番長生きし、子供の頃はルーズだったけど大人になってシッカリした人が次に長生きし、子供の頃も大人になってもシッカリしていない人が一番早く死んだそうです。
「ダラシない人」は鬱気味で、高血圧、坐骨神経痛、糖尿病、心不全になりやすい傾向があったそうです(R. G. Goodwin and H. S. Friedman, “Health Status and the Five Factor Personality Traits in a Nationally Representative Sample,” Journal of Health Psychology 11 (2006): 643-54)。
子供の頃「しっかりしないさい!」「ちゃんとしなさい!」「マジメにしなさい!」と注意する親や大人をあざ笑ったものでしたが、ちゃんと科学的意味があったんですね。もちろん他の要因もありますから、マジメさだけですべては決まりませんが、マジメであることは極めて有利です。他の要因についてはいずれ紹介します。
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