見出し画像

22年前、幻に終わったブラジル1周の夢。そして今思うこと。

⓪プロローグ

先週、私の父親が突然、
「徹底的に物置の片づけをやる!要らんモノは全部捨てる!!」
と言って、実家の物置の断捨離を始めました。

断捨離をやるのは全然いいんです。ただ、僕がずっと大切にしまっておいた学生時代の思い出の品を、勝手にゴミと勘違いされて捨てられるという悲劇だけは回避しなければなりません。まぁ、そんな大層なモノがあるわけでもないんですけどね。笑

そこで急いで自分の荷物を非難させ、捨てるモノと捨てないモノに仕分けしてたら出てきたんです。大学4年の夏、僕にとって初めての海外旅行だったブラジル行きの書類が。
当時、僕は成田からサンパウロに飛び、そこから国内周遊券を使ってブラジルの様々な都市を一人で巡る旅を計画していました。

しかし、理由があって一人旅は実現しなかった。

その書類を懐かしく眺めながら、ふと考えました。
もし、またいつかチャンスが訪れるんだとしたら、あの時思い描いていた旅は再現することができるのだろうか?
早速調べてみることにしました。


①1998年8月 僕が計画していた旅のプラン

まず、実家の物置から出てきた書類とはこんな紙切れでした。

画像1

1998年6月、22歳の僕は大学の短期留学制度の試験に見事受かり、「ブラジル旅行社」というツアー会社のカウンターでブラジル行きの航空券を予約していました。
当時ブラジルにはVARIGというフラッグキャリアがあり、そのVARIGが「Air Pass」という国内周遊券を発行していたので、国際線往復と一緒にこの周遊券も申し込みました。確か6都市か7都市を巡れて400$ぐらいだった記憶があります。

画像2

実際に僕が大事に取っておいた書類の記録を見ると、
★RG837 7/31 成田(NRT)→サンパウロ(GRU) ★国際線
 RG384 8/18 リオ(GIG)→サルヴァドール(SSA)
 RG931 8/22 サルヴァドール(SSA)→レシーフェ(REC)
 RG300 8/26 レシーフェ(REC)→フォルタレーザ(FOR)
 RG302 8/30 フォルタレーザ(FOR)→マナウス(MAO)
 RG489 9/03 マナウス(MAO)→サンパウロ(GRU)
 RG251 9/03 サンパウロ(GRU)→イグアス(IGU)
★RG834 9/11 サンパウロ(GRU)→成田(NRT) ★国際線

となっており、合計6回の国内線フライトを計画していたようです。

画像3

地図にするとこんな感じですね。
そう、今思い出しました。
成田-サンパウロ間の行きか帰りのどちらかがJALとのコードシェア便だったんです。VARIGって「スターアライアンス」なのでANAとコードシェアかと思いきや当時はJALだったんです。ANAがスターアライアンスに加盟したことで、のちにANAとのコードシェアに切り替わった、とウィキに書いてありました。

②ブラジルとの出会い

高校生の頃、僕は2人の日系ブラジル人に出会いました。ジンとマルシアです。2人は夫婦で、僕の地元にある大手住宅メーカーの工場で働いていました。当時の日本には、ブラジルをはじめとする南米各国から大勢の日系人が出稼ぎに来ていました。
ジンとマルシアの二人は本当に真面目に働く人たちで、昼の仕事が終わった後に夜は私の父の会社で働いてくれてました。
顔立ちは日本人、なのに話す言葉は少したどたどしい日本語とポルトガル語。高校生の僕にはちょっとしたカルチャーショックでした。

彼らが祖国に帰る時に僕に言ってくれた、
「シゲ、いつかブラジルに遊びにおいで!どこでも案内するから!」
という言葉が妙に魅力的で、たったそれだけの理由で、僕は第二外国語の講座にポルトガル語がある拓殖大学に進学することを選んだのです。

結果、一般教養科目として2年間やれば単位が取れるポルトガル語を4年間勉強し続け、かつ表参道のシュラスコレストランでも1年半ほどバイトをしました。
そして大学4年の時に試験を受け、大学からの資金も貰って1か月半の短期留学に行くことになった訳です。


③僕がどうしても見たかった街

そんなわけで無事ブラジルに辿り着き、ジンとマルシアの二人とも再会することが出来た僕は「モジ・ダス・クルーゼス」(Mogi das Cruzes)という田舎町で、ジンのお父さんが経営する農場のお手伝いをしながら最初の2週間を過ごし、それからモジの街の中心で一人暮らしをしながらポルトガル語のレッスンを受けることになりました。

画像4

画像5


モジは日系移民が多く移り住んだ街です。
厳しい時代背景や環境の中で、この場所に根を張りたくましくその人生を歩んでこられた日系移民の先祖の歴史が、街の至る所に残されていました。

画像6

画像7

この建物、釘を1本も使わずに建てられた農業用倉庫です。日本の大工の技術と魂がまさかサンパウロの山の中に残されてるとは。こうした日系移民の歴史に触れることができたことは、僕にとって本当に貴重な経験でした。

さて、そんなこんなでそろそろ周遊旅行に旅立とうかな、とジンに旅行の計画を告げたところ、

シゲ!何言ってるんだ!そんな危ない事は許せない!もし君に何かあったら、君のお父さんに申し訳が立たないじゃないか。ダメだ。チケットを渡しなさい。

まさかの計画頓挫(笑)
そして一緒に旅行代理店に行き、僕のありったけの夢が詰まった「Air Pass」の周遊券は、なんと男二人で行く「ブラジルの代表的ビーチリゾート・フォルタレーザ2泊3日の旅」に変わってしまいました(泣)

画像8

ね、凄いキレイですよね?(写真はTRIPLER記事より)
正直、周遊が出来なくなったこの時のガッカリ感は半端じゃなかったんですが、ジンが僕らを思いやる気持ちもよく分かったし、ブラジルの治安もかなり危ない現実がありましたから、ここは素直に受け入れました。
あとフォルタレーザに来たら本当にキレイで、ウォーターパークのデカいスライダーとかで遊んでたらすっかり楽しくなってしまったという(笑)

画像9


僕、どうしても行きたかったところがあるんです。それは、

「サルヴァドール」

画像11

大航海時代、ここはブラジルの玄関として最初の首都が置かれ、大量の砂糖が船に積まれて出航し、多くの奴隷がここからブラジルの地を踏みました。
街にはカトリックの古い教会が今も立ち並ぶのと同時に、船で連れてこられた多くのアフリカ人の人生の苦しみと憎しみと喜びの歴史が刻まれている。
そう、あのカポエイラとサンバが産まれた街です。

画像12

アップタウンとダウンタウンを繋ぐ「ラセルダ・エレベーター」というのがあって、当時の「地球の歩き方」を見た時に「絶対に乗ってはいけないし、ダウンタウンは行っちゃダメ」と書いてあった記憶があります。

バイアーナドレス(バイーア州の女性が着る伝統的なドレス)も見たかったし、ムケッカ(魚介や野菜をココナッツミルクで煮込んだもの)も食べたかった。

画像12


そんな中でも「イグアスの滝」だけはちゃんと行けました。

画像13

凄まじい水量と迫力でした。さすが世界3大瀑布だけはあります。


④ブラジル周遊は叶う?

結論から言うと、叶います。

ざっと調べてみても、ブラジル国内のエアチケットはそれほど高くはない印象でした。(Google Flightで調査)

brasil周遊

要は「休みが取れるのか?」という、社会人にとって一番簡単で一番難しい押し問答になるわけです。実際、去年のGW10日間でアフリカ4か国を巡ってこられてるので、ブラジル1国の中をエアで巡ること自体はそれほど難しいことではないかも知れません。陸移動じゃないし途中で国境も超えないし。

それとは別な部分で考えたことがあります。それは今回の感染拡大の影響から感じたことでした。

人間の歴史は移動の歴史でもあります。遥か昔は徒歩や馬で、ある時は荒れる海を乗り越え船で、そして現代は飛行機という便利な乗り物で空を飛んで。

テクノロジーが進化するごとに、人の移動距離は延び移動時間は短縮され、さらに移動に伴うコストと安全リスクは下がっていきました。
その代わりに、例えば今回のように中国で起こったウィルス感染が世界中に広がるリスクは加速度的に高まっている。またその影響で、茨城の片田舎にある私たちの小さな町工場にも受注減という形での経済的ダメージが及んでいます。

もちろん悪い面だけではなく、進化の多くは良い面だと思ってはいます。
そうであって欲しい。
新たなテクノロジーや新たなプラットフォームから私たちが受ける恩恵と、それが一般化されたからこそ起こる新たなリスク。WEBの世界にもリアルな身体を持つ人間にもウィルスという敵がいるように、もしかして僕たちは進化と共にずっとこの戦いのループを続けていくのかと思うと、つい「だっふんだ!」と言いたくもなります。

ただ、今はせめて人間が他の誰かに感染させてもいい影響しかないであろう「笑顔」や「やさしさ」や「思いやり」を、きわめて自然に、そして当たり前に。そのプラットフォームだけはいつまでも大切にしたいし、きっとこれからも変わらないだろうと思っています。

世の中がそんな風にうまく回りますように。

会いたい人がいて、彼らの笑顔が見たくて、だからこの騒動が落ち着くまでの間、僕は一生懸命に懐かしいモジの街と憧れのサルヴァドールを思い描いて寝ることにします。

僕たちに出来ること、そしてもっと確立させなきゃいけないのは「笑顔」と「やさしさ」と「思いやり」が循環する世界。

この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?