目玉焼きに恋をして
祖母の作った目玉焼きが好きだ。
黄身がかため。黄身の表面に、白っぽい膜がはってるやつ。あっつあつの白米にのっけて、しょうゆをたらり。
黄身と白身がしょうゆに絡まって、口の中で絶妙な味を演出してくれる。そこへ、白米がこれまた、いい仕事をする。
想像しただけで、涎がたれそう。唾液がじゅわっと口の中に広がる。幸福の極み。
だから、何度も作ってみた。でも、じぶんで再現しようとしても、なかなかその味に近づくことができない。なにが違うのか、卵?焼き加減?水の量?フライパン?フライパンの蓋?それとも、愛情か?
たかが、目玉焼き。
されど、目玉焼き。
そんな、まぼろしの目玉焼きを作る祖母は、認知症になり、この冬、施設へ入所した。
こんなことなら、作り方を教わっておけばよかったなぁ。
食べられないとわかると、ますます食べたくなる。この気持ちは、アレだ。
恋に似ている。
わたしは、祖母の目玉焼きに、恋をしている。
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