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ミャンマーとそのまわり、幸せをくれる暮らしのモノとコト_Vol.15_ベトナム・ハノイ、シノワズリの極みバッチャン焼きの急須セット

ヤンゴン在住4年目、4歳男子の母のイワサマキコです。

ともすれば、バタバタと過ぎて行ってしまうミャンマー・ヤンゴンでの日常ですが、日々の暮らしに幸せをくれるモノやコトを見つけるのがささやかな楽しみです。手仕事やアンティーク、伝統工芸品が大好き。

旅先で見つけたものを日常で使うのが至上の喜び。そんな日々に幸せをくれるモノやコトをご紹介します。

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シノワズリ(chinoiserie)という言葉は知らなくても、初めてそれに触れてときめいたのは、オードリーヘップバーンの代表作「ティファニーで朝食を」を観た中学生の時でした。

オードリーヘップバーン演じるホリーのジバンシィのドレスやミニマリストな部屋も素敵だったのですが、それが霞むくらいに私が夢中になったのは、ホリーのアパートに住む日系アメリカ人、「ユニオシ」さんの部屋。

もちろん、部屋はアメリカのアパートメントなのですが、そこに日本のものを置いて、浴衣を着て暮らしているのがなんとも素敵に見えたのです。

(件のユニオシさん、出っ歯でメガネで背の低い人として描かれており、当時は日本人をステレオタイプに当てはめバカにしている、と批判されたりもしたそうですが、私には、このユニオシルームが素敵、という印象しか残りませんでした)

ちなみに、シノワズリ(chinoiserie)とは、ヨーロッパで流行した中国趣味の美術様式で、中国をイメージし、非対称の縮尺や、漆など独特の素材や装飾を用いた様式が特徴である。(中略)日本の漆工芸を真似たニスやスズめっき仕上げの器や、陶芸の人形やテーブル飾りも、当時の雑誌等はシノワズリとして取り上げた。(Wikipdediaより)

なんとかこのテイストを生活に取り入れようと、ユニオシさんを真似して、祖母の浴衣を引っ張り出してパジャマ代わりに着ていましたが、純和風の家に住んでいたので、シノワズリというよりは明治時代くらいに戻っていただけの気もします。

ただ、洋間にあえて日本風や中国風のものを取り入れるというバランスへの憧れは、ずっと心の中に残っていて、それをシノワズリと呼ぶことを知ったのです。

でも、そのためには日本風とは思い切り離れたテイストのところに住む必要があり、そこに日本や中国風を取り入れるのが素敵なのよ、という謎のこだわりで、日本にいる間はシノワズリとかけ離れた生活をしていました。
(頑張ってもそこはどうしたって日本なので)

やがて時はたち、私は、今ミャンマーに住み、連休を利用して中国とフランスの影響を色濃くうけるシノワズリのメッカ、ハノイに来て、旧市街のハンザ市場で、手強いお姉様方を相手にシノワズリを手に入れるべく交渉していました。

今回のハノイ旅行のメインイベントの一つは、ずっと泊まってみたかった小さなホテルに泊まる事でした。オリエンタル、シノワズリという言葉がぴったりのこのホテル、どこをとっても本当に素敵で、癒しの空間だったのですが、そのインテリアの中でも、特に気になるものを発見したのです。

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朝食のレストランのテーブルやレセプションの傍に、中国風の大きな急須にグリーンが飾ってあり、その姿は、「シノワズリのお手本です!」と言ってるかのよう。

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これこそ私の求めていたシノワズリ…!と、ホテルの方に聞いてみたところ「これはバッチャン焼き」というではありませんか。ハンザ市場で買えますよ、と教えてもらい、iPhoneで写真を撮り、夫に息子を託して、いざハンザ市場へ!

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(写真:ハンザ市場の入り口。駐車場の入り口にしか見えません)

そして目の前には、ハンザ市場のお姉様方がいるという訳なのです。

ハンザ市場は、ハンザギャレリアというデパートの地下にあるローカル市場です。この一角に、バッチャン焼きのお店が集まるエリアがあります。

小さな区画に、5、6店舗が連なっており、品揃えは正直どこもそんなに代わり映えしません。そのため、各店舗のお姉様方は、なんとか自分の店で沢山買ってもらおうと、それはそれは必死。

まず、一番手前の店では椅子を出され、強引に座らされます。店主のお姉様は、日本語も話します。どんどんバッチャン焼きを見せられ、「何個欲しいの」となかなか強引です。

「他の店も見たいから」と椅子から立ち上がると、「チッ」と舌打ちしてあからさまに不満顔。お店の人の不満顔に慣れていない私は、心が折れそうになるのですが、「また来るね!」と、なんとか笑顔と心を保ち、そそくさと隣のお店に移動。

急須の写真を隣のお店のお姉様に見せると、「あるよ」と在庫を出してきてくれました。しかし、選ばせてくれる様子はなく、はじめに出した1個を「これでいいでしょ、これ買いな」という雰囲気です。

「何個か見て比べたいから他のも出して」「ここが汚いから違うのがいい」「形はこれじゃ嫌」と、品出しのリクエストをしつつ、商品の状態のチェックをするのですが、その間も、周りの店のお姉様の視線が私に集まり、痛いほど。。。

(この店だけで全部買うんじゃなくて、最初の店でも何か買わなきゃね、見せてもらったし、不満な顔しているし)

などと考えながら、白地に青色で寺子屋のような風景が描かれた大きな急須と、同じテイストの小さな湯呑みを発見しました!

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風景だけでなく、人が描いてあるのが最高に可愛い!

提示された値段から少々の値引きを交渉し(ハンザ市場では価格交渉必須です)、見事シノワズリな急須セットを手に入れることが出来たのでした。

その後、律儀な私は、一番初めの店に戻り、ホテルの朝食会場で見かけた別の柄のバッチャン焼きのお皿を買い求めたのですが、「これ1枚ください」と言うと、「え、1枚だけなの」とこれまた不満顔。(このお皿も素敵なので別のnoteで)なんとか笑顔を保って「そう、1枚ね」と言うと、最後には飴をくれました。

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(写真:沢山のヒントがもらえたホテルの朝食レストラン)

どこまでも手強いハンザ市場のお姉様方。「シノワズリってこんな泥臭く手に入れるものだったっけ…」となんだか可笑しくなりましたが、戦利品のバッチャン焼きを大事に抱え、Grabバイクにまたがって旧市街のホテルまで戻ったのでした。

この急須、容量は1リットル以上あり、たっぷりのお茶を作って飲むのに最高です。

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(Bat Trangでバッチャンと読みます)

ミャンマーの家は洋間なので、そこで中国風ベトナム産の急須と湯呑みを使うのを勝手に自分の中ではシノワズリと定義し、ハノイ名物のハス茶を嗜みながら、ホリーにも負けないハンザ市場のお姉様達のたくましさを思い出しています。

2014年〜ミャンマー在住。IT企業を現地でやっている夫、現地のローカル幼稚園に通う3歳の息子と一緒に、日々アレコレドタバタやってます。サポート頂いたら、新しいモノコト探しに使わせて頂きたいです!