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【MERY Lab】スマホネイティブの女の子たちが、アナログノートの虜になる理由

本コラムはMERY LabがForbesJAPANに寄稿したものです。https://forbesjapan.com/articles/detail/33918/1/1/1

2020年、「MERY」が注目するトレンドアイテムが、「バレットジャーナル」と呼ばれる自己成長のための手作りノートだ。「バレットジャーナル」とは、いったいどんなものなのか? なぜ彼女たちはノート作りに熱中するのか? その概要を解説し、背景を考察する。

かわいいだけじゃない!“内面の美しさ”を追求する女の子が増えている

「MERY」は、約80人の公認ライターが書く記事によって成り立っています。メディアのオープンから約2年。これまでにアップされた記事は4万5千本を超えました。

こうした膨大な記事や検索ログから見えてきたのが、10代~20代の女の子たちが持つインサイトです。反響の大きかった記事や頻出した語句、PVなどを分析したところ、「あざかわgirl」「GIFスタンプ」「オーガニック」など、さまざまなキーワードが浮かび上がりました。

出てきたキーワードをさらに分類・整理していくと、女の子たちが、「儚げで透明感のあるビジュアル」「写真や文章による高度な自己表現」「質の高いもの」を追求していることが明らかに。見た目だけでなくしっかりした中身を持ち自己表現ができる、内面から輝く女の子になりたいと願っていることがわかりました。

4万5千本超の記事から見えたトレンドワード「バレットジャーナル」とは?

そこで注目したいのが、「一歩先の世の中が見えてくる? MERY的2020年上半期トレンド予想8選」でも紹介した「バレットジャーナル」です。「バレットジャーナル」とは、自分自身を成長させるための手作りノートのこと。目標や予定をまとめたマンスリーページ、ウィークリーページ、タスクリストのほか、読書やダイエットの記録ページなどを、自分の好きなように手書きで作成していくのです。

なかには、好きなモデルの写真を切り抜いて貼っている女の子や、マスキングテープやマーカーを多用してカラフルなデザインに仕上げている女の子も。オリジナルコンテンツの度合いが色濃いものは「シンデレラノート」と呼ばれることもあります。また、オリジナル度が高いか低いかにかかわらず、そもそも「バレットジャーナル」のことを「シンデレラノート」と呼んでいる女の子も多いようです。

おしゃれかつセンスの良さもバレットジャーナルの人気の理由

女の子たちがつくる「バレットジャーナル」は、驚くほどハイクオリティです。かわいいノート、アガる写真、キラキラしたシールや付箋で彩られ、思い思いのデザインに仕上げられています。もちろんデザインだけでなく内容も、超・ハイクオリティ。

例えば、「他人の悪口はゼッタイに言わない」「お財布は毎日整理する」などの「人としての目標」のようなものが20個近く書かれていたり、大好きなタレントさんの名言がこれでもかというほどに書き込まれていたり……。なりたい自分になるために忘れてはいけないこと・整理したいことが、緻密に書き込まれているところが特徴です。

なぜ女の子は、「バレットジャーナル」に夢中になるのか?

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ここまで質が高く、完成度が高いノートを、なぜ女の子たちは、人に見せるためではなく自分のためだけに書くのでしょうか? 

とあるMERYユーザーに聞いたところ「自分の中にあるぐちゃぐちゃした気持ちを整理するため」と答えてくれました。彼女曰く「時間を取って文字にすると自然と落ち着く」「『こんな自分でありたい』という思いをブレさせないため、これからもこの時間を大事にしたいと思っている」のだそう。

他に、「もっと綺麗でかわいくなるため」「自分と向き合うため」「劣等感や妬みなどのネガティブな気持ちを整理するため」と答えてくれた女の子も。始めたきっかけは、「インスタで素敵なバレットジャーナルを見て真似したいと思った」「太っていることをからかわれ、見返したいと思い作り始めた」などさまざまですが、皆、「デジタルでパパッとメモするのではなく、アナログで時間をかけてていねいに書くことに意味がある」「ノートを書く、読み直す行為によって、自分自身をモチベートしたい」と思っているようでした。

外見だけでなく内面も磨きたい! だから無理せず、続けられる

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多くの女の子たちは、バレットジャーナルを長く書き続けています。「大学1年生のときから5年以上続けている」という若手社会人や、「中学生のときから似たようなノートをつけていた」という学生も。続けるために「忙しいときや気が向かないときは無理に更新しない」というルールを決めている女の子もいました。

「バレットジャーナルは『やらなきゃ!』という気持ちで書くものじゃないんです。『こんな素敵な人になりたい、頑張ればなれるんだ!』という、前に進む気持ちで取り組むもの。無理にやっても意味はないし、やりたいときにやればいいものだと思います」

こうきっぱりと断言するのは、バレットジャーナル歴5年以上のMERY読者。「外見だけでなく中身も綺麗になりたい」「そのためにバレットジャーナルを続けている」と語ります。

「ただかわいい、ただ綺麗なのではなく、『素敵な人』になりたい。人間として、内面から成長したいと思っています。きっと、そう考えている同世代の女の子は多いんじゃないかな? だからバレットジャーナルがトレンドになっていて、しかも自分のペースで、ゆるゆるコツコツと続けている人が多いのだと思います」(MERY読者)

考察──「バレットジャーナル」は、SNS世代のセルフコントロールツール

MERY編集部 望月 菜穂子のコメント

バレットジャーナルの内容や女の子たちのコメントからは「自分と向き合い、高めていきたい」という前向きな気持ちが見て取れます。一方で、そのうしろにチラチラと、「ぐちゃぐちゃした気持ち」や「劣等感」というマイナスな気持ちも垣間見えるように思いました。

現代の女の子は、常にSNSで、友人・知人・同世代のインスタグラマーのキラキラした日常を浴びています。おしゃれなファッション、上質な暮らし、仲間たちとの楽しいひととき……。そんな情報を毎日シャワーのように浴びせられているわけですが、現実は、楽しいことばかりではありません。SNSの世界といつもの自分を比較してネガティブな感情に飲み込まれそうになってしまうことも、きっと少なくないことでしょう。

バレットジャーナルは、彼女たちにとって、そんな感情をコントロールするひとつの術になっているのではないかと感じました。「自己肯定感が低い」と言われる若者たちが、自己肯定感を維持し高める手段を見つけ、そして動き出した、前向きな変化の兆しだとも受け取れると思います。

また、“素敵な人”を目指すために、「ものに執着しすぎず、体験も重視するようになっている」というところもポイントです。パレットジャーナルを作る女の子は、外見も内面もどちらも磨きたいという意識が強めです。よって、自分のためにガツガツとブランド物をたくさん買うような行動を好みません。プチプラという言葉が浸透していることでもわかるように、彼女たちは手軽な価格で、自ら工夫して、いいものを手に入れたり、内側から自分を磨いたり、あらゆる体験を手に入れたいと考えているのです。

時間やお金が限られている中で、それらを最大限に活用し、より良い自分を目指すために、パレットジャーナルを活用しながらストイックな努力をし続けているのだろうと感じました。

その他、デジタルからアナログへの揺り戻しという側面もありそうです。ブログやSNSなど、多くのデジタルツールは、テンプレートの組み合わせで出来上がります。どう工夫しても「唯一無二のオリジナルコンテンツにはなりにくい」という意識があるようで、だからこそ、手書きというアナログのツールに回帰しているようにも見えました。

MERY世代の女の子が持つ真面目さや誠実さ、本物を大切にする気持ち、そして自己表現へのこだわりなど──。さまざまな要素によって支持されている「バレットジャーナル」。まだまだ、その流行は終わりそうにありません。

<ポイント>
・SNSの影響で他人と自分を比較しやすく、そのため、自分のことを理解し、理想のあり方を思考するようになってきた
・バレットジャーナルは「自己肯定感が低い」と言われる現代の若者たちの自己肯定感を維持し高める前向きな手段
・情報やモノがあふれる時代だからこそ、ものに執着しすぎず、体験も重視するようになっている

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