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2020年1月の#わたしが帯を書いたなら

<はじめに>

わたしは、頼まれもしないのに、勝手に「本の帯」を書いている。

勝手に買って、勝手に読んで、勝手に書いて、眺めている。
ずいぶん勝手なことだらけだけれど、
一応そこにも、わたしなりの、誠実さとルールはあって、
・本当に人に薦めたいものしか書かない
・書き直しはしない

と、このふたつを勝手に心で決めている。
もちろん前者は、
「帯とはそういうものだろう」と思うからであるし、
後者は、
「頼まれたわけでもないのに、そんなに一生懸命書くのは、なんだか、おかしいから」だ。

本は好きだけれど、読んでも読んでも忘れてしまう。
だけど、帯を書くようになってからは、記憶にとどまる量も増えている。
ただただ布団に寝転んで、大事なお酒でも飲むようにチビチビ気ままに読みすすめていくのと、「もしも人に薦めたい本だったら帯を書かなければいけない」と思いながら読むのでは、なんだか気持ちが違うのだ。

それに、おすすめしたいポイントの中でもさらに伝えたいことを厳選して、わざわざ画用紙に手描きで書いて巻きつけているのだから、
1冊1冊がわたしにとって、なんだか間違いなく忘れられないものになっていく。

まあ、なにを頼まれているわけでもないから、忘れてしまっても一向にかまわないのだけれどね。

そんなわけで、せっかくだから2020年1月に書いた「自作の帯」をここにまとめることにしました。
(2019年に読んで、特におもしろく感じたものが多く混ざっています)

『言い訳』 

著:ナイツ・塙宣之

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『M-1グランプリ』では2018年から審査員も務めている塙さんが、「関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」を斬り口に、ここ20年程度の「漫才」にまつわる変遷や、「競技漫才」と呼ばれる『M-1』での評価基準などについてを語っている一冊。
個人的には、「かまいたち」の評以外はすべて納得だったけれど、もしこの本を今年書いていたとしたら、またすこし変わっていたでしょうね。
『M-1グランプリ』はもちろん素晴らしい大会だけれど、あくまで「おもしろい漫才」の種類のひとつでしかなくて、そこでは獲れなかった塙さんが、最年少審査員としてあの舞台に戻ってきている。
それができるのは、ナイツのネタの評価の高さもさることながら、「ナイツ」というものをさておいて、ここまで客観的に語り尽くすことができるほどの、分析力と漫才愛の賜物なんだろうなあと、改めて感じ入る一冊でした。

『あれも嫌いこれも好き』 

著:佐野洋子

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「なんだかリズムがいいのよ」と会社の先輩におしえてもらって、手にとった一冊。
『100万回生きたねこ』は知っていたけれど、その作者の佐野さんはこんな文章を紡がれるのかあ、というエッセイで、なるほど、読んでいてとても心地がいいものでした。
特に、前半に登場する「お重」にまつわるお話が、わたしには、なんかだ憧れるような、羨ましくなるような感性・文体で。ご高齢になられてからの、日々のできごとや考えたことが淡々と綴っているものだけれど、ちゃんと大人なのに、愛らしくて、みずみずしくて。
何歳になっても、こんなに新鮮な感覚で、「自分」や「暮らし」をたのしめるのなら、何歳になるのもたのしみだなあ、と思えた一冊です。

『キッチン』

著:吉本ばなな

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10年以上前に1度読んでいたけれど、なんとなく六本木の「文喫」で背表紙を見かけたときに気になって、連れ帰った一冊。
とにかく驚きました。だって、以前に読んだときの記憶はほとんどないほどに、わたしにとっては「まあまあ、おもしろかったなあ」という程度の一冊だったのですから、読みすすめていくうちに「あら、こんなにおもしろかったっけ」と。それに、なによりも、作中の「雄一くん」があまりにも魅力的で。「ああ、そうか。わたし、こういう男性が好きなんだなあ」と改めて思ったりしたのが、とても可笑しかったり。
そこから続けて、ばななさんを何冊も読むようになりました。そんなきっかけになったのが、この2019年2月に読んだ、この「キッチン」。

『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』 

著:幡野広志

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これは、2度読みました。家族や環境(主には両親)に縛られることなく、「自分で考えて自分で選ぶこと」の大切さを幡野さんが淡々とおしえてくれる一冊。基本的には、「“家族”からの解放」を伝えてくれている本だけれど、わたしにとっては「ああ、家族がほしいかもしれないな」と真面目に考えるきっかけになったものでした。
母親や実家を失ってから、「帰省する」「お盆」「年末年始」「親孝行」そんな当たり前のことばを耳にするたびに、辛くて辛くて、「家族」の匂いのするものから、どこか目や耳を背けるようになっていたところがあったんだろうと思います。「結婚」についても、避けて通りたいものでしかありませんでした。
そんなわたしが久方ぶりにそんな気持ちになったのは、この本で「“家族”って自分でつくるものだったんだな」と素直に学んだのだと思います。まだ自分自身がどうするかはわからないけれど、確実に価値観を変えてもらえるものでした。

『アイデアのつくり方』

著:ジェームス・W・ヤング

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すべての思考に共通するような、「不変の法則」が綴られた名書。これまでも幾度か読んできましたが、人におすすめされて改めてこの機会に読み直しました。
とくかく短くて、ただただ「当たり前」のことが書いてある。
だけれど、田中泰延さんも仰ってるように、基本のステップ1は、とにかく「調べること」と「知ること」。
そしてそれ以前に日ごろからどれだけアンテナを張ってあらゆる対象物に興味や関心を持って触れられているか、まさに「ステップ0」がモノを言うのだなあ、と改めて戒めのように感じました。感じましょう。調べましょう。

『孤独と不安のレッスン』

著:鴻上尚史

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鴻上尚史さんの「ほがらか人生相談」が本当に大好きで。1冊なにか読んでみようと手にとったのが、この本でした。
果たして、ひとりでいること、ひとりでご飯を食べることは、辛いことなのか?「孤独」とはいったい何もので、それは悪いことなのか?
わたしたちが向き合い、熱心に気に留めている「世間」とは何なのか。
鴻上さんのあの明快でやさしい語り口そのままに、わたしたちが「当たり前」だと捉えていることを「本当ですか?」と問いかけてくれる。
ついつい「自分と同じことを、同じように感じてくれる人がいるはず」と思いがちなわたしに、「いいえ、あなたはあなたしかいない」と改めてやさしく説教してくれた一冊です。

『きれいなシワの作り方』

著:村田沙耶香

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村田沙耶香さんの小説はよく読みますが、エッセイははじめて。
わたし自身は、「年齢を重ねることは、経験や自由が増してとってもたのしいことだよ」とまわりの素敵な人たちに教わりながら育ったものの、(実際に仲間の人たちはとても たのしそう!) 反面、傷つくような嫌味や揶揄をあれこれと言われることもないわけではないものだから、この気持ちはなんなのだろうな、と。
そんなもやもやがある女性にはぜひ読んでもらいたいなあと思います。「ああ、このこと考えてた」「前に友だちと話した!」ということばかりがクスッと笑える文体で書かれていて、なんだかまるで、大事な「女友達」のような一冊です。背伸びがなくて、それでもちっとも惨めじゃない。でもすごくよくわかる。
“わたしたち”にしかわからない「あれこれ」がたくさん詰まっていて、とても素敵な一冊です。(先日、直接ご本人にお礼が言えて嬉しかった)

『ラヴレターズ』

著:作家、女優、画家、映画監督など、26人

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26人の錚々たる著名な方々が綴る、愛した人や愛する人、愛してやまないモノやどうぶつへ贈るラブレターが、この小さな一冊にぎゅっと詰め込んであります。これがもう、なんだか宝物になりそうな素敵な本で。
どんな仕打ちを受けることがあっても、どんな離れ方をしても、1度でも「恋」をさせてくれた相手には、結局「ありがとう」なんだなあ、ということが26通の愛の手紙を通して本当によくわかるのです。
(自分自身は、そこに到達できているのか、まだよくわからない部分も多少あるけれど‥)
わたしは、吉本ばななさんと川上未映子さんと小池真理子さんと中江有里さんの手紙に特にグッと心掴まれたような気がします。
2019年の年末に読めてすごくよかった一冊でした。愛を込めた文章が書きたくなります。

『「未来のチーム」の作り方』

著:藤村能光

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予約して購入したものの、ずっと読みたくて読めていなかった一冊。
同じ「メディア」をつくる編集部に身を置いている自身としては、参考になることがたくさんありました。
リモートワークや副業解禁は、多くの企業が実施をはじめているところだけれど、どうにもネックとして語られるのが「コミュニケーションの希薄化」と「管理」の問題(うちでもそうでした)。
だけど、サイボウズのチームのコミュニケーションは、「必ず出社」の会社よりもむしろ、とても「見える化」と「閲覧権限」が健全に思えました。(業務は見える場所で。1on1の有効活用と信頼構築。など)
今後必ず、社内での評価よりも市場での価値が問われ、フレキシブルにチームを組んでプロジェクトを実現させていく時代が来るのでしょうから、今後の模範になるチーム形成だと思ったと同時に、時間節約から個人プレイになりがちな自分への自戒も含め、大事なインプットになりました。
(現在、自宅勤務が中心になり、結構うまく活用できている気がしています)

『一切なりゆき〜樹木希林のことば〜』

著:樹木希林(編・文春新書)

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頭の中で、ちょっとした物語を考えたり。おもしろい小説を読んで、「日本の俳優さんで実写化するなら…」と考えるとき、やっぱり樹木希林さんは欠かせない女優さんでした。だって、こんな個性、他にはないから。
ちょっと投げやりで、「つっけんどん」な言葉づかいの中に、丁寧に織り込まれたユーモラスと、知性とやさしさをがあって。
「こだわりは無い」「欲もない」とご本人は言うけれど、「こういうことはしたくない」「こういうものって素敵」という軸がもちろんあって、内田さんを頑として手放さなかったのも、やっぱり強い強い意地と愛情と、「何としても大切にしたい相性」を感じていたからなんだろうなあ、と。
年齢を重ねてますます魅力的になって、病とも「向き合って」「付き合って」いくスタイル。癌には「整理する時間を与えてもらえる」という発想にもまたハッとして。対して、一切の整理ができぬまま若くして逝ってしまった母を想ってみたりと、本当に何度も読み返したくなる一冊で、かなりたくさん線を引きました。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

著:ブレディみかこ

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2019年に読んだ本の中では、いちばん引き込まれたものだったかもしれません。テーマのひとつでもある、まさに「無知」ということ。
これまで「知らなかった」というよりも「考えたこともなかった」イギリスでのさまざまな事実が、読み進めるたびあれやこれやと押し寄せてきて、思わず考え込みながら、途中は「でもさ、」と自分もまるで、この親子の会話に混じるようにして、意見や思うことが溢れかえってきます。
扱われているのは、人種や貧富などの「差」や「偏見」や「差別そのもの」についてですが、決して暗くも堅苦しくもならないのは、著者である「母ちゃん」の人柄と書く力に寄るものなのかなあ。
それにしても息子さんは、本当に思いやりと知性にあふれていて、大人たちよりもずっと早くスイスイと現状や問題の本質を見抜いて乗り越えていきます。その姿がたくましい。そんなふたりの会話に何度も「はあ」とため息が漏れました。かっこいい。

『もぎりよ今夜も有難う』

著:片桐はいり

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片桐はいりさんの短篇エッセイ集。同僚の子に「ぼくは、文章を読むのは苦手だけど、めるさん(私)と片桐はいりの文章だけ読める」と言われたもので、気になって気になって手にとりました。
特に文体も似ていないし、なんだろうかなあ、と悩んだけれど、おそらくは「記憶力の恐ろしさ」「日常性」のようなものかもしれない、とも思います。
内容はすべて「映画」と「映画館」にまつわるもののみ。「まあ、よくこんなに思い出があるものだなあ!」と単純に感心・感動してしまいますが、ひとつひとつは、何気なくて、とりとめのないお話ばかり。だけど、全体を通して「もぎり担当として7年間映画館で勤めていた人が」「その映画館に舞台挨拶で女優として帰ってくる」という鳥肌の立つようなひとつのストーリーがあるからこその魅力なんでしょうね。

『記憶屋』

著:織守きょうや

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今さらですが、これは、本当におもしろかったです。時間が経つのを忘れるとはこのことかと。
シリーズの「0」。「ホラー文庫」ですが、広義で捉えても"ホラー"とはどうしても思えず、切なくてやさしいミステリーだなあと思います。
「意外な結果だろうなあ」と思いながら読み進めているくせに、とにかく続きが気になって仕方ないばかりに、「なんとなく違和感を持っていた部分」もサラサラと乗り越えててしまっていて。ようやく最後で自分が大きな勘違いをさせられていたことに気づきます。そして一層、切なく愛おしい気持ちになる。いやあ、本当におもしろかったです。
今年公開されている映画は、このスピンオフ版。また全く違った内容になっているので、どちらもたのしめると思います。素敵なミステリーでした。

『僕らはSNSでモノを買う』

著:飯髙悠太

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この本もまさに、Twitterの投稿で見て、amazonで購入しました。
ところが、しばらく「次読む候補」としてしばらく読めておらず、リアルの場で飯高さんの登壇を聞いて、ようやく、急いでその日のうちに一気に読み込み。「読む」というアクションの一押しが「リアルの場」だったことはおもしろいなあと思ったけれど、そのイベントにしても、結局SNS経由で入会したサロンだったので、やっぱりこのポストまでの一連の流れもSNSを介した「ULSSAS」そのものなんですね。(そしてそれは繰り返される)
獲得すべきファンの明確なイメージや、KPIの考え方など、もちろん改めて「自分の知識になった」点もたくさんあるけれど、すでに「実行できていたこと」さえ、こうして体系立てて、丁寧に説明してもらえると、一緒に仕事をしているメンバーにもしっかり伝えやすいので、実務に確実に繋がる内容だと思います。
オウンドメディアに関わるひと、SNSマーケに関わる人は必読の良本でした。

『岩田さん』

ほぼ日刊イトイ新聞・編

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HAL研究所の代表を経て、任天堂の代表取締役社長を歴任されていた、プログラマでゲームクリエイターの岩田聡さんのことばを集めた一冊。
詳しい感想は、別のnoteにまとめて記載しています。
📝『岩田さん』という本に、帯を書くなら。
どこまでも穏やかな物腰で語られるのは、「人をたのしませること」へのこだわりと、そこに辿り着くための「合理性」。 人との関わりを大切にしながら、「自分にできることなら」と次々と難題を超えてきた岩田さんの、知的さとお人柄がページをめくるたび浮かび上がってくるようで、聞いたこともなかったはずの声さえ聞こえてくるようです。
お話のお相手は、仕事仲間であり友人でもあった糸井重里さん。おふたりの関係がとにかくわたしはうらやましくて。わたしも誰かにとっての、糸井さんに、そして岩田さんになりたいと強く思ったのでした。
ビジネスや思考について学びながら、まわりの人、それから「仕事について語らえる友人」を大切にしたくなる一冊です。

『ノックの音が』

著:星新一

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友人と話していて、わたしが本を好きになったのは、23年前、母の大きな本棚の中から、特に理由なくこの「ノックの音が」を取り出して、そっとひとりで読んだことがきっかけだったことを、急に思い出しました。
そのときのことはとても鮮明に覚えていて、あまりに夢中になっていた生で、気づいたときには日が陰っていました。
 「ノックの音がした」で始まるショートショートが15作品掲載されていますが、どれもこれも予想外の展開に。星新一さんの作品の中でも、なんだか特別に大好きな一冊です。
それから23年が経ち、「そういえば」と思い出したものの見つからず、amazonで改めて購入して読んでみたところ、繰り返し読んだせいか15作品漏れなく最後の顛末をよくよく覚えていて自分でも驚きました。
そのあとの暮らしはもちろん、自分自身が書く文章も、ちょっと影響されているかもしれないなあ、と。幼かったわたしは、とても良い本を選んだなあ。

『短歌のレシピ』

著:俵万智

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特に短歌をたしなむわけではないのですが、書き手としてこれは非常に読んで良かった本です。
すべて添削形式で紹介されているので、どれも元から素敵な歌ですが、「ああ、たしかにさらに良くなってるなあ」と素直に感じることができるし、とにかく「てにをは」や単語の順序や、どこまでを読者に託すか...など、細かい話だけど、それだけでグッと印象が変わることを改めておしえてもらえます、推敲にとても役立つ視点ばかりです。
だけどただひとつ、わたしには「添削前が好きだなあ」という歌があって。なんだかそれがすごく良くて。
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「もしもし」の声で「風邪か?」と聞く君が好きだったとても好きだった(桜井英さん)
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なにが自分の琴線に触れるのか、そのへんもじっくり考えるきっかけにもなり、たくさん付箋を貼ったので、これからも読み返す本だと思います。

『卵の緒』

著:瀬尾まいこ

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瀬尾まいこさんのデビュー作。坊ちゃん文学大賞を受賞している作品です。
「血のつながり」とは「親」とは「家族」とはなんなのか。
収録されている「卵の緒」「7's blood」という2つの話は、相反しているようで、それでも「母の強さ」というものがただ、ひしひしと伝わってくるあったかい作品です。
おもしろかったのは、「僕は捨て子だ」から始まる「卵の緒」の文体が、主人公が成長するにつれ徐々に「小さな子ども」から「少年」へとすこしずつ、丁寧に成長していくところ。
描写を説明しながらも、何よりも、「ああ、文体が時間の経過を表してくれてる」ととてもおもしろく読みました。
短くテンポもいいので、かなり読みやすい仕上がりになっています。

『2分間ミステリ』

著:ドナルド・J・ソボル

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たった2ページちょっとのミステリー小説が71本も集まっています。
すべてが謎解きになっていて「なぜ、博士は犯人が彼だとわかったでしょう?」「なぜ、彼の嘘はバレてしまったでしょう?」とクイズ形式になっているわけです。
古畑ファンということもあり、「ははん、本当に居なかったら、犯人はこんな情報を知るはずないもんな!」とたのしく解決できるものもありましたが、「こんなアメリカの常識知らないよ」「いや、それは屁理屈やで」という回答まで、バラエティに富んだ回答たちが揃っていました。
これは友だちとか恋人と一緒に謎解きながら読みすすめると、かなりたのしいと思います。同シリーズが他にもいくつか出ているので、旅行の移動時間なんかにもおすすめ。

『マチネの終わりに』

著:平野啓一郎

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去年、映画化の前に読みました。
出会ったことの「意味」だとか、タイミングやすれ違いだとか、あのときこうしていれば…、とか。大人が映画『ラ・ラ・ランド』をおもしろい、と思うのと同じようなことで、誰かを深く愛したり後悔したり辛すぎる別れを経験していないと、なかなか共感が難しい内容かもしれません。
全体を通して、「過去は未来によって変えられる」というのがひとつテーマになっていて、そこについてもとても共感できたけれど、わたしが最も共感したのはお互いに惹かれている理由の部分だったかもしれません。
主人公・薪野が、見た目も美しく特別な血筋を持った洋子に惹かれることを「女性をアクセサリー感覚で」「自慢がしたいから」と指摘している書評も目にしましたが、そんなふうには到底思えませんでした。

ふたりは、知的レベル・興味レベル・心地いい距離感・ジョークの嗜好がすべてバッチリはまっていて、とにかく2人で話すのがたのしくて仕方ないのです。そしてそのたのしさを他の人とは味わえない孤独を持っている。
相性とは、そういうことなんだろうなあ、と思いました。

昨年2019年に読んで、特によかったものと1月に読んでよかったものを、ざっと並べてみました。本はいいなあ。帯を書いていなかったら、絶対こんなに覚えていなかったけれど。

最新の「自作帯」はこちらです。

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