温泉シャークの面白さとは(初B級映画)ネタバレなし

温泉シャークを見た。淀川花火大会に向かうきらびやかな二人組の集合を横目に、僕は映画館へと入っていった。

公開からそこそこ経っているはずなのに、席はほとんど埋まっていた。客層は20代から30代の男女が多かったような気がする。

肝心の映画の中身は、つまらなかった……のかも知れない。終わったあと、他の客たちは口々につまらないな、などと楽しそうに言っていた。本当につまらない映画では、こうはならない。僕の中でも、つまらなかったという感情がある一方で、不快さなどマイナスの感情は全くなかった。正直、困惑したので、細かく考えていった。

まず、大前提としてキャラクター描写は成立していた。特に、研究員と市長のキャラは個人的にも好みだった。きちんと脇役のキャラにも印象を与えるためのシーンを用意していて、そこはちゃんとしていた。

次に、ストーリーについてだが、正当な基準で言うならば、ひどい。最近見た映画では、ストーリーにあまり満足できないものが多かったが、その中で群を抜いてひどいと言える。マッチョ(というキャラ)の無理やり感など、子供が積み木を積み上げたかのような物語構成は、どうにも救いがたいものを感じた。
しかし、このひどい構成は、ひどいと思いつつも不快ではなかった。別に面白いとかではない。上映中に笑ってしまったのは(劇場の雰囲気を加味してもこんなの初めてだ)、嘲笑の類だった。そう、感動でも爆笑でもなく、苦笑、嘲笑こそがこの映画の面白さだったのだ。

最後に、表現について触れる。CGはイマドキの映画なのかと疑うほど安っぽいし、無料ソフトでグリーンバックを切り抜いたレベルの合成もあった。演技は固いし、登場人物が倒れるシーンなどは演出をかなり誤魔化している。だが問題は、これが故意なのかということだ。もちろん、故意に決まっている。これが、まともだったら僕はこの作品を嘲笑できただろうか。

悲劇でも喜劇でもない。人を感動させない。ただその珍妙さを笑い、おかしかったと思ってもらうために最善を尽くしているのが、この映画なのだ。

ただ……もしこれが、財布に残った最後の1000円(高校生価格)で行った映画だとしたら、僕は温泉シャークを許せないだろう。本当に本当に貴重な時間を割いて、大きな期待を持って行ったとしたら、墓に入ってからも温泉シャークを恨むだろう。比較的時間のある今行ったからこそ、ひどさを許し、その先の嘲笑という楽しさまでたどり着くことができたのだ。

余裕があって、暇で、他に見る映画もない人は見てもいいんじゃないだろうか。また、新しい物を知りたいという怖い物しらずの人も。

――肯定的に書いたが、僕は多分、二度とサメ映画やB級映画の類を見ることはない。今回の映画で底が知れたし、他の映画を見る方が価値があるし楽しいと思うからだ。誰か、B級映画愛好家がいたら、何があなたをそんなに駆り立てるのか、教えてほしい。


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