近藤康太郎「アロハ記者の文章術」受講感想

 朝日カルチャーセンターにて、ベストセラー『三行で撃つ! 〈善く、生きる〉ための文章塾』の著者、通称「アロハ記者」こと近藤康太郎氏の文章講座を受けた。
 いくつか心に残ったことを書いておく。

ライター(書き手)が苦労して読者は楽をする

講座での講師の発言より

 講義中何度も繰り返されたせりふである。「苦労する」とはどういうことかを、講師は道にたとえていた。

文章はサービス精神で書く。サービス精神とは、道をきれいにすること。小さい小石や雑草をどけて、歩く人(読者)が歩きやすくすること

講座での講師の発言より

 道をきれいにするというのは、読者が迷わず歩けるように、つまりわかりやすい文章を書けということだろう。「(このままの文章では)レイコンマ何秒のあいだ、こっちだと思う(読み違える、迷う)わけですよ」とも講師は述べていた。だから小石や雑草をどけなければならないと。
 もっと具体的には、文章の「妖怪」をなくせと講師は言った。

 文章を邪魔する3妖怪
1匹目 重複ドン
2匹目 どっさりモッサリ
3匹目 わかりにっ壁

講座での講師の発言より

 「重複ドン」は、同じ言葉ばかり使うなと。何度も同じことを書いていたら削れ。これは当然だ。さらに、字面としても同じ漢字ばかり見えないように工夫しろとも述べていた。重複ドンについては、自分は相当に意識して書いているつもりだ。
 次の「どっさりモッサリ」は、文章がもたつく箇所を取り去れということだった。読者がするっと読めない文章は書くなと。レイコンマ何秒であっても読者の時間を余分に奪うな、ということだろう(このままの言葉で言ったわけではないが、自分の理解としてそう思った)。
  ちなみに文章がもたついている箇所の70%は指示代名詞だという。これは知らなかった。わたしは自分の文章はもちろん、人の文章を直すときにも、指示代名詞が「一瞬で」何を指すかわからなければ書き換えている「つもり」ではあるが、やはり要注意事項ということだろう。
 最後の「わかりにっ壁」。一番難しいのがこれだという。ライター(書き手)が「自分だけわかっている書き方をして、読者にはすぐ伝わらない」文章のことである、と。これを取り除けたらプロだと講師は述べたが、ああ、やっぱり難しいのかと思った。
 これまたわたしが人の文章を直すとき、「アナタ(書き手)は十二分に承知のことでしょうが、読者にはわからないんですよ(だから、理解できるように書き換えます)」と思って手を入れることがものすごく多い。
 なぜこれがわからないのだろうとずーーーーっと思ってきたが、なるほど、これがわかればプロなのか。ということは、ふつうの人はわからなくて当然なんだな。人のことばかり言ってないで自分の文章も「(脱稿する前に)もう一度」見直さないと。

常套句は使うな

講座での講師の発言より

 どんな文章術の本にもあるが、理由は「文章が陳腐になるから」くらいしか書いていない。講師はこう言った。「常套句をなぜ使ってはいけないか。それは、観察をやめてしまうからだ。『思わずクスリ』ってほんとにそう笑ったのか。『思わずホロリ』ってほんとうにそう泣いたのか。絶対に違うはず。きちんと観察すればそんな語が出てくるはずはない」
  「観察」をやめてしまうから常套句はNGというのは知らなかった。わたしの理解としては、観察をすれば具体的に自分のことばで書くことができる。だから常套句をやめて観察しなければならないのだ、ということだと思った。
 講義中、何度も「ライターが苦労して読者は楽をする」と繰り返された。わかっているつもりだったが、いつも「文章の3妖怪」がいないかどうか(絶対にいる!)探して書かねばならない。そう、改めて思った。

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