ハヤテノコウジ『スケッチジャーナル』感想
「スケッチジャーナル」って何だろう。著者は「人生を定義する自分日誌」と言っている。もう少し噛みくだいた説明は次のとおり。
まさに本書一冊が丸ごと、著者の人生の「ログ(記録)」である。著者は会社員の傍らイラストレーターとして活動していると聞けば、「なあんだ、じゃあ絵が描けるのは当然」。そう思ってしまう。
「スケッチジャーナル」はたしかに自分の記録を「絵を中心に」描いたものだが、本書は絵の描き方の指南書ではない。「絵が描けようと、描けなかろうと、あの手この手で自分の思考や行動を記録しよう」という本なのだ。時間がなくてもメモのように記録をつける方法も多く紹介されており、「あっ、これなら自分もできそう」と思える。
たとえば著者は毎日「三行日記」を書いているという。これは実践者も多いだろう。わたしも「十年日記」をつけており、毎日四行程度書いている。だが、違うのはここからだ。
これはやってみたいと、早速まねをした。「もっとやるリスト」には、生活のことをまず書いた。「スーパー銭湯」「公園に散歩」「星座早見盤と共に星を見る」「星乃珈琲でコーヒーを飲む」「ランチ外食」等。次は仕事のことだ。「セミナー開催後は資料を整理・分類」「資料はスライド2枚がA4で1ページになるよう配置して配布」などなど。著者は手描きだがわたしはキーボードで打ってプリントし、仕事部屋の扉の内側に貼った。こうするといつでも見えて忘れない。「そうだった、これはもっとやることだった」「これはやらないことだった」と一瞬で思い出せるというわけである。
こんなアイディアが本書には散りばめられている。絵を描かなくても、記録は残しておきたい。そういう気持ちになる。出張や散歩に行ったら、すごろくのように「歩いた場所」「行った場所」を文字で書き、矢印でつなげるだけ。絵は一切ない。これだけでも、後で見たときに役立つ。多忙な出張中も、こうやって記録しておけば、次に行くときに「あのときどうだったっけ」とすぐに分かる。ビジネスだけではない。散歩についても著者は記録を勧めている。ふらっと出かけた記録をノートに箇条書きで残しておくと「そうそう、ここに行ったんだ」と思い出せてたのしい。
まさにスケッチジャーナルは著者の定義するとおり「手帳やノート等の身近なツールを使って、作者の人生を記録する日誌(Journal)」なのである。
こう聞くと、いわゆる絵日記やトラベルダイアリーと同じといえそうだが、スケッチジャーナルが他と大きく違うのが目的である。
「自己肯定感を上げる」は、ちょっと耳にタコができた言葉に聞こえるかもしれない。意識高くないからいいや……と思ったら、次の引用を見てほしい。
そう、自分のくらしにイイネするためにスケッチジャーナルを作ろうよ、というのが著者の呼びかけである。そうそう、本書にはサブタイトルがついている。『自分の暮らしに「いいね!」する創作ノート』。友達には「イイネ!」を押すが、自分には「イイネ!」が足りていない。わたしもそうかもしれない。そうか、ちょっと「自分ログ」の記録を増やしてみようか。
※画像はわたしのスケッチジャーナルより、奥多摩のさんぽ記録。
観光案内から地図と説明を切り抜き、それに自分の絵をつけてみた。こんな風に「すべて自分でかかなくてもよい」のがスケッチジャーナルでもある。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?