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わたしの仕事 #1 英語教材・学習参考書校閲

 noteで「お仕事依頼ページ」を作ろうと思い立ちました。その前に自分の仕事を振り返って簡単に紹介しようと、これから数日間書いてみます。
 お仕事はnoteのメッセージにて承ります。ページ最下部にある「クリエイターへのお問い合わせ」をクリックしてください。

英語教材校閲とはこんな仕事

校閲の定義

 わたしの考える校閲の定義とは、「原稿(校正刷り)の内容や表記の誤りを指摘し、正すこと」です。

教材校閲特有の要素

 一般書の校閲と一番違うのは「問題と解答が整合しているかどうか」を見るところです。目次、索引、側注、単語リスト、例文等すべての要素と本文(問題)との整合性を見る、というのが教材校閲ならではの要素かもしれません。言い換えると、整合性を見なければならない要素が多い、ということになります。

英語教材特有の要素

 英文はネイティブチェックを通っているはずですが、三単現のsや時制の間違い、代名詞の不整合(主語はSheなのに所有代名詞がhisになっているなど)など、ケアレスミスが残っている場合がよくあります。英文は異なるツールで複数回スペルチェックをかけ、別の複数のツールで文法チェックをかけ、もちろん校閲者本人も舐めるように読み、音読してチェックします。
 また、発音のカタカナ表記や発音記号が入った教材の場合は、当然それもチェックします。

中学生向け特有の要素

 中学英語はカンタンだから校閲もカンタンでしょ……ということはなく、むしろ「しばり」が一番きついのが中学生向けです。
 たとえば、未習事項や単語が登場していないか(例:不定詞をまだ習っていないのに本文に使われていないか)は必ずチェックする要素です。また、ネイティブには自然であっても、「学校で習う英語」ではない表現(例:be different than)が使われていれば疑問出しをします。

中高生向け共通の要素

 一般と違うのは、例文や問題文の妥当性をかなり厳しく見る点です。特に気をつけるのは、ジェンダー平等(例:「医師」は男性ばかりになっていないか)、動物虐待表現(例:「猫を箱に入れた」)が入っていないか、中高生にふさわしくない内容(例:「終電での帰宅」や、大人の登場人物でも「アルコール」を買ったり飲んだりするシーンはよくない)が入っていないかというところです。

問題・解答のチェック

 どんな教材でも全科目で共通といえるのは、問題が成立しているか(解答が導き出せる問題か)、別解が出ないか(解答を1つに限定している場合、別の選択肢も解答として正答ではないか)、解答が合っているか、といったところです。「解答を見ずに問題を解いてみる」ことで発見します。
 なお、英語教材で「編集上のミス」が出やすいのが整序問題(単語を並び替えて英文をつくる問題)です。正答通りの並びになっていないか、不要単語のあるなし、不足単語のあるなし等、仕様をひとつずつ確認して念を入れてチェックします。

英語表記のチェック

 大文字か小文字か(the Internetかthe internetか)、分かち書きにするか1語にするか(Merriam Websterに準ずる)、センテンス間のアキは2スペースか1スペースか(中学生向きだと2スペースが基本)、パーレン、イタリック、ボールドをどこで使うか、序数詞の扱いはどうするか、省略箇所はピリオド✕3なのか波カッコか、単位記号の前を1スペースアケルのかツメルのか、空所補充問題でピリオドを書いておくか書かないか、などなど、チェック項目満載です。

日本語表記のチェック

 読点はナミダ点か全角コンマか、漢字かひらがなか(ひとつ、一つ、1つのどれか、いす、椅子、イスのどれか、食べものと食べ物どちらか等々)、疑問文や感嘆文の訳に疑問符や感嘆符を使うのかどうか、例文訳は全角かっことかぎかっこのどちらを使ってくくるのか、約物はすべて全角にするのか、文の要素はSVOCを使うか、「主語・動詞・目的語・補語」にするか、英文でダッシュが使われていたら和訳はダーシにするのか、などなどこれまたチェック項目満載です。
 英語も日本語も、教材では一般書よりも「約物(記号)」をはるかに多く使うので、その分見る要素が多いということになります。
※トップ画像に、自作チェックリストのうち「日本語表記統一」シートの一部を載せておきます。

文法用語の表記チェック

 文法説明でたとえば分詞はdoかVにするか、ハイフンか波カッコを使うのか(doing、V-ing、-ing、~ingのどれを使うのか)、 不定詞かto不定詞か、などなどこれまた多くのチェック項目があります。

レイアウトチェック

 見出し、文字飾り、文字飾りや表組みのスタイルがそろっているかどうか、図解や吹き出しが使われていれば、こうした統一もチェックする必要があります。この辺は一般書と同じです。

音声校正

 最近は、英語教材にはほとんど音声を入れるようになりました。ということは音声校正も当然付いてきます。英文どおり読まれているかを追っていく「耳」のスキルが要求される作業です。
 具体的に注意するのは、年号の読み方(2050はtwenti-fiftyでよいか)や、$がdollarsと抜かされずに読まれているかどうか、男女のナレーターがきちんと担当箇所を読んでいるかなどがチェックポイントになります。本文がsheとあるのに男性のナレーターが読む箇所に入っていたりしないかということです。
 注意するのは英語だけではなく、日本語のナレーションが間違っている(「金」を「かね」と読む箇所で「きん」と読んでいたり)こともあるので気が抜けません。

まとめ

 実際には、上記で述べた数百倍の項目をチェックします。あまりにも項目が多いため、自作チェックリストを作成し、それに基づいて校閲することになります。教材を校閲したことがある方なら、教材はチェック項目がとにかく多い! 特に整合性のチェック項目が多い! というのは実感でわかっていただけるかと思います。

最後に(お仕事の相談はnoteのメッセージにて)

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