セルフ校正のポイント――(3)

 先日の投稿 ↓ の続き。

 「見る」の次は、心理的な機能を考えてみよう。
 心理面で校正に必要なのは注意力である。これに異を唱える人はいないだろう。そして、注意力を高めればミスは減るように思える。
 しかし、そもそも「注意力」とは何だろう。心理学では、「注意力」とは、脳の認知機能をある部分に集めて、他の範囲への認知をその分薄めることをいう。
 つまり、注意力を高めるというのは、太陽光を凸レンズで集めて発火させるように、「その一点」だけに集中することである。逆にいうと、その一点以外は疎かになる。これは覚えておく必要のあるポイントだ。
 なぜなら、校正でよくあるケースは、一か所間違いを見つけて赤を入れたはいいが、そのすぐ近くにある間違いを見落としてしまうというミスだからである。注意力について脳の働きを知れば、これが「一点集中」により起きたミスだとわかる。
 原因がわかれば予防もできる。集中した範囲の周辺を見るプロセスを作ることだ。赤を入れたら、もう一度その周りだけを読む。
 こうすれば、かなりの部分「周辺の間違い」を拾える。
 目、心理ときたら次は脳の話である。ものを生み出す営み、たとえば執筆においては、一気にのめり込んで集中力が続く限り書いていくのが最高であるとされている。長時間没入できればそれに越したことはない。
 だが、ノンクリエイティブな作業である校正はそうではない。ひとさまが生み出したものを読むのは、緻密でミスが許されない作業だ。ずっと同じテンションで長時間進めていく必要がある。淡々と、粛々と、冷静な姿勢をもって、どんなときでも文字に「同じ気持ち」、「同じ姿勢」で向き合う。
 そのために大事なのは、自分のパフォーマンスを常に自分で把握しておくこと。いつも「もうひとりの自分」が「作業している自分」を俯瞰している。そして、パフォーマンスが落ちてきたら、たとえば目が文字の上を滑り始めたと思ったら、そこで作業を中断させる。そして、回復するまで再開してはならない。
 その方法はいくつかあるが、よい休憩をとることが一番だ。そのためには運動が最適である。自分は、エアロバイクを10分こいだり、ラジオ体操をしたりする。切羽詰まっているときはほんの数分間だけ目を閉じる。頭頂にある百会(ひゃくえ)、手の甲にある合谷(ごうこく)といったツボを指で押したり揉んだりすると、もっとよい。ペンの逆側(ノック部分)でツボをグリグリするとかなり効く。
 最後に、校正という作業には向き不向きがある。
 ひとつひとつ間違い(かもしれない語句・表現)を拾っていくのは、細かい作業が苦手な人にとってはストレスでしかない。
 いや、人の文章ならばできるが、自分の文章を自分で読んで間違いを探していくのはできないという人も多数いる。そんな人がどこかに発表する文章を書く時、いやブログやSNSでちょっと長い文章を書く時にはどうするか。話は簡単で、友人に読んでもらえばよい。
 友人同士でお互いに読み合い、誤字・脱字や内容の矛盾を指摘する。そのプロセスを経た文章は、格段に質の高いものに仕上がっているのは間違いない。この話はいつもしている。もちろん「友人同士」なので無料である。それなのに実行している人を見たことがない。
 というわけで、わたしの友人のみなさま、ブロク記事など「原稿料が発生しない文章」であれば、誤字・脱字チェックは無料でやりますよ。ぜひ声をかけてください(原稿料の発生する文章は有料にて承ります)。

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