放送大学「より良い思考の技法――クリティカル・シンキングへの招待』」受講ノート~第3回

実践2 インターネット情報を評価する ネットの大海原へ!

  今回はインターネットリテラシーの回だった。なんとなく思っていたことが菊池先生の口から次々と発せられていく。おそろしくもあり「やっぱりそうだったか」感もある授業であった。

バイアスのかかった情報が選択されてしまう

 昨年、エコーチャンバーという語を知った。執筆に携わった教材で、エコーチェンバーをテーマにコラムを書いたときにいろいろ調べたのである。
簡単にいうと、自分は残響室にいて、周りからは自分が言ったこととほぼ同じ主張やさらに過激な主張だけが返ってくる。それがエコーチェンバーと呼ばれるものだ。恐ろしいのは、そうでない意見が聞こえなくなってしまうこと。SNSではとくにその危険性が高い。
 自分はいつだって、自分の意見が正しいと思い込んでしまう部屋にいる。これを自覚して、常に自分と反する意見を探していかないといけないのだろう。AIについてはとくにそうだろう。
 ふつうに生きているとどんどん確証バイアスが強くなっていくという自覚は、常に持っていないといけない。

羅針盤があれば恐れることはない

 菊池先生曰く、要注意情報には3種類ある。ミス・インフォメーション(誤情報/不正確情報)、マル・インフォメーション(事実だが悪意の情報)、ディス・インフォメーション(偽情報、捏造、虚偽の情報)。これらに嵌らないために、上にも書いた「自分と反する意見を常に探して求めていく」こと、「プライベートウィンドウなどを活用して、『常に自分に合ったものがお勧めされる』機能をカットする」こと、「感情がメタ認知をくもらせていないかセルフチェックしてから投稿する」ことを心がけようという。
 これに加えて、自分にとっては「定期的にネット情報を遮断する機会をつくる」のが大切だと思う。月に1日でもいいので、ネットを見ない。仕事上必要なメールだけは立ち上げて調べ物はするが、SNSを見にいかない。
 そういう日を作ると、少し心の中が静かになってきて、自分が本当にもとめているものは何かがクリアになってくる。経験則だが、これからも続けていきたい。

「集合知」がネットのプラス面なのだから活用したい

 SNSやインターネットには、良い面ももちろんある。そのひとつが「集合知の実現」だ。
 わたしは翻訳者コミュニティにいくつか身を置いている。すべての無料だが、会員はそこで質問し合ったり、詐欺講座にだまされないように注意し合ったり、AI翻訳に負けないように訳文を磨くテクニックをシェアし合ったりしている。
 こうしたコミュニティがいくつも存在し、集合知を持っているというのはほんとうに翻訳業界の強みだと思う。
 校閲者もこれができないだろうか。クローズドな場でみんなの失敗例を持ち寄ったり、単価アップへの道をさぐったり、Web校正やタブレット校正のやり方を教え合ったり。そういう場があればぜひ入りたい。だがいまのところ、「料金をとって教える場」、つまり個人の営利目的のビジネス以外の校正・校閲コミュニティという話を聞いたことはない。
 翻訳者コミュニティが盛んなのは、「ゆるくつながってる人がほしい」「情報がほしい」と思う人が多いのだろうか。校閲者はそうじゃない気がする。常に「自分ひとりでコツコツ、黙々と作業する」仕事であり、他人と積極的に関わりたいという人も少ないのかもしれない。
 それでも、少数でもそういう人がいたらFacebookのコミュニティなどつくってみたい。賛同者がいたら立ち上げようと思うので、これを読んだ校閲者の方がいらしたら、イエスでもノーでもコメントをいただけるととても嬉しい。もちろん、反対意見も大歓迎です。

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