マガジンのカバー画像

やまと言葉を哲学しよう

4
しばらく昔に書いて発表した論文集。権利者オーケー。
運営しているクリエイター

#受領

越境する「もののあはれ」(1)

越境する「もののあはれ」(1)

逢坂山の奇跡
 若い光源氏は須磨に流れた。
 亡き父・桐壺帝の中宮との密通が、彼に悪意ある父の正妻・弘徽殿(今上・朱雀帝の母)に露見して、東宮(後の冷泉帝)に害が及ぶことを避けるためだった(第12帖「須磨」、第13帖「明石」)。
 2年後、やっと都へ帰ることが許された源氏であるが(第14帖「澪標」)、彼はもはや流謫前の若者ではなかった。すぐさま大納言に昇進し、参議の中枢となった。それと同時に朱雀帝

もっとみる