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チェロ弾きのためのエッセイ〜Origin〜

書いてて思ったんですけど、30日続けるって目標なのに今何日目か記していなかったですね。

というわけで今回でday5。
今日は1番です。原点回帰。

ちなみにnoteを書いていないだけで、練習次第は欠かさずしておりますのでご安心を(?)。


Popperとかいう人が書いた難しい基礎練習があるらしいぞ、と聞いて、思い立ったが吉日、早速コピーして取り掛かった時のことを思い出します。

その時は1番で早速難渋していた気がします。

こういう自分のレベルより高いものを求めてくる譜面を見ると、むしろやる気が出るタイプです。が、この時弾いてて思ったのは、「1番でこれだけ難しいのか…」ということ。

さーっと最後までめくってみたものの、どうやら40番まであるようです。これは道のりが長いですね。


そういえば、練習する番号を決めるとき、私は6つのサイコロを使って決めています。振るサイコロの数は、今日は1個、次の日は2個…というように増やしていきます。

出た目の数の合計で決めているのですが、6つのサイコロだと最大でも36までしか出ません。いつかどうにかしないと行けませんが、掛け算にしても37-40って出しにくいんですよね…37素数だし。

って話をしてたら37番が気になったのでちょっと覗いてみます。これまたとても黒い譜面ですが、ちょっといつもと違いまして、うにょうにょしています。

どういうことかお見せいたします。



これです。私ずっとこのうにょうにょのことをトリルと言っていたのですが、正確には”mordent(モルデント)”と言うそうです。

解説によっては、普通のうにょうにょをプラルトリラー、うにょうにょの半分に縦線が入っているものをモルデントと言っていますが、この楽譜ではその意味でモルデントは存在しないですね…

なんでだろう、ともう少し調べてみると、19世紀以降ではどちらもmordentに含むそうな。

2度上を演奏するものをupper mordent、逆に2度下を演奏するものをinvert(lower) mordentと呼ぶそうです。

プラルトリラーはバロック時代の時に使われていたもので、意味的にはupper mordentと同じものだそうです。

「言語とは多数決であり、ある言葉を正しく使う者よりも、間違って使う者の方が多ければ、その言葉自体が順応し、意味が変わってくるものである」

大学で英語を教えている先生がおっしゃったものです。「最近の若いものは言葉使いがなってない」なんてよく聞きますが、悲しいかな、一つ一つの言葉の運命は使うものに依るものであり、使われなくなった言葉や本来の意味は淘汰され、いわゆる「死語」となってしまいます。

よく例に挙げられるのは、「全然」です。

「全然大丈夫」という言葉に違和感を感じている方、いますでしょうか?

違和感を感じている方はおそらく、「全然」の後に否定的な文章が続かないことに対して感じているのだと思います。

ですが、実はこれ問題がないようです。

「全然」とは元々「残るところなく全て」という意味があり、後に否定的な文も肯定的な文も入りうるそうです。

ではなぜ違和感を感じているのか?

ある文献では、「全然」を「とても」という意味で使っている人が増えていることが原因ではないか、としています。「全然美味しい」のような使い方が例に挙げられます。

そのため、違和感を感じるべきなのは「全然大丈夫」ではなく「全然美味しい」の方ですが、その違和感の矛先が少しずれてしまったため、「全て」という意味で使われている「全然大丈夫」にも違和感を感じてしまっている、という訳です。

「全然」を「とても」の意味で使う人が増えたことにより、「全然」を肯定的に使うことに違和感を感じるようになってしまい、危うく「全て」という意味が失われるところでした。

モルデントに関しても、バロックではプリルトリラーと呼ばれていたものがモルデントに含まれるようになっています。いつかプリルトリラーが使われなくなる時もくるのかも知れません。

個人的には、演奏する曲の時代を自分の中にインストールし、その時々で言葉を変えていけるのが良いのかな、と思っていますが…


今日は違う話をしすぎてしまいました。1番の話に戻りましょう。

譜面の最初にどうやら英語が書かれているみたいですね。

“With very loose wrist, at the nut, lightly staccato”

「手首をよく緩め、nutの部分で軽いスタッカートを」だそうです。

Nutとはなんぞや…?と思ったので調べてみると、どうやら、”at the nut”で「弓元」という意味があるようです。今日は言葉に翻弄されていますね。

最初に練習することを想定されたであろう1番ですが、今まで練習してきた譜面の総集編のような感じがしました。むしろ基本中の基本、というべきでしょうか。

どんな本にも序章や前書きがありますが、今回の譜面はなんだかそれを彷彿とさせます。

言葉にも楽譜にも起源があって、そこからどのように枝葉が生えているか。また、幹の部分はどれだけ枝葉に影響しているのか。そんなことを考える1日でした。


本日の結果

初心忘るるべからず。

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