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文章ラジオ

好きな話をしながら、ときどき好きな音楽を流す。そんなラジオをやってみたいけど喋るのは苦手なので、文章でやってみる。最近、知った曲とか、それにまつわる話とか、つれづれに。

ラジオから流れてきた洋楽で、耳に残ったから調べてみたのがこの一曲。「私と付き合いたいなら、私の友達と仲良くしてね。友情は不滅よ」と歌う、スパイス・ガールズの『ワナビー(Wannabe)』(リンク先はYoutube)。

サビの歌詞で検索をかけたところ、パリを舞台にハイヒールで踊る男性の動画が出てきていた。

父親なら「気持ち悪い」と吐き捨てるだろうが、私は「わかる」と思った。ミニスカートにハイヒールでセクシーに踊るのって、ちょっと憧れる。曲線美を強調する、女性のダンスはカッコいい。男性でもやってみたい人はいるんだな、と共感した。自分はそこまでのガッツがないからぼんやりした憧れで終わっているけど、この人たちは実現したのだからすごい。

この曲が発売されたのは1996年、失われた10年の真っ只中だ。何が失われたのかいまいち不明なこのフレーズだけど、つまり「日本が本来なら遂げられたはずの成長を失った10年」らしい。前年にはオウム真理教による地下鉄サリン事件が起こり、日本社会がお世辞にも明るくはなかった時代。そして明るくはなかったけれど、それでも人々は生きていた。

この頃に生まれた平成1桁世代は、高度経済成長もバブルも知らないまま大人になる。そういえば自分が中学生の頃、雑誌「小悪魔アゲハ」がこんなポエムを書いていた。「日本が不景気とか言うけど、生まれたときからこんな感じだからよくわかんない」。この雑誌は同世代のギャルから絶大な共感を集めているけれど、その理由がちょっとだけわかった。

中学時代と言えば、マイケル・ジャクソンの死が大きく報道された。当時のマイケルは、もはやポップ界の帝王というより、スキャンダルの王様だった。いいイメージのない歌手の歌をわざわざ聴く理由はなかった。同級生はバンプオブチキンと嵐にハマっていた。そんなだったから、まともにその曲を聴いたのは訃報が出てからだ。かつての大ヒット曲「スリラー」も、ムーンウォークを世間に知らしめた「ビリージーン」も。

高校に入り、初めて都会に出る。どこも行く当てがなくてフラッと入ったヴィレッジヴァンガードで買ったのが、チバユウスケの詞集だった。あんまりよかったので、CDも買って聴いた。彼がボーカルを務めるミッシェルガンエレファントの『ジェニー』は、なにせ歌い出しのインパクトがすごい。ああ表現って自由なんだ……と思った。

激しい曲が続いたので、今度は北欧スウェーデンから、その繊細な空気感が伝わってくる曲を置いておく。シュガープラムフェアリーの『キャロライン』。穏やかなメロディーと愛らしい歌詞が好き。

このバンドの曲を探していると、コメント欄に「こんなのロックじゃねえよ」と英語で書かれたのを見つけることがある。ロックか否かはどうでもよくて、「ロック=正しい」の世界観もどうでもよくて、好きか嫌いで言ったら好き。人の判断基準なんて、つまるところそれだけじゃないかと思う。

北欧ポップスは、ほとんどすべて英語で歌われている。このあたりには話者が少ない国特有の事情があって、要は自国語で歌っても売れないのだそうだ。それは音楽業界だけの話ではなく、就職でも「英語ができる人から海外に行ってしまう」なんて声も聞く。北欧に憧れを持つ日本人はよく見かけるけど、当然ながらどこも天国じゃない。それぞれの事情がどこの国にもある。

ちなみにスウェーデン語で「こんにちは」は「God dag(グッダーク)」と言うらしい。「ありがとう」は「Tack(タック)」。いつか行ったら使ってみよう。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。