ランニングシューズが普段使いによかったという話

この間、少し高い買い物をした。靴屋に勧められるまま購入したランニングシューズ。これが思いの外はきやすかった。走る速度も速くなるけれど、それ以上に脚への負担が減るので、単純に疲れない。これはいい、ということで、ついに普段の外出のときにも履くようになった。

すると不思議なことが起こる。前と同じ距離を歩いているのに、それが短く感じるのだ。仮に家からスーパーまでの距離が500mだとして、同じ道を歩いているのに、それが300mまで縮まったように感じる。靴が違うと、体感距離まで違うのか……。おかげで徒歩での外出が、精神的にも肉体的にも少し楽になった。

なんなら人類全体がもっといい靴を履くべきじゃないか……とまで言うのは言い過ぎだけれど、こういうスポーツシューズは、お年寄りにこそいいかもしれない。歩行をサポートしてくれるし、多少アクロバットな動きをしても足が曲がったりしない。ヒモで足を絞るのが少し面倒ではあるけれど、欠点はそれくらいだ。

もっとも、年配の人の中には「スポーツシューズはフォーマルな場所で使えない。あれは若者の物」という思い込みを持っている人もいれば、少し前までの自分みたいに「アスリートでもないのに、ランニングシューズを持っていても使い道がない」と考えている人もいる。もちろん、正式な場所では履けないし、スーツなんかの服装には合わせられない。だから、いくら「履きやすいですよ、足をサポートしてくれますよ」と勧めたところで、それを信じて買おうという人は少ないだろう。

それを思うと、自分がまだ若くて、考えが凝り固まっていないのはよかったと思う。どうしても人間、年齢が上がるにつれて新しいものを摂り入れるのが億劫になっていくから。年配になっても考え方の柔軟な人はいるけれど、80歳になった自分が、いきなり「ランニングをしよう!足にいいらしいからスポーツシューズを買おう」とはならないような気がする。

それを思えば、スポーツシューズの素晴らしさに出会えたのは、時間の恩恵であるとも言えるわけで……。つくづく人の世界は、目に見えないいろんなものに左右されていると実感。

本当は今日、幽霊の話を書くつもりだったのだけれど、靴の履き心地に感動したのでこっちを書いてしまった。ちなみにシューズのほうは、調べたところNew Balance(ニューバランス)のFresh Form(フレッシュフォーム)というシリーズだった。公式サイトを見ると、アスリートしか縁のない靴に見えるけれど、そこでひるんでいたら買えなかった。いいじゃないですか、誰が履いても。そう考えて、履きつぶす予定でいる。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。