巣ごもり日記『椿姫』

『椿姫』が好きだ。青年アルマンと、高級娼婦マルグリットの悲劇的な恋物語。バレエで見てから原作を読んだのだけれど、巣ごもり生活に入った今、再読するにはちょうどいい。せっかく時間もあることだし、関連するものをゆるゆると辿っている。

参照しているものをリストアップすると、こんな感じ。

・デュマ・フィス『椿姫』新庄嘉章訳、新潮文庫、平成26年
・Alexadre Dumas fils, “La Dame aux Camélias”, Gallimard, 2016
・池辺晋一郎ほか『小学館DVD BOOK 魅惑のオペラ 第2巻 椿姫』小学館、2007

昨日はオペラの『椿姫』を観た。個人的には小説のほうが好きだ。詳細に書き込んであるし、自分のペースで読める。原作だから場面が省略されていることもなく、筋がわからなくなったらページを戻ればいい。オペラにそういう自由はない。

だけど、聞いているうちに人の歌声のよさがわかってくる。最初はただ「すごい声量だ」とか「音楽がすごい」だとかの単純な感想だったのが「このテノールの人は憎しみの表現が優れている、始めよりも中盤以降の演技がいい」とか「このソプラノ歌手の歌、安定感がすごくて安心して聴ける」とか、より繊細なものになっていく。

自分が観たバージョンの中で、恋する青年アルマンを演じているのはニール・シコフ。テノールだ。自分はオペラ歌手は全然わからないけれど、彼の紹介文に「情熱的な歌い方で知られる」とあって、それが嘘じゃないことだけはわかる。高級娼婦マルグリットを演じたのはエディタ・グルベローヴァという人で、例によって全然知らないが、上に書いた通り抜群の安定感だ。素人が聴いてすごいと思うくらいなんだから、プロの中でもランクが高い歌手なのだろう。

マルグリットのモデルになったのは実在の人物で、マリーデュプレシというらしい。これは文献を当たれていない。インターネットで拾った情報によると、貧しい家庭の出身だったのを貴族の男性に引き上げられて教養を身につけ、やがて上流階級ご用達の娼婦となったらしい。図書館が再開したら、こっちの彼女のほうを調べてみよう。

この作品は『マノン・レスコー』という椿姫よりも早く出版された物語に触発されていて、その影響は随所に見られる。こちらは奔放な女性がそれゆえに破滅していくまでと、その彼女に身を捧げる貧しい学生を書いたもので、似ている部分は多い。多いけれど、自分は圧倒的に『椿姫』のほうが好きだ。

今日は『マノン』のオペラを観ていて、同じオペラでも『椿姫』のほうがいいと思った。自分は奔放な女性が嫌いなのだろうか、それともストーリーに対する好みの違いか……。巣ごもり中、そんなことを考えている。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。