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仕事が続かない大人のADHD。特性に合った仕事を選ぶ3つのステップ。

ADHDはやっかいだ。ADHDの独特な集中力とモチベーションは、特性の合う仕事にしか発揮できないからだ。よく「発達に凸凹がある」と言われることがあるが、まさにこの表現がぴったりで、特性に合う仕事に就けた場合は爆発的に成果を上げるが、特性に合わない仕事の場合は、まるで仕事が続かないということがあり得る。

こんな話を、いわゆる「普通」の人にすると「甘えんな」と言われることを請け合いだ。「誰もが、努力して仕事をしているんだ。なんでもADHDのせいにするな」と言われるだろう。しかし、本物のADHDは、本当に仕事が続かないので、一般人の常識では測れないことを知ってほしい。

ネットの発達障害特集で、とても面白い記事を見つけたので紹介してみたい。ADHD当事者の視点からだけではなく、サポーターからの視点も含まれており「大人のADHDの仕事選び」に関して学ぶべき点があった。

ADHDは仕事が続かない

主人公は、西出光さんだ。彼は25歳にして、15回も転職を繰り返している。最初の会社は、新卒で入った大企業だったが、わずか3か月で退職。事務、コールセンター、カフェ、ゲームセンターなどあらゆる仕事にチャレンジするが、10日も続かない有様なのだ。

彼は努力しない人ではない。しかし、どれだけ頑張っても、10日前後で、体が動かなくなり仕事に行けなくなる。おそらくは、特性に合わない仕事を無理して続けようとした際に、発達障害の二次障害のうつ病や不安障害を患うようになったのだ。

仕事の選び方を見ると「もう何でもいいから仕事しなきゃ」という焦りが読み取れる。必死で動けば動くほど、負け癖がついていく。その結果「自分はダメな人間なのだ」という感情が強くなる。この時点での西出さんは、完全に脱線してしまった大人のADHDの様相を呈している。

しかし、彼にとって、ラッキーだったのは、妻が彼の特性をよく理解し、発達障害の診断を受けるように促してくれたことだ。妻もASD気味?で発達障害に対しての理解が深かったのが良かった。西出さんの極端な凸凹(できることはできるのに、できないことはまったくできない)に気づいたのだ。

そして、夫婦として、ADHDでも続けられる仕事探しが始まる。妻の分析はお見事で、これから、自分に向いている仕事を探そうとしているADHDに役に立ちそうだ。

ADHDの特性に合った仕事を選ぶ3つのステップ

西出さん夫婦のネット記事が面白いのは、同じ出来事に関して、妻の視点から語られていることだ。そして、妻は西出さんの特性に合った仕事を見事に分析して見つけ出していくことになる。

1:過去に続いた仕事

ADHDは成功体験に乏しい。失敗なら数えきれないほどしている。何をやってもダメだと考えがち。これは幼いころから続いている負のストックだ。しかし、数少なくても、うまくいった経験というのもあるのではないか。何個も仕事をしてきたなかで、少しでもうまくできた仕事はなかったか?と分析することだ。

西出さんの場合は、学生時代に働いたマッサージ店は2年も勤めることができた。マッサージの技術は未熟でも、一対一の接客が得意だったのだ。過去にうまくいった仕事から、適性を探り出していくのは鉄板の方法だろう。

2:要素を洗い出して抽象化する

次に、その仕事の何がうまくできたのか?突き詰めると、何が得意なのかを抽象化していく。「マッサージ店の仕事が続いたので、じゃあ、マッサージ店の仕事を探そう!」という短絡的な思考ではなく、マッサージ店での仕事は、なぜ?西出さんの特性に合っていたのか?その要素を考えるのだ。

そこで、妻は、以下の4つの要素を発見する。

1:一対一で接客する仕事
2:お客さんに好かれる仕事(感謝されるような仕事)
3:必要とされる仕事
4:会話が中心になるような仕事

細かい表現は違うけれども、ざっくりこんな要素だ。西出さんは「第三者にみられている中で行う仕事」が致命的に苦手なのだ。しかし、一対一の会話力は得意。そして、ADHD特有の愛されキャラでもある。要素が分かれば、今度は、これが当てはまる具体的な仕事に当てはめていくことだ。

3:現実的に考える

ADHDは仕事を選ぶときに現実感が乏しい。発達障害の就職ガイドなどを読むと「ADHDは発想力や独創性やあるのでアーティストや作家が向いている」と書いていたりする。ADHDは、こういうのを見るとすぐその気になるから要注意だ。

長く働き続けるためには、現実的な観点が必要。妻は、西出さんの得意な4つのジャンルから「心理カウンセラー」「介護ヘルパー」という二つを選び出す。確かにカウンセラーは向いているかもしれないが、資格を取るのに時間がかかるし、仕事にするには相当の努力が必要。

それに引き換え、介護ヘルパーは高齢化社会の中で求められる仕事。ステータスは高くないかもしれないが、少なくとも仕事がないってことはあり得ない。これから10年続く仕事だと確信する。そこで、東京から名古屋に、親戚のおばさんのもとに西出さんを連れていき、ヘルパーとして就職させることに成功するのだ。

カギは正確な自己分析

大人のADHDが仕事を続けられないのは、自分の特性と仕事についての分析ができていないからだ。西出さんが過去に辞めてしまった仕事の数々も、ジャンルも業務もバラバラだ。あてずっぽうに仕事に就いていることが分かる。

これもまた悲しいことだが、ADHDは基本的に自己分析能力が低い。片付けや整理整頓が苦手なのは、ADHDの特徴だ。実は頭の中の考えも同じ。ADHDは、脳内の思考をしっかり整理整頓するのも、一人ではなかなか難しい。西出さん夫婦の場合は、妻に理解があり、徹底的に夫の分析をしてくれたおかげで就職できたのだ(そして7か月続いている)。

これほどの愛情深く、賢いサポーターがついていれば、ADHDでも続く仕事を見つけることは可能だろう。しかし、なかなか、このような助けが得られないこともある。私の経験から言うと、ADHDでも、とにかく紙に書き出して(一度頭の中から考えを取り出して)まとめ直すことで、考えは少しずつまとまるようになる。

私はどうしてもまとまらない思考は、マインドマップで書き出し、整理しなおしているが、こういう方法を取るだけでも、だんだん自分の考えが分かってくる。先の3つのポイントに沿って考えることだ。

特性に合う仕事を探す努力をやめない

何度か仕事に失敗したADHDの自尊心というのは驚くほど低い。自分は「何もできない」人間だと感じていることが多い。
しかし、実際にはそうではなくって、ただ、その仕事が合っていなかっただけなのだ。ADHDは、他の人から見ると怠けものに見えるかもしれない。しかし、その実、内情では死ぬほど努力しているのだ。そしてオーバーフローを起こして、ぶっ倒れる(もしくは仕事をやめてしまう)。

西出さんの妻の名言がある「呪いに勝ちたいなら移動しろ」というものだ。向いていない仕事に適応するための努力をするくらいなら、そういうところはさっさと見切って、自分の特性に合う仕事を探すための努力に振り替えると良いのではないか。その努力とは、自己分析して、自分の特性をよく知り、その特性に合う仕事にチャレンジすることだ。

他の人から見ると、かっこよいとは思えないかもしれないけど、やがて「天職」を見つけられるだろう。

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綿樽剛の著書一覧

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq