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WEBライターの独立・起業ノウハウ【書評】明日クビになっても大丈夫! ヨッピー

ほかの誰とも違う強烈なオリジナリティ。作品を見るだけで、すぐに作者の顔が浮かぶ(だいたい、自分の写真がある記事だけど)。カテゴリでいうとWEBライターという括りだが、企画屋さん、コンテンツメーカーと呼ぶのがふさわしいだろうか。オモコロのヨッピーさんの話だ。

ヨッピーさんに特に注目しているわけではない。しかし、これまで、何度も彼の記事を見たことがある。意識しなくても、目に入ってしまう。今の時代のネットメディアを引っ張る特別なWEBライターの一人だ。そんなヨッピーさんの、WEBライターとしての仕事術・起業法をまとめた一冊。ふだんのふざけ具合とは異なり、驚くほどに真面目(まとも)な内容だった。

好きなものを仕事にすべし

どの分野で起業するか、独立するかに関して、ヨッピーさんは「好きなものを仕事にしたほうがよい」という。

ヨッピーさんは、もともとは組織人だったのだ。普通にサラリーマンとして働きながら、オモコロのライターをはじめ、徐々に人気に火がついた。本業は、ヨッピーさんの本気に火をつけるものではなかったらしい。会社では、個性を出す(ふざける)ことが、望まれていなかったからだ。しかし、WEBライターでは、個性丸出しでいけるので、だんだんライター業が楽しくて仕方なくなる。ずっと無収入でオモコロライターをしていたそうだ。

「結局のところ、「嫌々やってるプロ」と「好きでしょうがない素人」が勝負したら素人が勝つことの方が断然多いのではなかろうか。」
「「やっぱり好きなものを仕事にした方が強いんだな」 と思う。だって、好きなものだったら四六時中その事を考えてても苦にならないからね。サラリーマンとして、9時から 18 時までの時間だけその事を考えてるやつと、寝ている時以外ずーっとその事を考えてるやつが戦ったら絶対後者が勝つに決まっている。」

どの分野で独立しようかと考えている人にとって参考になるだろう。最後は、好きな人が勝つのだ。ヨッピーさんは、会社をやめてWEBライターになった時の月収は4万円だった。それでも、好きなことの強みで、どんどんと仕事を獲得し続けて、やがては、サラリーマンの時の収入をはるかに越えるのだ。

結局、仕事は「やり続ける」ことができるかどうかなのだ。お金をもらえなくても、やるかどうか?というのは、ひとつの基準になるかもしれない。

WEBライターはおいしい

ヨッピーさんの場合、一般的な「WEBライター」という言葉から想起するものと違うのだけれど、ブロガーやアフィリエイターの場合も、ヨッピーさんの主張にはうなずけるはずだ。

コンテンツを作る人にとっては、ほぼすべてが「経費」になる。人生をネタにしている人にとっては、食事も旅行も遊びも、すべてが経費であり、収入源になる。これは、ひとつの理想の仕事ではないだろうか。

「「ライター」という職業は便利なものでなんでもかんでも経費に計上出来る。パソコンを買うのも、携帯代も、どこぞに出かけても全部経費である。家で仕事をするので家賃も半額は経費に計上してたりするし、沖縄に行っても別府で温泉に入っても取材で行くのだから経費になる。額面収入がサラリーマン時代以上で、その上「経費」みたいなものが加わってくると体感的にはもっと収入が増えたような感覚である。」

私のような、底辺ライターでさえ、この感覚はよく分かる。ライター業には、絶対的な経費が少ない。過去に物販をしていた私にとっては、ライター業の利益恐るべしである。そのため、積極的に経費を算入していかないと、かえって大変なことになる。

私の場合は、本をたくさん買っている。「新聞図書費」として。仕事と遊びの境目がなくなる業態。WEBライターは確かに面白い。

どの分野で「椅子」をとるか

ヨッピーさんは、見た目とは裏腹に、とにかく好き勝手にやっているわけではなく、「打算的」に自分のポジションを作ってきた。単なるWEBライターではなく、どの分野でのWEBライターとしてのポジショニングをとるかを計算してきたのだ。

「ビジネスの世界の競争は椅子取りゲームに似ている。 さっきも言った通り、僕はまずライターとしてのキャリアを考える上で「記事広告が得意なライター」という「椅子」を最初に狙いに行った。何故ならその椅子はどう考えても儲かるのに、その椅子に座ってるライターが他にまだいなかったからだ。ガラ空きだった、という感覚に近い。儲かる椅子なのに、まだ誰も座っていないという、こういう「椅子」は完全においしい」

最初は「記事広告」というジャンル、やがて「観光」というジャンル、さらに「自治体」というジャンルに踏み込んでいく。最初は、下ネタ一辺倒だったのだが、だんだんと、自分の強みを活かせるところに踏み込んでいく。さらに需要があるところ、おいしいところを見極めていく目が、非常に冷静で打算的なのだ。

ある分野で第一人者と言われるようになれば「椅子」をとったようなものだ。企業としてその分野を席捲するのは簡単ではないかもしれないが、ヨッピーさんのような身軽なWEBライターが活躍できるポジションはたくさんある。ヨッピーさん曰く「儲かるのにガラ空きな椅子」を探すことだ。

最初から、そんなおいしい椅子は見つからないことだろう。とにかく、実践、実践を繰り返すうちに、次の光景が見えてくるということではないか。この本を書いた時点で、ヨッピーさんは、独立6年目だというが順調にキャリアアップしているようだ。

かけがえのない個人

名もなきWEBライターは、やがてAIに仕事を取られてしまうはずだ。しかし、ヨッピーさんのWEBライターとしてのスタイルはAIにはまねできない。その面白さは規格外だし、発想も斜め上だからだ。そして、人は、そういう意外性のあるコンテンツを楽しむのだ。

この本でさえ、ほぼすべてがヨッピーさんの独特な語り口で、パクリようがない。こういう人が生き残っていくWEBライターなのだと分かるお手本だ。

ただ、「ヨッピーさんのようなWEBライターになりたい」とは、どうしても思えない(笑)

これが、強烈な参入障壁になっていることは間違いない。ネット界隈での仕事。とくにブロガーやWEBライターとして、独立・起業まで持っていきたい人は読んで損なしの良書だ。

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読書感想文

大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq