【感想】「不都合な真実2：放置された地球 (字幕版)」（アル・ゴア）

請け負っている仕事で、環境問題・温暖化に関するものがあり参考資料として見たビデオだ。アル・ゴア元副大統領が、環境運動の熱心な活動家であることは知っていたが、彼の主張とこれまでの働きを知ったのは初めて。前作「不都合な真実」は2006年に制作されており、今作は10年後に作られた作品。「温暖化はでっち上げだ」と言われることも多かった10年前から比較して、地球に何が生じてきたかをデータで明らかにしていく。

「アメリカの良心」とも言われるゴア氏のドキュメンタリー映画だ。環境問題や温暖化に関心のある人なら見て損はない。

不都合な真実2：放置された地球 (字幕版)

温暖化とその影響

映画の冒頭は、2006年に「不都合な真実」がリリースされた後に「ゴア氏は真実を語っていない、温暖化はでっちあげだ」と誹謗中傷された音声から始まる。温暖化の証拠はない。温暖化は陰謀説であると、手厳しい非難の声が流れ続ける。そして、画面は南極の氷が溶け続けている様子を映し出している。とても印象的なシーンだ。

そして、それと比例するかのように各地で起きる水害の様子。マイアミが何度も水没する様子が映し出されている。マイアミの知事は「温暖化は嘘だ」と言い続けているが、現場では海面上昇が大きな問題になっており対策に追われている。世界各地の水害の様子が映し出されるが、ここ数年の日本の水害も他人ごとではない。

年々、猛暑日が増えており、インドでは摂氏51度を記録して、アスファルトが溶けだした。地球が発する熱の93％は海で吸収される。海水温が上昇しているのは周知の事実だ。大変な被害をもたらした、フィリピンのタクロバン市を襲った台風では周囲の海水温が例年より5度ほど高かったという。台風がいよいよ強烈なものになり、豪雨が増えている。これは日本だけではなく、世界的な傾向だ。そして、これは干ばつ→森林火災とも関係している。残念ながら、全部悪い方に悪い方に行っている。まるで破滅のドミノ。

COP21（第21回気候変動枠組条約締約国会議）

フランスのパリで2015年に開かれた地球温暖化対策のための世界的な会議、COP21。196か国が参加して、温室効果ガスを減らすための合意がなされた。最後の最後まで、インドは温暖化対策のために化石燃料を減らすという案に合意をしなかった。かなり厳しいゴリゴリの交渉で、アル・ゴアが必死で戦っていたのを、このドキュメンタリーを見て知った。

インドの言い分も分かる。「米国を始め先進国は、これまで150年も化石燃料を好き勝手に使って経済発展をしてきたのに、今になってインドが化石燃料を使うのをやめさせようとする。それはフェアではない。我々も150年は化石燃料を使って経済発展をしたのちに温暖化対策を行う」。まるで、子供の喧嘩のようだが、これは発展途上国の偽らざる気持ちなのだろう。思っていた以上に、先進国と発展途上国の裂け目は大きい。

コロナ問題に関しても言えるのだけれど。

しかし、この厳しい交渉の場で、ゴア氏はアメリカのソーラーパネル社の太陽光発電の技術を無償で提供させる契約を取り付けて、インドを合意に導いていく。交渉とは何かということを、まさに見る思いだった。インドの大臣たちも最後は笑顔で「地球環境を守るために、合意したい」と述べる。さすがだ。こんなことしていたんだ、すごいぞゴア氏。

しかし、この話にはオチがあり、これほど歴史的な合意にたどり着いたのに、アメリカは大統領がトランプになった2017年にCOP21から抜けてしまうのだ。トランプ大統領は温暖化を認めない派なのだ。ゴア氏は、これまで何度も挫折を経験し、失望を味わってきたそうだが、この時もそうだったようだ。それでも、自らトランプを訪問し環境問題について話し合いに行く姿が映し出されていた。

真実はどこにあるのか

ゴア氏の眼力はすごい。本気の人だけが放てる眼光の鋭さがある。「地球の未来を守ることは正しいことだ。私には確信がある。」と述べるゴア氏の前に、にわか反対論者は腰が砕けてしまうだろう。また、自身の主張を裏付けるための調査（リサーチ）も怠ってはいない。それにしても、地球温暖化の証拠を裏付ける気象データは山ほどある。それでも温暖化は存在しないという意見も根強いのだと知って驚く。

私たちには詳しいことが分からないとはいえ、最近の台風災害・豪雨災害の激甚化なら知っている。それが海水温の上昇によるものであることも。また、夏の猛暑が年々厳しくなっていること、冬にめっきり雪が降らなくなっていることも。これから何十年も楽観できる余地はないのかもしれない。そんなことを考えさせられた。

これから、この映画（ドキュメンタリー）も見る予定だ。

摂氏2度 人類滅亡のカウントダウン