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私に「速読」は必要ない。ぼんやり読書のメリットと早く本を読むことの限界。

本を大量に読む生活に入ると、もっと読みたい、もっとたくさん読みたいという強い願望を抱くようになる(はずだ)。しかし、時間には限りがある。私の読書力だと既知の分野のビジネス書や新書だと1冊30分前後はかかってしまう。多少読み応えのある本を選べば2時間~3時間はかかる。

倍のスピードで読めたら、もっと読めるのに。速読への興味は、本好きなら誰もが通る道ではないか。以前、速読教室(セミナー)に通おうとしたら家族から「何のために行くの」と言われて、はたと考えた。今でも相当数の本を読んでいるのに、もっと早く読む目的は何なのだろうか。

読書の意味とは何なのか。十数年、この問いに向き合い続けて、何となく形になってきたことを。

読書は「対話」すること

本を書いている人で、アンチ速読派は少なくない。速読というより、結果として読むのが速くなるということのようだ。アンチ速読派の代表的な本として、最近読んだ「エモーショナルリーディング」などがある。参考:読書体験を「消費」から「投資」へ【書評】一冊からもっと学べる エモーショナル・リーディングのすすめ 矢島雅弘

自分自身の心を動かしながら、著者と対話することを考えると、速読には限界がある。いくら時間がもったいないとしても、対話(雑談)の代わりになるものはない。そこまで生き急ぐことはない。読書は対話である、これは納得のいく考え方だ。

多くの著作がある中島孝志氏の読書術を読んでいて、氏もアンチ速読派であることを知った。中島氏は、速読をマスターしたくて、当時流行していた栗田氏の速読講座に通うのだ。教室に入った当初は、生徒の中でも相当にスピードが速い方だったのだが、講座が進むにつれて「落ちこぼれ」になっていったという。

むしろ、読書スピードが下がったのだ。もちろん「あえて」である。そこには中島氏の読書に対する考え方がある。

「速読の本質は、その本にいったいなにが書かれているかをそっくり飲み込むことにあります。ます。美味しいかまずいかは関係ありません。まして、余計なことを考えてはいけないのです。また、そんな余裕はありません。」

「速読より大切なことは、本を通じてなにを考えたか、どう思ったか、どんな連想ができたか……にあるのではないか?」

中島氏は速読講座で改めて、自分にとっての読書の意味を再発見することになる。生徒たちが課題図書をすごい勢いで読み飛ばしていくのを横に、自分は、じっくり読みふけってしまうのだ。中島氏は、読書をしながら著者とゆっくり対話(会話)することが楽しいのだと気づく。

私も同じだと気づいた。そうであれば、速読でスピードをあげて情報を処理することは、大切な読書体験を損なうことになるのではないだろうか。

「ぼんやり読書」のメリット

読書の楽しみとは対話だ。著者との対話、そして自分との対話だ。本を読みながら、自分自身の考えを、くゆらせることが楽しいのだ。単に新しい情報を得たいだけではない。中島氏が言うように、本を媒介として、自分の中にすでにある知識を引き出したい、ひらめきたいのだ。

「読書すると脳が条件反射で刺激されることを知っている人は、自分の脳を起動させるために本を片時も手放しません。たぶん本書を手に取るようなあなたは100% そんなタイプだとわたしは確信しています。」

ぼんやりしている時ほど、脳内では、アイデアがひらめている状態が作り出されている(これを、デフォルト・モード・ネットワークという)参考:これ以上出ない!行き詰った時に使えるアイデアがひらめく3つの方法。

私がいろいろなことをひらめくのは、第一にたくさんの本を眺めて歩いている時(本屋、図書館)、そして第二に本をじっくり読んでいる時(読むのをやめて考えている時間もある)、第三にお風呂に入ってぼ~っとしている時だ。私の場合、本を読んでいる時は確実に「ぼんやり」していて、次から次へとアイデアがひらめく時間だ。

当たり前の話だが、スピードが速すぎるとぼんやりできない。極論を言えば、ぼんやりできなければ、本を読む意味はないのだ。

読まなくてよい本を速読で見分ける

そうなると、とにかくスピードを上げて本を読もう、速読しようというのは無意味なのだろうか。もちろん、ある意味においては有益だ。それは、読まなくてよい本を見分けるためだ。読書をする時に必要な絶対時間というものがある。これは、どうしても減らない。だとすれば、貴重な本に時間を使わなければならない。

そのためには、読まなくてよい本は読み終わってからではなく、ざっと見た瞬間に見分ける必要がある。これが、まさに佐藤優氏の読書法だ。佐藤氏は月に500冊読むこともあるという(しっかり熟読する本は4~5冊なので、それ以外を見分けるために読んでいるという速読であることが分かる。)

職業作家で、知の巨人である佐藤氏とは比べ物にならないけれど、私もそれなりに多忙な日々だ。どれだけスピードを上げたとしても、無駄な読書に時間を使うことはできない。読むべき本にはじっくり時間をかけて、読まなくてよい本は速読で見分けて。読書にもっとメリハリをつけていく必要を感じちゃったなぁ、もう。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq