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【書評】読書の技法 佐藤 優

佐藤氏は顔が超怖い。表紙を見るたびに思う。でも、実は、猫をこよなく愛する心優しき男なのだ。文章にも内面に優しさや人格の良さを感じる。教養のある人って感じなのかな。

月平均300冊、多い月は500冊以上を読みこなす読書家。読書しているだけではなくて、月90本あまりの締め切りをこなして書き続ける職業作家。半端ない。多くは、彼が学生時代から知識を蓄え勉強をし続けてきた、その勤勉さによるものだと思うんだけれど、本の読み方という意味では学ぶことが多かった。

3つの読み方

3つの読み方とは「超速読」「普通の速読」「熟読」だ。佐藤氏だって「熟読」できる本は月に4~5冊しかないそうだ。時間には限りがある。だからこそ、読むべき本を見分けるために、大量の本にあたり分別をしていく読み方を開発したのだそう。

超速読は、ほとんど拾い読みだ。前書きや見出し、あとがきなどをつまみ柄読み、読むに値する本かどうかを見極める。佐藤氏には大量の献本が届くので、そうしていくことも大事だろう。一般人は、こんな読み方じゃ、本代がもったいないからちょっと無理かな。できるとすればunlimitedだ。

普通の速読は、400ページほどの本を30分かけて読み、30分かけて読書ノートをとる読み方。興味深かったのが、佐藤氏は普通の速読を用いる時も、読書ノートをとる。一回でその本の骨子を読み取るような読み方をしない限り、その知識があとで役立つことはない。真剣勝負で読んでいるのだ。ただ、時間には限りがあるから読む時間は30分と決める。プロの読み方だ。

これに対して、熟読は、同じ本を最低3回は読む。線を引きながら、ノートに抜き書きをしながら、最後に通読を行う。いちいち読書ノートをとるのは面倒だという批判にはこう答えている。

「 ゆるい形で本を読む習慣が身についてしまうと、いくら本を読んで知識を取り入れても、頭の中に定着していかない。本を読んで、「あっ、自分も知っている」という感覚は味わえても、「では、どう知っているのか」と突っ込んだ質問を改めてされると答えられないのだ。それは、取り込んだ知識が自分の中で定着していない証拠」

実にもっともだと思えた。すべての本をこの読み方はできないから、とにかく、しっかり読む本を絞るために、大量の本にあたり分別するということなのだ。

佐藤氏の読書ノートが写真付きで出ているけれど、手書きで引用個所をたくさん書いて、それにコメントをつけてある。実に地道な作業だ。レーニンの読書ノートの話も出てくるが、知の巨人たちは、本を読んだら読みっぱなしにしていないことが分かる。これは、さっそくやってみたい点であった。

そういえば、最近も以前に読んだ本を再読していることに気づいた(本を手に取った時には気づかなかったのだ)。そんな読み方していたら、いくら読んでも無意味だ。

応用編:読書ノート(電子版)

私の場合は、読書は、ほぼkindleに偏ってきている。タブレットで読むのが一番早い。以前は紙の本でなければ頭に入らなかったが、だんだんインプットの傾向が変わってきた。今は紙の本より電子版が便利だ。

kindleの場合は、マーキングした箇所を一括して抜き出すサイトもある。自分が大事だと思う箇所にマーキングしておくと、下記のサイトから引用個所を抜き出せる。(自分のアカウントでログインすること)

大事だと思った個所を正確に抜き出すこと。そして、自分のコメントを入れること。あとで見直せるようにすること。そのためには、特に手書きではなくてもよい。

私の場合だと、noteに走り書きしてタグをつけておけば十分かなと思えた。noteというアウトプットの場があるのは良いことだ。

時間を有効に使う

先日読んだ池上氏との共著でも気づいたが、佐藤氏は自信満々ではなく、自分の弱さや個性をよく知っている人だ。

自分がのめり込むタイプだから、ギャンブルは一切やらないと決めている。ネットサーフィンは注意がそらされるのが怖いので、相当に注意深く行っている。お酒を飲むと知的な作業ができなくなるから飲まない。

時間は命だ。時間がなければ、インプットも、アウトプットもできない。時間泥棒を怖がっており、自分の時間を守るための対策をしっかり行っている。

佐藤氏は二度寝をしないという。

ぱっと目が覚めたら、その瞬間に起きるようにしているのだという。時間が貴重であることが分かっているからだろう。私はロングスリーパーだけれど、睡眠時間のほとんどが「浅い眠り」なので、朝方に夢見で嫌な気分になるくらいだったら、スパッと起きて知的生産のために時間を使ったほうが良いと、いたく感じた。

まとめ:読書の技術に早道なし

シンプルなことだ。時間を上手に使い、真剣に読書と向き合い、自分自身に知的な刺激を与え続けている。やればいいんだけどねで終わっているのであれば意味がない。学べる点を、今日からやってみることにしよう。

最近、佐藤氏の本はunlimitedでどんどん出ているのだけれど、この本は出てない。実際にはインプット<アウトプットだから、こっちも気になってきた。さっそく読んでみようか。


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読書感想文

大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq