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消費者は情報を与えられていない「健康食品」のことがよくわかる本」畝山 智香子

私はサプリが大嫌いだった。でも、メグビー(三石巌)のヒトフードから始まり、藤川メソッドでnowfoodsのサプリを飲み始めてから、すっかりサプリだらけの生活を送っている。アメリカでサプリを飲む人が多いのは、国民皆保険ではなく、医療費が高いので、できる限り自己防衛するためだ。日本は医療費は安いとはいえ、自分で自分の健康を管理したほうがよいのは同じだ。だからサプリを摂り始めた。

しかし「自分が本当に何を飲んでいるのか分かっている?」と聞かれると、実は罠にはまっているだけなのかもしれないとも思う。サプリ熱に頭から冷水をかぶせる一冊を紹介したい。いろいろな意見を聞いておくのは、自分のためになるからね。

私を含め、テレビや雑誌のブームにすぐに熱くなってしまう人にとって厳しい指摘は多いけれど、その厳しさの中には著者の愛を感じる。参考になったコメントをいくらか引用しておく。自分への戒めのために。

健康食品はなぜ高いのか?

健康食品やサプリ類は錠剤やタブレットのように、あえて医薬品を模倣するデザインを模している。しかし、医薬品が高価なのと、健康食品が高価なのはまるで理屈が違う。医薬品の値段の背景には「安全性や有効性に関する膨大な情報やそれを提供するための専門職能、健康被害が出た場合の補償も含めたシステム全体の維持にかかる費用」が反映されている。また、専門家(医師)による処方という技術料も加味される。

このような価格的背景を持つ医薬品と健康食品(サプリ)では値段の意味が違う。健康食品やサプリが高い理由は「マーケティング」(宣伝)に費用がかかるからだ。著者は、消費者に「幻想」を売る健康食品「ビジネス」としての実態を暴く。

「中身は食品と同程度であるにもかかわらず通常食品より高価です。その値段の違いは、医薬品と異なり、マーケティング、つまり宣伝によるものです。もっと率直な言い方をすると、欲望を反映したものです。販売する側の、お金を儲けたいというわかりやすい動機だけでなく、買う側の、運動や食事制限をすることなく楽して痩せたい、やってしまった悪いことをなかったことにしてしまいたい、といったある意味ではとても人間らしい、しかし時には致命的な願望が「健康食品」という幻想を創り出しているのです。」

「健康食品」のことがよくわかる本 単行本 – 2016/1/12 日本評論社 畝山 智香子 (著)

基本的にノウハウコレクター気質の私にとって、これはよく理解できる理屈だ(参考:ビジネス書中毒が深刻かい?ADHDはノウハウコレクターになりやすい)。実際、値段も安ければ、ありがたみが薄れる。販売する側の人は「健康食品やサプリを購入する消費者もだまされる?(夢見ること)を望んでいるため、Win-Winのビジネスになっているのだ」と主張するだろう。

しかし、著者が繰り返し主張しているように「消費者に正しい知識が与えられない状態での選択はフェアではない」。

消費者には「知識」がない

マスメディアでは大々的に宣伝されており、消費者はすっかり乗せられてしまうものの、研究者や専門家の間では冷たい目で見られている健康食品は多い。例えば、ワインの健康効果は大いに喧伝されているが、その一方で、ワインのレべストラロール研究の第一人者のディパク・ダス(Dipak K. Das)博士の論文が不正が発覚し、多数取り下げられていることはほとんど知られていない。また、レべストラロール研究のための研究所などがすでに閉鎖(解散)していることなど、メディアはほとんど取り上げない。

「医薬品の開発ではこのように「失敗」する事例は珍しくありません。問題は「期待できるかも」という時点で大々的にメディアが報道してもその後の経緯がきちんと最後まで報道されることは滅多にない、ということです。」

「健康食品」のことがよくわかる本 単行本 – 2016/1/12 日本評論社 畝山 智香子 (著)

「効くかも」と言われても、実際にはボツになるような研究は数多くあるため、研究者や専門家は簡単には乗せられない。次から次へと発表される研究に関してクールな目を持っているからだ。

「業績のために研究倫理にもとる行動をする科学者たちは一定数いて、お金のために動く周辺の人たちもいる。だからこそ医薬品の安全性と有効性の確認のための試験には自由度が全くないような厳しい取り決めが発達してきたのです。大学の研究者は「研究の自由」という大義名分を隠れ蓑にすれば、研究上の不正行為をするのはずっと簡単です。

そういう実態があるので、単純な間違いの場合も含めて、科学者は一つの論文だけで判断したりはしないのです。ところで一消費者の立場からは、このような不正な論文を見抜くのは非常に困難です。ほとんど不可能といっていいでしょう。つまり、いわゆる健康食品を購入するとき、消費者は圧倒的に不利な取引をしているのです。」

「健康食品」のことがよくわかる本 単行本 – 2016/1/12 日本評論社 畝山 智香子 (著)

健康食品やサプリを売る人たちは、ひとつの研究結果やマスメディアで大いに報道されている「事実」を使うことが多い。健康に興味のある人ほど、多くの情報(テレビや週刊誌)に振り回されてしまう傾向がある。著者も、食品添加物に過剰なまでに注意を払いつつも、発がん性があることが知られている成分を含んだサプリを飲んでいる女性の例をあげている。結論として、著者はこう述べています。

「小さなリスクは避けようとするのに、それに比べて圧倒的に大きなリスクにまったく気がつかないのはそれほど珍しいことではない、と思うようになりました。 これはその人の判断能力が足りないということではなく、その人の周辺の情報が偏ってゆがんでいるということを示しています。普通の人が普通の生活をしていると、テレビや新聞や身近な人との会話などから自然に入ってくる情報が、間違った方向に導くものばかりであるのが現状なのです。」

「健康食品」のことがよくわかる本 単行本 – 2016/1/12 日本評論社 畝山 智香子 (著)

悲しいかな、これが一般消費者の実態なのだ。なかなかどうして、消費者が正しい情報を選ぶのは難しい。まずは、そのことを謙虚に認めていないとならない。これだけネットで情報が氾濫しているので、徹底的にリサーチすれば、良いと喧伝される製品にも賛否両論があることが分かる。それだけでも冷静に考えるきっかけにはなるかもしれない。

それにしても、時に健康被害が出るような商品を嬉々として宣伝する医師たちは、良心を犠牲にしているのか。今の時代「専門家」というだけではなく「どの専門家」を信じるかということも、吟味しなくてはならない時代なのだ。なんて、面倒なんだろうか。いや、いかん、いかん、「面倒」という言葉が、サプリや健康食品につけこむスキを与えているのだと自覚しなくてはならないなぁ。

感想まとめ

サプリを飲もうかどうか迷っている人の頭から冷水をかけるような、冷静すぎる、理性的なツッコミに満ちた一冊だけど、こういう本は絶対読んでおいたほうが良い。

似たスタイルの本として先日紹介した下記の本もおすすめだ。

どちらの本も、専門家と一般消費者の認識が違うということに驚かされる。じゃあ、テレビとか、週刊誌とかに出て、ニコニコ商品の薬効を説明している医師たちって何なんだろうと思ってしまった。

現在、定期的に飲んでいる健康食品(サプリ)がどんどん多くなっているけど、改めて自分の選択について考えさせられた。ビタミンC・ビタミンB・ビタミンE・ビタミンD・ビタミンAなど、メガビタミン主義を実践するにはどうしてもサプリが必要なんだけど。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq