「最初から最後まで」: トム・ホーバス監督の信念と日本代表の躍進
バスケットボール男子日本代表を率いるトム・ホーバス監督（56歳）は、2年前に女子代表を指揮し、彼らを東京オリンピックでの銀メダル獲得へと導いた。この米国出身の優れた指導者は、今回、男子代表を主催国の出場枠を除いて、48年ぶりのオリンピック出場へと駆り立てた。
彼が監督に就任したのは、東京オリンピックで3戦全敗した2021年9月のことだった。彼は「男子チームは、女子よりも高いレベルのプレイができる」との信念を持ち、全世界の強豪チームの高いプレイレベルに、スピーディな動きと3点シュートを中心とした攻撃で立ち向かう戦術を持ち込んだ。
五輪予選を兼ねたW杯の1年前には、代表の候補となる選手は50人以上がリストアップされていた。彼は新しい才能の発掘を目的として、複数回の合宿を実施した。ホーバス監督が全ての選手から求めたものは、一貫してハードワークであった。「良いチームを築くためには、継続的な練習が不可欠。我々は選手たちの自信を高めたい」と彼は信念を持って、選手たちに厳しいトレーニングを課した。
多くの選手がホーバス監督との接触を通じて、その能力を伸ばしてきた。例えば、前回の2019年のW杯と東京オリンピックの代表、27歳の馬場雄大選手は、監督からのアドバイスを受けて自らのプレースタイルを変化させ、シューティングの技術を向上させた。そして、22歳のプレイメーカーである河村勇輝選手（横浜B.C.所属）は、パス技術だけでなく得点能力も磨き、Bリーグの22-23年シーズンで最優秀選手に輝いた。
ホーバス監督の言葉には魅力があり、彼は大会中、選手たちに「信じ続けること」の重要性を伝え続けた。彼らの能力、チームの結束、そして練習の質と量を「世界一」と自負する彼の言葉は、選手たちを困難な状況からも奮い立たせた。
彼は試合前のミーティングで「最初から最後まで」という言葉を繰り返し使った。その言葉が示す通り、彼はブレることなく、その信念を持って日本のバスケットボール界の歴史を新たなページへと導いた。
笠原彰心理学的分析:
トム・ホーバス監督の成功の背後には、彼の独特なリーダーシップと心理的アプローチがある。彼が選手たちに「最初から最後まで」という言葉を強調することは、彼らに終始一貫した姿勢と努力の重要性を伝える意味がある。これは心理学において「一貫性の原則」として知られ、人々は一度公然とコミットメントを表明すると、それに従い続ける傾向があるとされている。
また、彼の「信じ続けること」のメッセージは、選手たちの自己効力感を高める効果がある。自己効力感は、個人が特定のタスクを達成できると信じる能力であり、これが高いとモチベーションや成果が向上すると言われている。
彼が重視する「ハードワーク」の精神も、選手たちの成長心理に影響を与える。心理学者キャロル・ドゥエックは「成長マインドセット」という概念を提唱しており、困難や失敗を成長の機会と捉える姿勢が、長期的な成功につながると説いている。ホーバス監督はこのマインドセットを選手たちに植え付けることで、彼らの潜在能力を最大限に引き出すことに成功していると言える。
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