プレッシャーを乗り越える:メンタルトレーニングの革新的な方法
"チョーキング"とは、普段容易にこなせる技術がプレッシャーのもとでうまくいかなくなる現象です。私たちは皆、この感覚を経験し、その不快さを知っています。
しかし、興味深い研究があります。左手に柔らかいボールを30秒間握ることで、パフォーマンスが改善されるというのです。この方法は、サッカー、テコンドー、バドミントンの選手においても有効であることが示されています。
この技術は、いくつかの理論に基づいています。一つは「明示的モニタリング」で、プレッシャーがかかると運動動作に対する注意が増加し、パフォーマンスに影響を及ぼすというものです。また、特定の脳の活性化パターンが高いパフォーマンスと関連していることも発見されています。
更に、「半球プライミング」という研究があり、片方の手の筋肉を収縮させることで脳の反対側の半球が活性化することが示されています。このことから、左手でボールを握ることにより脳の右半球が活性化し、パフォーマンスが向上する可能性があります。
ドイツの研究チームはバドミントン選手を対象にこの理論をテストしました。結果として、左手でボールを握った選手はプレッシャー下でも安定したパフォーマンスを見せました。
音楽家にも効果があるかというと、2022年の研究では、この技術がヴァイオリニストやヴィオラ奏者のパフォーマンスに顕著な効果をもたらすとは示されませんでした。これは、研究がパンデミック中に行われ、実際の緊張状態を再現できなかったためかもしれません。
笠原彰心理学的分析
この技術が有効である可能性は示唆されていますが、まだ確実な結論は出ていません。しかし、簡単でリスクのない方法であるため、試してみる価値はあるでしょう。もし試したい場合は、プレー前に30秒間、左手で柔らかいボールを握ることをおすすめします。もしくは、ボールを使わずに拳を開閉するだけでも良いかもしれません。
結局のところ、練習とパフォーマンスのギャップを縮めるためには、このテクニックだけではなく、練習の方法を見直すことも大切です。練習室での高いレベルの演奏がステージでも同じように伝わるよう、バランスの取れた練習が必要です。
笠原彰プロフィール:
作新学院大学メンタルトレーニング教授
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