ATMへ行かれたお客様

セルフレジのアテンダント業務は、基本監視業務である。
やる事がなければただ立っているだけの退屈な業務だ。少なからず眠気も襲ってくるため、できればお客様対応をして眠気を飛ばしたいと思う事もしばしばである。
いつも通り数人のお客様がセルフレジで打っているのをボーッと眺めていると1人で打っていた女性が声をかけてきた。
お金が足りなかったらしくATMへ行ってくるから打っている途中のまま置いて行っても良いかという事だった。
そういった事は珍しくもないため私は快く「どうぞ」と言って使用中の立て看板を置きお客様の帰りを待っていた。
しかしお客様は中々戻られず、一抹の不安を抱き始めた頃、先ほどの女性が「すみません」と少し息を切らしながらレジへと戻ってきた。男性と一緒に....。
旦那だろうか?ATMに行っていたはずなのになぜ旦那さんを連れてこられたのか?
不思議に思いながらも看板を撤収し少し離れた所で様子を見ていた。
決して盗み聞きしていたわけではないが、聞こえてきた会話が
「お金足りなくて...。」
「はぁ?いくら?」
旦那らしき人は、自らの財布を取り出し合計金額を見ながら支払っていた。
ATM.…なるほど。
妙に納得してしまった。
決して彼女が彼の事をそう思っているとは限らないが、私の中では彼が移動可能なATMという存在に成り果ててしまった。

これは、私の勝手な解釈なので名も知らない彼に大変失礼なレッテルを貼ってしまった事を反省はしている。
だがこの出来事のおかげで、私を襲っていた眠気がどこかへ行ってくれたのでとても感謝している。

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