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大学生、大地に立つ 終

最終回

 「大学生、大地に立つ」今回最終回を迎えることと相成りました。大学を退学したのでもう大学生ではないのでね。大学を受けて一応合格はしたのですが、結局のところ入学を辞退して4月から就職することにしました。ということで、一年間ありがとうございました。一年で18本、絶望的な投稿頻度で続けて来たエッセイですが、4月からはエッセイ新シリーズを始めていこうと思っておりますので、乞うご期待と言ったところでしょうか。大学生としてはとにかく遊びに費やした一年で、友達とご飯を食べに行ったり、ライブに行ったり、大学をやめて両親には迷惑しかかけてないのですが、4月からは父が経営している会社で正社員として雇われることになりました。一年間で回転率がかなり高い職場のキッチン、フロア、洗い場を経験したこともあり、4月からは一旦国立病院の売店と食堂厨房の調理補助を担当することになりました。4月からは社会人になった僕の日常をお送りすることになると思います。扶養家族では無くなるという現実がすぐ目の前に迫っていることに少々戦慄を覚えております。今後とも僕のエッセイの応援をしていただけたら嬉しいです。

大学に受かったこと、そして学校に行くこととは

 大学を受験して合格をしたのですが、僕はもちろん現役ではなく、一年間遊んでいたので、正直ほぼほぼ勉強をしていませんでした。しかも、現役の時に合格した大学よりも少しだけレベルの高い中堅私立大学を受験したので受かったのは本当に想定外のことでした。私立文系なので科目は比較的解きやすい英語、国語、政経の三教科だったのですが、それにしても現役生とまともに勝負をして勝てる学力が僕に残っていたことに驚きでした。
 この受験を通して僕が感じたことは、義務教育をしっかり受けておいてよかったなということでした。僕は小中学時代はそこそこ勉強を頑張っていて、県内の高校ならどこでも行けるくらいの学力はあったので、やはりその貯金が今の自分に生きているのだなと思います。高校の時に一切勉強を頑張らなかった僕でも大学を現役合格できて、非現役でも大学に受かれたのは多分そこがいちばん大きいでしょう。
 なんのために勉強をするのか?というのは永遠の議題だと思うのですが、小学生や中学生にそれを聞かれたら「大人になった時に困らないように」と僕は答えると思います。中学卒業から四年が経っていますが、大人になってみて本当に、中学時代そこそこ頑張っておいてよかったなと感じています。だからきっと、僕よりも頑張っていた子は、僕よりもずっとそれを感じているのだと思います。
 今の時代、不登校の冒険家というようなインフルエンサーもいますが、やはり小中学校はしっかり通っておいた方が良いなと思います。いじめや精神的な問題によって学校に行けない人は仕方ないと思うのですが、「日本の義務教育は意味が無い」「俺は学校に行かなくても大丈夫だ!」とか思っている人は、少なとも僕は間違いなんじゃないかなと思います。日本人として生きていくためには、最低限義務教育でやる勉強というのは結構大事だなと思うんです。
 義務教育が大事だと考えているのは、もちろん学力面だけではありません。僕は県内では最大級のマンモス公立中学校に通っていましたが、思春期のあの時期に色んな性格や生き方をした沢山の人に出会って一緒に生活をしたことは、人生の財産だと思っています。僕は学校も勉強も大嫌いだったし、中学の時は人間関係もあまり上手くいっていなくて本当に最低の3年間だったと思っていながらも、小学校の6年間とあの3年間がなかったら僕は今よりもっと最低な大人になっていたんじゃないでしょうか。
 学校行事はめちゃくちゃ楽しかったし、修学旅行の班でほぼ交流の無かった女子と同じ班になって、その子とは今でも仲が良いし、中学の合唱コンクールが無かったら僕はきっと下手くそなままピアノ教室をやめていたと思います。今から考えると僕が今でもピアノを好きな土台を作ってくれたのは、あの時あれほど嫌だった合唱コンクールの伴奏の経験なんです。練習が嫌になり、クラスでの自主練に一切参加しないと言い切ってパートリーダーと喧嘩したとき、僕がどうしてピアノを弾きたいのか、それは下手なりにも誰かを喜ばせたいからだと気付いて、表現力だったりピアノへの愛を実感することが出来ました。恋をして振られた同じクラスの女の子とも、今では楽しい思い出話として話せます。その子と隣の席だった時に大爆笑した、2人にしか分からない面白かった出来事や、高校受験の時に受験番号が前後だったから休み時間は僕ら2人だけずっと話していて笑って、面接試験で僕がありえないミスをして笑ったことも、ほんとに大切にしたいです。部活ではじゃんけんで負けたヤツは最後の大会で坊主にしようと人生をかけたジャンケンで負けて、実際に最後の大会は坊主で出場したこと、部活のメンバーで毎日罰ゲームを設けて生活していたら先生にめちゃくちゃ怒られたこと。卒業式の前日に初めて集まったクラスのメンツで担任の先生に送るコルクボードを作ったこと、唯一三年間クラスが一緒で、心を開いてくれなくて寂しいなと思っていた無口な女の子が、卒業式の日に彼女の方から写真を取ろうと誘ってくれたこと、全てが僕の財産になっています。
 考えれば考えるほど、嫌だった思い出よりも楽しかった思い出の方が多いんです。だから、そんなかけがえのない時間を自らドブに捨てているような人を見ていると、胸がチクリとするのです。そりゃあ小中の時は楽しくなかったとか、つまらなかったとか、僕とは全く違う9年間を送った人もいるでしょうが、その辛かった経験もきっと財産になると思います。仕事を始めれば、嫌だからとか楽しくないからとかそんな理由で休むことはできないのだから、「嫌だな、楽しくないな」と思いながらも9年間学校に通い続けたあなたはとてもえらいです。
 僕が今でも連絡を取りあっている友人のほとんどは小中の友達だし、なにか悩んだ時は小中の同級生に相談することがほとんどです。何度も言いますが、義務教育は本当に大事だと思うんです。高校も3年間行って卒業しましたが、高校は本当に行きたい人がお金を払って行く場所なので、大学に行きたいとか、専門学校に行きたいとか、そういう目的が特にない人は行かなくても良いと思います。ただ、日本の最高法規である憲法で義務として定められたことって、やっぱり最高法規と言うだけあって、確固たる意味があるのだなと大人になって心の底から断言できます。
 もし、皆さんの周りにいじめとかを受けていなくてただ嫌だから学校に行きたくないと言っている人がいるなら、学校はこんなに素晴らしいところなんだよ、と僕のエッセイの話でも良いし、自分が義務教育を受けて経験した話でもしてあげて、少しでも学校に行くメリットだったり、行きたいなと思えるような希望を持たせてあげて欲しいなと思うのです。

終わりに

 改めて、エッセイ連載「大学生、大地に立つ」一年間ありがとうございました。この連載がこんなに早く完走してしまうとは一年前の僕は考えもしませんでしたが、これも運命ですよね。もしかしたら一年後の僕はまた大学を受けているかもしれないし、会社の関係で資格を取りに専門学校に通っているかもしれないし、一年後のことは一年後にならなきゃわかりません。最終回は大人になってみた僕が強く思うことを少々熱めに書かせてもらいました。4月から始める新連載では「社会人」として僕が世の中で見聞きしたことや経験したこと、世相や人間のこと、僕なりの視点でお伝えできれば良いなと思っていますので、そちらもぜひ楽しみにして頂けたらなと思います。
 それでは、新連載でまたお会いしましょう。
          一年間、本当にありがとうございました!!!

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