見出し画像

【ミュージシャン紹介】アブダッラー(ダラブッカ)

日本人ムスリムであり、ダルブッカ奏者である、アブダッラーさん。
華奢で均整のとれた顔立ちから想像できないくらいの、力強く、情熱的な演奏をされるその内側にある半生とダラブッカとの出逢い、エジプトでの印象的なエピソードまで、お聞きしてきました。


反骨心からロックの世界へ

千葉県船橋市生まれ、小中学校はサッカー部。
高校生になると、服飾に興味を持ち原宿へ出かけるのが楽しみになります。
3つ上のお姉さまの影響もあり、ダンスミュージックや洋楽ロックを積極的に聴くようになり、クラブやライブハウスに通うようになります。そして高校三年生の時にエレキギターを購入し、独学で弾き始めます。

法政大学の英文科に進学後、ロック研究会に入り、バンドを組み本格的に演奏活動を始めます。主なジャンルはハードコアやパンク。自身も演奏する中、何度も足を運ぶくらい大好きなバンドに出逢います。そのバンドでベースを弾いていたのが空中紳士さん、バンド解散後に彼が始めたのがダラブッカでした。鼓のように横に構えて演奏するスタイルと、硬質な音に一気に惹かれ興味を抱きます。

当時、代々木公園で青空教室を開催していた立岩さんの教室でダラブッカを習い始め、ベリーダンサーのバービーマコさんなどに出逢い、徐々に、カルチャーとしてのアラブに興味を持ち始めます。
そんな大学2年生の時、海外旅行に行く機会があり、インドかトルコかどちらに旅に出るか迷った末、
トルコへ。現地の「キャラバン・サライ」で本場の演奏に触れ、その空気に圧倒され、
「本場でちゃんと学ばなければ」と実感したのです。

心揺さぶるエジプトの香り


トルコから帰国後、前述の空中紳士さんに誘われて参加したパーカッションのセッション会で、エジプト留学から戻られたばかりで当時大学生だった地主大介さんの演奏を聞き、一瞬で引き込まれます。
自分が日本やトルコで見たスタイルや音色とは全然違う、エジプトのダラブッカ。
アフリカ大陸の空気を纏ったその力強さに一瞬で「僕がやりたいのはエジプトのスタイルだ!」と確信。大学の長期休みを利用して、リュック一つ背負って3か月間エジプトへ旅に出ます。
そしてここからエジプトの魅力にどんどんとはまっていきます。

卒業後も音楽を続けたいと思いつつも、親の反対もあり、半導体ベンチャー企業の営業職へ。平日はサラリーマン、土日はライブというハードな日々を過ごしながらも、エジプトへの夢をあきらめきれず、3年で退社。2008年~1年間エジプトへ滞在し、アラブ音楽の基礎を学んだそうです。


アラブ音楽の魅力

アラブ音楽の魅力は2つあるると語るアブダッラーさん。

 ①完璧な様式美がありつつも、即興性と自由度の高さ
 ②千年単位で脈々と受け継がれるスケールの大きさ

1つめは、西洋クラシックのように、きっちりと決まった音楽理論の様式美の中に、ジャズや他の民族音楽のような自由さを兼ね備えていること。
そしてそのバランスがとても絶妙なこと。

2つめは、その歴史の深さや、それだけ長く1つの曲が愛され演奏され続けるのは、現代日本には無い魅力で、その壮大さに感動する。ということ。

また、一時期、能楽を学んでいらしたアブダッラーさん。
最初は日本の音楽とアラブ音楽の類似点を探したくて、始めてみたそうですが、能楽ということもあり、類似点を見つけるのは難しかったそう。
それでも、エジプト人に能楽の鼓の手を披露した時にとても興味を持たれ、日本人としての音楽が自分にもあることを実感し、いつか日本の芸能を自分らしい形で表現したいと思っているそうです。

日本人ムスリムとして

学生時代のバックパッカーとしての旅のなかで、バハレイヤという砂漠の小さな町に行ったとき、道に迷ってしまい途方に暮れてると、
自転車に乗ったお兄さんが目の前に来て話しかけてきます。
「君はイスラムに興味があるだろう。僕にはわかるんだ。」と。
実際に、興味を持っていたこともあり、好奇心もありモスクへ行き、そこでそのまま改宗。町中の人たちが、イスラムについて親切に教えてくれたそう。運命の時だったのですね。

ムスリムになり一番感じたことは、ムスリム同士のつながりが家族のように深いという点。同じムスリムと知ると、人種など関係なくとても親密になれるそう。


本場で感じる音楽


日本のエジプト大使館のスタッフさんのアテンドで、所属する日本人のアラブ音楽バンド「セントヒトヨ」でオペラハウスなど現地での演奏ツアーを開催。
日本人がどれだけ演奏できるのか、疑いの目を持っていた現地のお客さんたち。
それを覆すほどクオリティー高く演奏する日本人の演奏に、驚きそして喜んでくれたそう。またセントヒトヨは歌手がいない器楽編成。歌曲を演奏したとき、お客さんが一緒に歌ってくれたそう。
その大合唱は現地ならではの感動で、とても印象に残る、想い出深い体験だと語ってくれました。

「うた」ありき


今後挑戦したいこと、それは「うた」。叩きながら歌えるようなプレイヤーになりたい。
前述のとおり現地での演奏は、<うたありき>それがエジプトの音楽だ、と語るアブダッラーさん。歌が無いライブはほとんどなく、歌があることが当たり前。
加えて日本で演奏しても、やはり歌がないと一般のお客さんには敷居が高く思われることも多い。メインボーカルとまではいかなくても、自然に歌があるそんなライブにどんどんチャレンジしていきたいとのこと。そのために、現地に滞在中はアラビア語の学校に通っているそうです。

毎年ブラッシュアップへ


大学在学中は、教則本や教則ビデオを使い、独学で学んでいたというアブダッラーさん。退職後のエジプト滞在中は、3人の先生の指導を受けたそう。


 ①ハニー・モルガン氏 伝統的な教授法、口伝。
 ②アミール氏 現代的指導法。音源を解説しながら、彼のメソッドを用いて。
 ③ニグム氏 音大教授。テキストに沿って、リズム譜と口伝を混ぜて。

個性的な3名の師からの指導を受けて、帰国後、自力で消化し、また修行に出てはブラッシュアップ。
それがアブダッラーさんの学びかた。
過去に記録した師匠のレッスン動画をある日見返すと、習った当時は全く気づかなかった新しい発見が常にあって面白いのだそう。
「今は今でいい。正解は無いから。」
常に進化し、アップデートしていける探求心と音楽性が、アブダッラーさんの演奏の魅力なのかもしれません。

アーティストとして


エジプト音楽を音楽家として重心に置きながら、様々な芸術からの影響を受けているアブダッラー先生。
最後に、アーティストとして活動していくうえで、影響を受けた作品や、おすすめの演奏などをお伺いしました。

☆ 影響を受けた本
岡本太郎著 「自分の中に毒を持て」
水木しげる著 「あの世の辞典」 各国の死生観の違いから、文化の違いを知るきっかけに。


☆おすすめの動画
Zar ritual in Egypt  現地のローカルな空気感、生活臭、人間の表情などの参考に


☆おすすめのCD
Voices of the Real World
Haci tekbilek 「Turlu」

そんなアブダッラーさんが講師を務めて下さる講座を、10月に開催いたします!!!



MEMOS-J オンラインサロン
第1回講義 前編
《生活に根差した音楽》-エジプト音楽を中心に-

画像1


講師:アブダッラー先生(ダラブッカ)
ファシリテーター:鈴木未知子


MEMOS_J 主催 オンラインサロン 開講記念 (5)

日時:2020年10月3日(土)18:00〜19:30
場所:Zoom開催 
参加費:3,500円(会員3,000円)
ご予約:090-2477-3391(鈴木) memos.japan@gmail.com
日時:2020年12月13日(日)18:30〜20:00
場所:Zoom開催 
参加費:3,500円(会員3,000円)
ご予約:090-2477-3391(鈴木) memos.japan@gmail.com


※見逃し配信も予定(配信より1か月間)

講義は日本人ダルブッカ奏者である、
アブダッラーさんをお迎えして、お話頂きます!
その演奏と現地での生活から感じた、
その空気を演奏や音源、映像も交えながら、楽しくご解説くださいます♪
アラブ諸国の中から、エジプトを中心に、
《生活に根差した音楽》
を2回の講義に分けて学びます。

①生活について
宗教・衣食住・祭日など、
歴史深いエジプトの暮らしぶりを

②音楽について
古典音楽や近代歌謡、
日本人に馴染み深いベリーダンスやフォークロア、
他にもポップスや宗教音楽など、
それぞれのジャンルにおいて、
どのような人々かどのように演奏し、現地で愛されるのか、
息吹を感じられます。

また簡単なリズムを学び、音源と一緒に叩いてみます。
楽器がなくても、机でも大丈夫。
体も一緒に奏でることで、得られる体感もあると思います!
アラブ編では、エジプトを中心に、
音楽とそれに直結する文化を学びます。

後編については12月を予定しております。
*講義は予定です。会員さまのご希望により、内容は変わることがあります。

講義後のアフターフォローは会員様限定のサービスになりますが、
講義だけの受講は非会員さまでもご受講可能です。
見逃し配信も予定しております。(配信より1か月間)
ご興味ありましたら、お気軽にお問い合わせくださいね。


よろしければサポートお願いします。頂いたサポートは、中東音楽を日本で広める活動費として、大切に使わせていただきます◎