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【Memory of Movies】第7章 007=ジェームズ・ボンドに手を振られた日

2023年、ダニエル・クレイグが‘‘殺しのライセンスを持つ男’’007=ジェームズ・ボンドを演じた最後の作品『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』をついに鑑賞‘‘してしまった’’。
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、公開延期が相次いだ作品であるが、当時は、どこか‘‘延期’’が続いていたことに安堵している自分もいたのだ。
その理由は、もうこれで「ダニエル・クレイグ=ジェームズ・ボンド」とはお別れになってしまうからだ。
私が「007」シリーズを初めて鑑賞したのは、2006年公開の『007/カジノ・ロワイヤル』だった。
そこから全24作品+αを鑑賞することになったのだが、すべての始まりは、ダニエル・クレイグだったのだ。
そのため、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は何かの終わりを感じさせ、大きな寂しさを覚えて仕方ない。
劇場公開時から、最新作を鑑賞することに二の足を踏んでいる状態だったのだが、あれから2年の時を経て、映画を鑑賞していると、ふと、約15年前の思い出深い出来事が頭をよぎった。


「007」シリーズを全作品鑑賞した高校時代

私が初めて「007」シリーズに触れたのは、まだ最近のことである。遡ること15年前になるか…。
高校生だった私は夜な夜な映画を鑑賞することを趣味に、ほとんど毎日、映画を観続ける日々を送っていた。
そんな中、『007 慰めの報酬』の公開が目前に迫り、「007」シリーズの予習を始めたのだ。

それ以前に『007/カジノ・ロワイヤル』は鑑賞していたものの、その時はもちろん第1作『007 ドクター・ノオ』(1962)から見始め、毎日2本ずつぐらいのペースで、シリーズ21作品(当時)を走破した。
任務遂行にあたって重要な役割を果たす特殊なガジェット、画面狭しと駆け回るカッコ良いボンドカー、毎回登場する個性豊かなボンドガールや悪役たち、そして王道のスパイ像を見事なまでに築き上げたジェームズ・ボンド=007…そのどれもがスタイリッシュでカッコ良く、すべての作品で心躍らせたものだ。

6代目ジェームズ・ボンド=007に心を撃ち抜かれる

中でもとりわけ、私の心を掴んだのは、6代目ジェームズ・ボンド=007だった。
当時は2006年に公開された『007/カジノ・ロワイヤル』でデビューを飾ったばかりの金髪のボンドだったが、その圧倒的リアリティを醸し出したストーリー、どこか人間としての弱さやスパイとしての未熟さを纏ったボンド像に心を撃ち抜かれたのだ。

スパイと言えば、私の中ではマット・デイモン主演の「ボーン」シリーズや『ミッション:インポッシブル』といったアメリカ産のリアル志向なスパイ映画を好んで観ていたということもあるのだろう。
それまではロジャー・ムーアやピアース・ブロスナンといった007に目を奪われていたが、全く異なる007の登場が私の運命を大きく変えることになる。

007=ジェームズ・ボンドに手を振られた日

6代目ジェームズ・ボンド=007役を演じるダニエル・クレイグに強い憧れを抱き始めた頃、またとない大きなチャンスが舞い込んでくる。
なんと、懸賞で応募していた『007 慰めの報酬』ジャパンプレミアのレッドカーペットイベントに当選したのだ。
憧れの俳優に会えるということで胸を高鳴らせ、会場となる六本木ヒルズへ。
これがレッドカーペットイベント初参戦だったということもあり、右も左もわからない状態であったことから、開場の数時間前に到着するや、すでに長蛇の列ができており、とてもサインや写真撮影をお願いできるような場所を確保するのは難しそうだった。

ところが、いざ入場してみると、ステージ前の絶好の場所に陣取ることができた。
これはしてやったりと思いながら、監督を務めるマーク・フォースター、ダニエル・クレイグ、ボンドガールのオルガ・キュリレンコ(映画『ヒットマン』(2007)を鑑賞後にファンになっていたため、彼女に会えるのも秘かに楽しみにしていた)の登場を待った。
一人一人丁寧にサインや写真撮影を行う彼らが、壇上に上がるのを今か今かと待った。
ようやく壇上へとやって来た3人は光り輝いていた。
私が初めて間近で見たハリウッドスターは彼らだったのだが、その圧倒的なオーラにただただ圧倒されたのだ。
呆然と立ち尽くしてしまった私は、無我夢中でステージ上のダニエル・クレイグを見つめ続けた。
すると、信じられないことが起きた。
なんと!ダニエル・クレイグが、あの007が、私に向かって手を振ってくれたのだ。
感激のあまり、文字通り開いた口が塞がらなかったが、それに応えるように私は手を振り返した。007は笑顔だった。

そこからの記憶はほとんどないが、あの日、あの場所で、憧れの007から手を振られたことは一生忘れないだろう。
その後も幸運なことに、ハリウッドスターと会うことは多かった。
それでも、私の脳裏に誰よりも鮮明に刻まれているのは、私に向かって手を振る007の姿なのだ。

私にとって最高のスパイは、6代目ジェームズ・ボンド=007。
私が愛したスパイは、誰よりもダニエル・クレイグその人なのである。

(文・構成:zash)

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