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対話とユーザテストからプロジェクトメンバーが納得する課題を抽出する方法と、開発優先度をゲーム的に決めるファンクショナリティ・マトリクスPlus

2年ほど前に書いた2つの記事を再編集して掲載しています。

成功・失敗・頓挫・ペンディングという中途半端な状態問わず、かなりの数のプロジェクトを経験しています。役割はプロジェクトリーダーと言う立場で関わる事が最も多く、その時の最大の悩みは常にプロジェクトの方向性を皆に共感させ、プロジェクトに集中させること。


フェーズ1.対話とユーザテストからプロジェクトメンバーが納得する課題を抽出する方法

まずはプロジェクトメンバーが課題に対して納得感を得るための手法。
ざっくり言うと

3つの視点のギャップから共通認識としての課題を抽出する手法です。

例えばプロジェクトは「ネットショップのリニューアル」とします。

【STEP.1:対話フェーズ】
プロジェクトメンバーで消費者のイメージを語る
プロジェクトメンバーで理想のイメージを語る

ファシリテーターとして、消費者の利用イメージ考えてもらう「問い」を投げかける。

こんな会話ができるように導く。
・商品ページは情報が多いほうが消費者は喜ぶはずだ。消費者は情報を欲している。また競合であるA-SHOPのネットショップは弊社よりも情報が多い。
・トップページのバナーは大きくすれば消費者は絶対に見るはずだ。なぜなら私たちのサイトはバナーが小さいからお客様が見つけにくい。
・ハンバーガーメニューがあれば消費者は使うはずだ。なぜなら最近のスマートフォンサイトの流行りだ。デザインもスッキリできてよい。

なるべく具体的に消費者の理想のイメージを整理します。

「消費者は○○○はずだ。なぜなら」

がとても重要です。


【STEP.2:ユーザーテスト1】
消費者の実際の姿をユーザーテストで可視化

「消費者は○○○はずだ。なぜなら」

の確認です。こちらは普通に

・貴方のネットショップのユーザーテスト
・良いなと思っているサイトのユーザーテスト
・競合のネットショップのユーザーテスト

※ここまでがよくある話
ここに以下「STEP.3」を追加します。


【STEP.3:ユーザーテスト2】
プロジェクトメンバーも消費者の気持ちになってユーザーテスト

消費者の気持ちで「STEP.2」のユーザーテストをプロジェクトメンバーで行います。

確認することは?

・「STEP.1」で言ったこと、「消費者は○○○はずだ。なぜなら」をそもそも本人はできているのか?
・メンバー全員、消費者の行動を理解しているのか?同じ行動ができているのか?例えば「ハンバーガーメニューは使うはずだ」と言ったデザイナーは本当に「ハンバーガーメニュー」を使っているのか?他のメンバーも全員使っているのか?

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まとめ作業、課題を可視化

この手法は、ユーザーテストを共有・共感のツールとして利用して、3つの視点のギャップを可視化するという手法です。

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プロジェクトメンバー自ら消費者の気持ちになり、ユーザーテストを体験することで、
・実際の消費者とのギャップを確認
・メンバー間のギャップを確認
・理想とのギャップを確認
を行います

この手法を私は「UXプロジェクトファシリテーション」と呼んでいます。全員の体験をベースにしているので「腹落ち」しやすい手法と考えています。

コンセプトイメージ

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人事・総務、販売員、営業、店長、デザイナー、経営、研究員、全員が消費者を通してコトとモノをみる。一緒に同じ課題に向き合う。



さて・・・。

課題は明確になった。でもどの順番で開発すればよいのさ!って話はよく聞く話です。優先順位付けは様々な人が絡むプロジェクトはホント難しい。そんなときに利用している手法があります。

こちらも2年前に記事化しているものです。


フェーズ2.開発優先度をゲーム的に決めるファンクショナリティ・マトリクスPlus

アプリケーションなどの開発時には、使える予算も限られている。担当によって優先度は異なる。そんなモヤモヤを解決するゲーム的に優先度を決める方法。

ベースとなっているのは、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社(以降ケンブリッジさん)というファシリテーション型コンサルティングが得意なコンサルティング会社から伝授された「ファンクショナリティ・マトリクス(FM)」これは情報システムの上流工程における要求仕様の範囲や優先度における、“あいまいさ”を排除するための強力な実践的ツールなので私もよく利用しますが全般的に難易度が結構高い。(よいファシリテーターが必要)

まずはファンクショナリティ・マトリクス(FM)について

ファンクショナリティ・マトリクス(FM)の役割

(1)必要な情報システムの全体像を示す
 対象プロジェクトにおいて、情報システムに求められる機能要件を一覧として把握、システム投資のボリューム感を掴む。

(2)プロジェクトとしての優先順位を見える化する
 どの機能を優先し、何を後回しにするか、もしくは実施しないかを一目で分かるようにする。プロジェクトとしてのフェーズ分けを示すとともに、個々の機能の優先度が明確になります。例えば、開発工数を見積ったところ予算を超過した場合に、FMは開発範囲を見直すための重要な情報を提供します。

(3)多くの関係者の共通認識づくり(高い納得感の醸成)
 情報システムの構築プロジェクトには、多くの関係者が関与します。経営者、業務部門、情報システム部門、ITベンダーなどです。これらの関係者をFM作成のプロセスで上手く巻き込み、関係者の共通認識を築きます。これにより、納得感が高く、後々ぶれの少ないプロジェクト運営になります。FMの作成プロセスには、「皆で作り上げたFM」に仕上げるための秘訣が隠されています。

詳しくはこちら
ケンブリッジ・ファシリテーション研究所より
「ファンクショナリティ・マトリクス」~あいまいさの排除なしに、プロジェクトの成功はなし~
「ファンクショナリティ・マトリクス」~納得感のない優先順位は長続きしない~

ファンクショナリティ・マトリクス(FM)の利用イメージ

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ファンクショナリティ・マトリクスPlus(FM+)

繰り返しますが、ケンブリッジさんの「ファンクショナリティ・マトリックス(FM)」は、非常に強力なツールですが、事前の準備から始まるファシリテーターの力量で品質にばらつきがでます。

そこを解決するための手法がファンクショナリティ・マトリクスPlus(FM+)設計思想は活かしつつ、ゲーム的な要素で優先度を決める、そしてファシリテーターのスキルはそんなに高くなくても大丈夫。これが「ファンクショナリティ・マトリクスPlus(FM+)」というツールです。



アプリケーション開発についての相談たまに来るので、これまで有効だった手法を体系的に整理しようと考えています。

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Photo by Icons8 Team on Unsplash




アレとソレを組合せてみたらコノ課題を解決できるソリューションができるよね?と言うパズルをやるような思考回路です。サポートして頂いた費用は、プロジェクト関連の書籍購入やセミナー参加の資金にします。