芸大デザイン科の実技対策に必要な3つの能力と、それらを鍛えるのに必要な時間
色々な受験生を見てきました。
芸大は難しい。何年やっても受からない人もいれば、現役で受かる人もいる。でもぶっちゃけ、何年くらい必要なの?という記事。
大前提
芸大デザイン科実技試験に求められる技術は、2つ3つあります。※思い返せば大事な3つ目があったので追記しました
道具を使う技術
その力を上手く使う構想力
本番力
前半二つは、基礎的な能力です。
令和四年度の平面構成の出題意図でいうなら、
「色彩感覚と技術面を基盤とした〜」→道具を使う技術
「出題に対する理解力と適応力、独自の視点と発想力」→その力を上手く使う構想力
と言うわけです。
さて、この二つの力は大きく違います。
前者は、いわゆる「慣れが必要」と言われるもの。画材の扱いや、精度と呼ばれる、作品のクオリティを出し切る技術の話。これは、習得に時間がかかる。
後者は「考え方」と言われるもの。構成や、テーマの出し方、モチーフの扱いといったもの。掴んでしまえば、明日からでも改善するものです。
この記事に則って、合格ラインを目指せる、Cを取ることを目安に、それぞれどの程度時間が必要なのか、そして、なぜ、現役で受かる人と、何年やっても受からない人が出てくるのか、フォーカスしてみます。
1.道具を使う技術
最短で、一日3時間x週6日x3年分。
浪人は一日6時間使えるとして計算してください。
最低限、Cを取るのに必要な技術力をつけるには、これだけ必要です。
デッサン1年+二次試験2年が内訳です。
高校1年生から始めれば、現役合格に間に合います。
高2・高3から始めた場合、一浪で賄うことができます。
デッサンでCを取るだけなら、一年でできます。
受かりたいのなら、一次試験は受かって当たり前だと考えてください。
多浪することができない場合は、現役一次合格か否かが、浪人するかどうかの、割と良い判断基準になります。(筆者も、高3から始めて一次通過しています。)
これは飲み込みが早い人の場合であり、人によってはもう少し時間が必要になるかもしれませんが、かねがね、技術力ががっと伸びるのは、2−3年までです。
つまり、高一からやってるとか、1浪しているのなら、Cを取るのに十分な技術力はあるはずです。
取れんがな、って人は、これから述べる、構想力、観察力が欠けてます。
2.技術力を上手く使う構想力、観察力
最短で1年半
初めの半年は、道具の扱いが大変すぎて、考えている場合ではないから。
大体一年目の夏くらいから、画材に振り回されないようになります。
そこから考えを洗練させていって、2年目の夏くらいにかなり定まります。
実質、考え始めて、1年かかると言う感じですね
ところが、これが、本当に厄介です。
なぜなら、考えるのが大事って気がつかない人は永遠に気がつかないから。
先ほどの実技力は、練習をしていれば、勝手に身についていきます。
カリキュラムに沿ってやっていれば、3年経つ頃には、必要最低限の技術力がついています。
しかし、こちらは、漫然と通っていると、身につかないんです。
2浪しようが、3浪しようが、気がついていない人は、進捗が0なんです。
何年もやっても受からない人は、ここが抜けているか、学科をサボっているかです。
大事なのは、2年、3年やって上段上がれないってことは、技術じゃなくて、この、構想力、観察力が足りてないってことです。描写練は大事ですが、描写練に逃げないように。受験は描写勝負ではないです。
つけてほしい考え方はこの記事に書きました。
3.本番力
これは、何年やれば身につく……とかじゃない。場数、と言ってもよいのかもしれません。
具体的には、本番のプレッシャーに負けない力です。
周りのペースを把握しつつ、流されず、自分の作品のクオリティを上げられる、よい意味で、マイペースな人は強いです。
ここら辺は「構想力・観察力の鍛え方」という記事で引用した、「メタ思考」という考え方も関連してきます。
試験の解答には、正解がありません。一番クオリティを上げたものが正解です。
「これでいいのかな」「上手くいってるのかな」
「ちゃんと伝わってるかな」「このミス見逃してくれないかな」
「こんなもんでいいんじゃないかな」
みたいな気持ちとの戦いです。
その中で、普段はある講師のアドバイスもありません。
空気も普段の予備校とは違います。試験監督も、受験者が入ってくると緊張するくらいです。
その中で、今の自分の絵がどういう位置付けなのか、把握できている人は強いです。
まとめ
・Cを取れるだけの、技術力をつけるには、最速で、計3年かかる(1日3時間、週6日)
・Cを取れるだけの、構想、観察をつけるには、画材に慣れてから、1年かかる。
→どちらも並行して身につけられるから、計3年かかる(1日3時間、週6日)。
これは、高一から始めて現役か、高三から始めて1浪が目安。そんなに、時間はかからない。
ただし、
・学科の点が取れていないと永遠に受からない(別記事参照)
・続けていれば身につく技術力と違い、構想、観察力をつけるには、意識して身につける必要がある。ここに気がつかないと、永遠に受からない。
・本番に弱いと、それもまた辛いものがある。度胸(いい意味でのマイペースさ)がないと受からない。
これが、多浪しても受からない理由です。