見出し画像

海を聴くということ。〜“忘れていた音”への没入体験。〜


4chサウンドスケープで感じる水の音。

立体音響を用いた非日常体験。
映画館でのサラウンドやVRやメタバース
近年普及が進む空間サラウンド。
これらをより手軽に体感するためのインスタレーションアート展示です。

笹川流れの特殊な海岸が織りなす潮騒の音。
それをより立体的に感じさせるために
水が岩肌で揉まれる音
波打ち際の泡がはぜる音
時折過ぎ行く列車の音
子どもの遊び声

など、複数の水の音を織り交ぜています。

普段、耳を傾けることを忘れていた自然のノイズを
より立体的に再現することで
自分たちの知覚と向き合うアートになります。

サウンドスケープとは?

サウンドスケープとは、ある場所や環境において、そこに存在する音の全体的な印象や特徴を表現した音景です。
ある場所で聞こえる音の種類や大きさ、距離感、響き、空気感などを総合的に表現したものを言います。
今回の展示で例えるなら、海や海岸で聞こえる波の音、砂が流れていく音
水と岩がぶつかる音、泡のはぜる音、鳥のさえずりや、風の音。
このような自然音を収録して再生することで、まるで海の上に立っているような臨場感あふれる音空間を体験することができます。

サウンドスケープとは、ある場所や環境における音の特徴や印象を表現した音景であり、その再現によって、その場所や環境を想像する手がかりを提供するだけでなく、リラックス効果や心身の健康維持にも役立つものとなっています。

サウンドスケープの実用例

  1. リラックス効果:癒しの音楽や、心身をリラックスさせる音楽を用いた音楽療法

  2. うつ病:うつ病患者のための音楽療法。ネガティブな反すう思考を患者にとって身近な自然音を聞くことで一時的に注意を逸らしリラックス効果へとつなげる。

  3. 睡眠障害:睡眠を促進するための音楽療法。白いノイズや自然環境の音を取り入れたサウンドスケープを使用することが多い。

  4. 認知症:認知症患者のための音楽療法。自分が育った時代の音楽や、思い出の曲を用いることが多い。

  5. 音楽とアートの融合:サラウンドに限らず、映像や写真、彫刻などのアートに音楽を添えることでその作品の世界観や説得力に相乗効果をもたらします。都会の喧騒の中に自然を彷彿とさせる作品があったとして、それに鳥の鳴き声やBGMを添えることもこれに該当します。

作品の楽しみ方

周りから聞こえてくる気配に耳をすませてください。
あちこちから聞こえてくる音に身を委ねてください。
そうすることで、ステレオスピーカーでは得られない気配のアートを堪能すると同時に、普段得られることのない「落ち着いた時間」を感じられるでしょう。

実は、サウンドスケープや音楽自体に癒しの効果があるわけではありません。
もちろん、水の音のシンプルな波形が人の心を落ち着かせるなどの説はあります。
ですが、別の角度から音の恩恵を得られることができます。
作品・音響の効果は以下の通りになります。

1。“無音”を作ることで得られる落ち着き。

人間は無音を感じることができません。
もし仮に、周りを防音壁で囲み、一切の反響をなくした空間があるとします(実際に実験機関として無反響室というものが実在します。)
その空間で過ごしたとしても無音というものは存在せず、むしろ一定時間過ごすと次第に自分の心臓の鼓動、息遣い、服が擦れる音などの微細な音が聞こえ始めるのです。
日常においても僕らは店内のBGM、アナウンス、機械の呼び込み音、喋り声、スマホの通知など様々な音の情報に囲まれています。
これらの情報をシャットアウトするのにサウンドスケープという、ノイズを他の音でマスキングするという技術が存在します。
美術館や映画で咳の一つ、足音の一つ出せない様な緊張感を体験したことはありませんでしょうか?
誰かの喋り声や咀嚼音が不快に感じる経験などもあるかと思います。
BGMやサウンドスケープの効果はこういった不要なノイズを他の音でマスキングすること、そして人はその出来た自然音を本能的にシャットアウトすることで知覚上での“無音”を作り出すことができるのです。
矛盾しているように思えますが、ただ不快なノイズがなっているとそればかりが気になってしまうのです。

2。反すう思考の停止(認知シャッフルの応用)

上記のようにただの“無音”と呼ばれる空間を作るだけなら既存のBGMを使えばいいのでは?というロジックもあるかと思います。
「海を聴くということ」という作品はそれ以外にも複数のアプローチを含んでいます。
楽しみ方として「鳴っている音に耳を傾けること、身を委ねること。」を提案しました。
上記にあるサウンドスケープの実用例の中にある音楽療法がこれにあたります。
うつ病に限らず、現代社会のストレスというのは基本的に頭のなかで起きている膨大すぎる情報を処理しきれないことにあります。
さらに、日常的にあった不幸なこと、仕事での重要なやりとりなど、無意識的に人は気になることを何度も繰り返し思考してしまうのです。
こうしたストレスに対しての睡眠療法として「認知シャッフル」という睡眠法があります。
詳しくは割愛しますが、要するに嫌な反すう思考を他の思考で強制的に留めてしまおうというアプローチの一種になります。
作品はこの技法の応用になります。
サラウンドの効果によってより自然に海にいるかのような没入感を感じて
さらに耳を傾け続けることで、その人に海のイメージ、海でのゆったり過ごしている出来事を連想していただくのです。
作品の音は、ただ波の音を録るだけではなく、風の少ない穏やかな日でありかつ波の音が特殊な地形を選定しています。
年間を通してとても希少性の高い音になります。また同じようなパターンでも微細に違うランダマイズされた音場をゆっくり堪能してください。

3。ボーッとすること自体に集中する贅沢な時間

作品のコンセプトにもなりますが、これは時間経過を楽しむ知覚のアートです。
作品に集中すること、心がボーッとする瞬間自体を堪能する
マインドフルネス瞑想など科学的根拠のあるメンタルケアの美味しいところを引き出すための音作りを心がけております。
療法で言われる難しい方法に意識する必要はありません。
ただ、聴こえてくる波の音を微細に感じ続けるだけでいいのです。

SNS然り、TVの流行然り、物事やコンテンツはとてつもない速さで消費されていきます。
美術館の鑑賞も滞在時間がとても短くなりつつあります。
そんな現代において、優雅な時間の過ごし方の一つとしてこの作品を堪能してもらえればと思います。

今後の展望・発展

アートとのコラボ、学校行事での新たな自由研究としての体験など。
実用性を目指し以下のような展望として予定しています。

教室や展示、ショップに向けた騒音マスキングの提供

新しいBGMの形として提供します。ヨガ教室、小規模展示など、騒音を極力無くしたい場合に用いられるサウンドスケープをサラウンドに落とし込むことでより効果を高めます。
具体的には、住宅街での車の音や喧騒、話し声や自分の思考の声などどうしても聞こえてきてしまうものに対し、より没入感の高い音景を展示することで騒音に対する注意を逸らすことで“無音”に近い感覚を再現します。インストラクター側は「聴こえてくる音に集中しましょう」の一言で説明がついてしまうなどのメリットも挙げられます。

子ども向けのインスタレーションアートラボ

新しい自由研究の形や聴覚体験を提供します。日常の音景を収録するだけでなく、水の落ちる音、泡となって水面へ登っていく音、近づく足音、資材置き場のパイプから風の抜ける音など
これらをスピーカーを通して拡大して聞いてみることで、まるで自分が小人になったかのような、もしくは音を顕微鏡で覗くような非日常的な経験をすることができます。

ストーリー×サウンドスケープ

ストーリーテリングを組み込んだサウンドスケープは、リスナーに物語を聴かせることで、感情を刺激する効果があります。サラウンドシステムを活用することで、臨場感を高めることができます。例えば、森や海の中にいるような環境音とともに、物語を語る音声を4chサラウンドで再生することで、より深い感情体験を提供できます。

幻想体験

自然音に限らずサラウンド制作は普段の楽曲制作とは異なったアプローチをいたします。
チームラボを彷彿とさせるような音の空間演出をゼロからプロデュースすることも可能です。
ハロウィンの演出や深海の体験など非日常的な幻想的な音を提供することができます。

展示事例

展示をいくつかで行うことができました、実際の会場の雰囲気など
以下URLにまとめています。(23年6月16日更新

海を聴くということ

サラウンドによる朗読演出


最後に

上記の展示企画はメメノメメの10年に及ぶ音響経験や知識、楽曲制作を活用したアートの研究展示です。
展示場所の提供や、コラボ等ぜひお待ちしております。
新潟に魔法のような空間を作りたいと常々思って取り組んでおります。
応援のほどよろしくお願いいたします。
作品などに関してコメント頂けたら泣いて喜びます(笑

連絡先

メメノメメ
mail:katamichi001fujisaki@gmail.com
tw:@memenomeme_xxxx
Insta:memenomeme_art/memenomeme_day

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?