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コーポレートベンチャーキャピタルCVCの実務 vol.4『投資判断の方程式』

【即戦力となる実践的な考え方とテクニックが学べるnote】
(⚠有料化を検討中の記事)

足を引っ張る大企業』『ベンチャーを支える大企業』どちらになるかはCVC担当の腕次第。

前回記事vol.3はこちらから。


〚投資判断の方程式〛
=①市場成長性
×②経営者の魅力度
×③ビジネスモデルの優位性

前回に続き①市場成長性の話を進めていきます。


〚投資検討(意思決定プロセス)で起こりうる失敗〛


③リスク認識

〚それってリスクじゃないの?〛


 リスクに対しての感じ方は人それぞれです。そのため、新規事業上のリスク認識に関しては非常に意見が分かれるところです。
たとえば、IoTデバイスで行動データを取得することが必要なサービスでは、個人情報保護に関するリスクと隣り合わせです。弁護士によって違法性の解釈が異なっていたり、今後の法改正により違法行為となり得るケースもあります。
そうしたことを考慮すると、このサービスは個人情報保護法のグレーゾーンに入っている可能性が大いにあるわけです。
この時、これを投資取り止めに値するリスクだと考える人と投資リターンと比較して許容の範囲内だと捉える人とに別れることがあります。
更には事業会社ですから既存事業のレピュテーションリスクとの兼ね合いでこの新規事業のリスクを「許容できない程度である」と考える人もいるでしょう。
例えば、私の会社はリテールの中でも一次流通(新品/本物)を取り扱っています。二次流通(中古/加工品)に関わるリユース事業のような領域には非常にセンシティブだったりします。
このように市場のリスク認識というものをきちんと整理することが非常に重要です。
そしてこのリスクに対して共通認識を持つことは非常に難しいことだと痛感しています。やはり新規事業のリスクというのは前例が乏しいですから定量評価ができません。するとどうしても「受け手のリスク許容度やその事業領域の経験則」に依存してしまうわけです。

では、どうしたら良いのでしょうか?

 ここでの私の実践テクニックとしては『権威による証明』と『事前の対策案』の2つが有効だと考えます。
前提として重要な視点は『経営陣のリスクマネジメント』です。リスクに対してどのような認識と対策を持っているか?で評価することです。
いわば、不確実性に対してどれほど経営が真摯に向き合い、考え抜いているか?というスタンスを評価すべきだと考えているというわけです。


『権威による証明』

 個人情報保護の事例でいえば、個人情報保護領域に精通した弁護士の意見書があれば、法律の解釈に対してのガバナンスを保つ最大限の努力をしていると評価できるでしょう。
 それ以外では、たとえば政府への情報協力や関連する協会への参加など、積極的に個人情報保護に対して会社として前向きなスタンスが市場に認識されていれば、評価に値すると考えます。
 つまり、このリスク=不確実性に対して逃げるのではなく、主体的に向き合い市場全体として課題解決に貢献しようとする高い視座が見られるかどうかが重要だと考えます。


『事前の対策案』

 これも個人情報保護の例でいえば、『個人情報の管理システムを予め高品質に構築する』『データ加工の際に抽象度を上げて個人が特定されないようなオペレーションを構築する』『プライバシーポリシーを柔軟に変更する』『会社から主体的に個人情報保護への取組を対外的に発信する』など、リスク対策すらも事業運営に織り込み済みであれば、非常にポジティブな評価に値すると考えます。

以上、市場成長性の評価を議論する際のつまずくポイントを説明しました。


〚まとめると、こう〛

①データの信憑性
 データの出どころを見極め、意図的に操作された情報を排除し、背景の共通認識を持って議論する

②環境変化の解釈
 消費者(顧客)の行動や価値観の変化は直接消費者(顧客)に聞いて得た情報が一番確かな証拠になる

③リスク認識
 リスクは定量評価できないので、権威による証明や対策案のクオリティで評価する


続いて、『経営者の魅力度』に話を進めていきます。

↓続きの記事
コーポレートベンチャーキャピタルCVCの実務 vol.5『投資判断の方程式』 https://note.com/mem_yu/n/n639780b736b2

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コーポレートベンチャーキャピタルCVCの実務
『投資判断の方程式』
vol.1 https://note.com/mem_yu/n/ncf37cb4ada05

vol.2 https://note.com/mem_yu/n/nbbd472dec8bc

vol.3 https://note.com/mem_yu/n/n32aa50231a8a

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vol.35

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