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西洋菓子ピュイダムール

「愛の泉」という、なんともストレートな古典ロマンティックな西洋菓子をご存知ですか?

神戸の名店「パティスリーモンプリュ」で初めて頂いた「ピュイダムール」

シンプルな見た目とのギャップに驚かされました。

パティスリーモンプリュ
ヨーロッパの街角みたい

ふんわり口の中で溶けるクリーム。
中にピンクグレープフルーツを忍ばせて。
こんがり苦味のキャラメリゼで覆われた。
苦味と甘味と酸味が同時に、はじめて感じる複雑な味。

右 ピュイダムールの断面です

後ほど、その意味が「愛の泉」だと知り、大胆なネーミングにさらに驚きました。

パティシエの創作力は無限大です。

泉のように溢れる愛。
その形はさまざまで、共感、尊敬、嫉妬、忍耐、笑顔、包容・・・

愛のように複雑な味を小さなお菓子に詰め込んでいます。

食べた時は意味もわからず、どれも美味しいけど名前覚えられないね、と言っていました。が、ひとつひとつに意味があり、パティシエの意図を考えてみると、お菓子は本当に奥が深いです。

千早茜さん「西洋菓子 プティ・フール」を読みました。

街の人に愛される商店街の洋菓子屋さんを営む祖父と、フランス有名店で修行をして帰国、創作意欲あふれる孫娘が作るお菓子と、周りの人達の連作短編小説です。

表紙と本屋さんのPOPに惹かれて手に取りました。

この題名とPOPに書かれていた「祝直木賞受賞」の文言に若干の違和感も感じながらも、瀬尾まいこさんのような爽やかな物語かな、と思っていたら。

「本屋大賞」ではなく「直木賞」。納得でした。

著者がテーマを「片思い」とおっしゃっていたように、西洋菓子を通じて内面のどろっとした部分も「背徳の赤」とか「褐色のフォンダンショコラ」のような表現で出てきます。

どこにも吐き出せない負の感情が、スイーツを食べることによって少し浄化される。

とはいえ、完全に「さあ、明日から頑張ろう!」ではなく、闇に入る手前でスイーツの甘さがふわっと救ってくれる。
少し危うさを残しつつ、前を向く。

本作では、「嗜好品」であるお菓子が登場人物の感情とリンクして描かれていて、「嗜好品は不要なもの」と何度も言われていますが、読み終えれば、むしろ必要なものに変わっているのです。

神戸で食べた「ピュイダムール」もスイーツのひとつとして登場しました。

この本を片手に、もう一度食べてみたい。
また違った味わいを楽しめるかも。

千早茜さん、他の作品も読んでみたくなりました。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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