【小説】私を支配するもの
今回はお題の記事となります。画像は『みんなのフォトギャラリー』から使わせていただいています。ありがとうございます( ´ ▽ ` )
いつもとは違う現実とフェイクを混ぜたショートストーリーです(*´꒳`*)
行きたくないな
靴を履く動作から次に進めない。
理由は分かっている。B子のことだ。
私はシホ。大学1年。やっと受験が終わってやっとキャンパスライフが始まって。
なんとなく入ったイベントサークル。
そこで、新入生だけでご飯を食べに行くことになった。それなりの人数。くじ運がない私は幹事になった。B子と一緒に。
B子は違う学部で、私が今まで友達になったタイプとは違った。何とか幹事をこなす為にも、上手くやらなきゃ。そう思った。
でもうまくいかない。B子との会話は一方通行。彼女と場所や人数の把握の仕方で話がしたいのに。
「えーそうするの?」と、提案はせずに、私の提案を却下する。まとまらない。どうしよう。焦る。
煮詰まったところに、話しかけられた。
「どした?」
明るい声。タケルだ。
中学の時、同じ学校だった、タケル。
2年の時同じクラスだった男の子。
あの時よりもぐんと背が高いけど、笑った顔は同じだった。
ため息をついて事情を話す。
タケルはすぐに言った「手伝おっか?」
そこから展開は早かった。サークルメンバーのカオリという子もいつの間にか幹事の手伝いをしてくれた。
何事もなく食事会は始まって、ガチガチの挨拶も終えて、会費も回収済み。あとはもう終わるのを待つだけだ。
そこで、視線を感じる。少しキツイくらいの。
B子とレイカだ。レイカはサークルの1年の中心メンバーで、B子はいつもレイカを褒めたり、おだてたりしていた。
その視線にモヤモヤしていると、カオリがやってきた。
そこで知った。「一緒に幹事になったのに、シホ(私)が仲間外れにして、勝手に決めたってウワサしてるよ」
心がざわつく。不信からもはや恐怖に変わる。
後のことはあまり覚えてない。
タケルが何か言っていた。でも上の空で聞こえなかった。
行きたくないな
なんでB子は、あんなこと言ったんだろう。そもそもなぜ手伝う気が微塵もない感じだったのに、仲間外れなんて言ったの?
どうして?と、共にB子のことばかりが頭を巡った。モヤモヤとした重たい感情。
立ち上がりたいのに、立ち上がれない
沈んで、沈んで深いところまで落ちて、ふと気付いた。
私、B子のことばかり気にしてる
不思議だ。どちらかと言うと苦手。いや恐怖すら感じる相手なのに、こんなにも自分を支配してる。だからずっと気分が落ちてる。ずっと、彼女の行動や言葉の意図がわからなくて、同じところをぐるぐるしていた。
なんか、それ時間の無駄じゃない?
ふと、そう思った瞬間、スマホが鳴った。
タケルだ。出るといつもの明るい声で言う。
「クレープ食べにいかない?」
今日はサークルの日。だから気が向いていないのだ。タケルもサークルに行くはずだ。
また、ため息をついた。
「私、サークルに行きたくなくて。。」
しばし沈黙が続いた後、タケルが言った。
「やっぱクレープに行こう。サークルは辞めよう、2人で」
え?
驚きと共に体が軽くなる。しばらく話して落ち会う場所を決めて、電話を切った。
すぐに立ち上がり、約束に向かう。
実はまだ、B子がチラつく。よほど彼女のことを考えていたせいか、なかなか私の頭から離れてくれない。
でも、もう終わりにしよう
重たい気持ちに左右されて、自分を見失ってるばかりじゃつまらない。
行きたくないところには行かなくていいんだ。
逆に、見えてなかった大事なものが見えてくる。タケルがいつもの笑顔で手を振っている。
これからは、大切なことで頭の中をいっぱいにしよう。そう決めた。
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