消えた夏の記憶

何故だか分からないけれど
私には夏の記憶があまりない
今気づいたのだけれど
夏はどんな服着てたのだろうって
思い出せない
私の記憶にある私は
いつも冬の制服か
黒い冬服で
外を歩いている
とてつもなく寒い夜の中を
歩いている
帰る所も行く所も無くて
朝まで外にいた
心の空洞に比べたら
寒さに耐えることぐらい
どうってことなかったから
私の消えた夏の記憶に
消えてしまった意味があるなら
私はそれを追ったりしない
消えてしまった私に
「ごめんね」って言うけど
思い出さない方がいいから
消えたんだって
今は理解できるから
夏の私だけじゃなく
消えてしまった沢山の私は
未来の私を守るために
消えたのだから
「ごめんね」
私は消えた私を
もうこれ以上思い出したくはないから
今ある記憶だけで
充分苦しんでいるから
「さよなら」
消えた私が望んだように
全て無かったことにして
全て無かったことにした

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