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1994年 SideA-4「My Sweet Home/小泉今日子」

小泉今日子作詞 小林武史作曲・編曲

・「スウィート・ホーム」(TBS系 1994/1/9~3/27)主題歌

 TBS系日曜9時枠1月クールドラマ主題歌。小泉今日子がお父さんを亡くした直後の作品で、切なさがポロポロこぼれ落ちるような歌詞世界を綺麗にトレースした小林武史の胸キュンポップなアレンジがまた見事。小泉今日子のベスト作のひとつであり、同時に小林武史の最高傑作と言ってもいいだろう。

 「スウィート・ホーム」は、1991年4月クールの「それでも家を買いました」のラインを継ぐ一種のロールプレイングドラマで、今回は小学校受験=いわゆる「お受験」がテーマであった(おそらく「それでも~」の原作者でもあった矢崎葉子の「うちの子は受かります」というノンフィクションノベルが元になっていたんだと思う)。この時期旬なトピックだったお受験をメインテーマに持ってきたタイムリーさに加え、それなりに深刻なお受験物語をあくまで明るくドラマ化しきったことが成功の原因だろう。

 その任を担ったのは、貴島誠一郎プロデューサー&西荻弓絵脚本&山口智子・野際陽子コンビの「ダブルキッチン」チームである。特に西荻弓絵の脚本は過不足なく素晴らしく、のちに「ケイゾク」「SPEC」で別の鉱脈を見出すまで、「スウィート・ホーム」は長い間彼女の代表作だった。また、山口智子・布施博の主人公一家を中心に、段田安則・深浦加奈子、金田明夫・高樹沙耶らお受験を控えたほかの家族たちも、各々キャラを立たせつつ一貫して愛ある視点で描かれており、そのこともドラマの後味をよくしている(段田、金田らはこのドラマから一般的な知名度を上げていったといってもいい)。そしてやはりなんといっても山口智子が素晴らしい。間違いなくキャリアのピークを迎えたと言ってよく、ここからしばらく向かうところ敵無し状態が続くことになる。

 そしてもうひとつ。この主人公一家は劇中でとてもよくビールを飲む。当時山口智子はサントリーの「ダイナミック」というビールのCMに出ており(「それがあなたのいいところ」というコピーが流行った)、布施博はアサヒの「エール6」というビールのCMに出ていたため、二人はそれぞれ自分が宣伝している銘柄のビールしか飲まなかった(ほかの出演者はまた別のビールを飲んでいた)。この複雑なミッションをクリアするために、毎エピソード毎エピソード、実に様々な設定と演出で二人はビールを飲んでおり(直接缶ビールを飲むことが多かったが)、それがなかなか楽しかった。

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