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1993年 SideA-8「Forever Friends/REMEDIOS」

REMEDIOS作詞・作曲・編曲

・「if もしも 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(フジテレビ系 1993/8/26)主題歌

 「if もしも」は、人生のある場面で現れる選択肢のどちらを選ぶかで生まれる2つの異なるストーリーを、それぞれ別々に描く一種のオムニバスドラマ。「世にも奇妙な物語」の流れを汲んだ単発ドラマシリーズで、「世にも~」同様タモリがストーリーテラーに起用されていた。2つの物語はあくまで並行して進んでおり、エンディングが2つあるというのがドラマの売りになっていた。

 しかし中には例外もある。「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」はその例外の一編で脚本・監督は岩井俊二。テレビドラマとしては異例の日本映画監督協会新人賞を獲得し、のちに劇場でも公開、文字通り岩井俊二の出世作となった伝説的な作品で、2017年には新房昭之総監督、大根仁脚本でアニメ映画としてリメイクもされた(広瀬すず・菅田将暉ほかが声優を務め、DAOKO×米津玄師の主題歌もヒットした。劇中、広瀬すず演じるなずなが「瑠璃色の地球」を歌ったことでも話題になった)。

 出演は山崎裕太、奥菜恵、反田孝幸。色調や画質もフィルム風に加工され、短編としての完成度が非常に高く、“選択”自体に重きを置いていた同シリーズの他作品とは明らかにスタンスが異なっていた。本作でも確かにひとつの分岐点から分かれる2つの結末が描かれてはいるのだが、これを2つの独立したエンディングと捉える人はあまりいないだろう(「下から見るか? 横から見るか?」というタイトルもこのシリーズが本来目指した意味では適切ではないが、結果的に詩的な余韻を残す実に味わい深い選択肢になった)。

 小学校の夏休みの、限りなく淡く、でも真っただ中の当人にとってはとてつもなく切実な心象風景を、ずば抜けた瑞々しさで切り取った珠玉の青春ドラマ。その新鮮さは今も全く色褪せることはない。むしろその後のテレビドラマがいかにこうしたナイーブさに鈍感になっているかがよくわかる。

 そして音楽。「ifもしも」シリーズ全体の音楽は「世にも~」同様蓜島邦明が手がけていたが、この作品では初期の岩井俊二作品の音楽を一手に手がけ、のちにTVアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」の音楽などでも注目されたREMEDIOSが担当している。

 REMEDIOSとは、1984年に松任谷夫妻の全面的なバックアップのもとデビューしたガールシンガー・麗美の別名。劇中のクライマックスに流れる主題歌「Forever Friends」は、まさに物語全体を司るシンボリックな一曲。事実上連続ドラマシリーズの1つのエピソードで流れただけの曲なので、CD発売もされず長い間幻の曲であったが、95年の劇場公開後にサントラ盤が発売され、その中に収録された(2017年にリメイクされたアニメ版でもDAOKOによってカバーされていた)。

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