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2023年3月の記事一覧
夜露の分だけ宝物が増えた。
ちいさなひとがムスカリの茂みで丸くなって眠っていた。女の子がいくら呼んでも眠っていた。ちいさなひとは音楽を夢みていた。白いチューリップは頬を染めて海に憧れていた。ほのかな潮風が春をほどいた。ちいさなひとのポケットの中で夜露の分だけ宝物が増えた。
このままならない庭をそよがせて進む。
きつねは思った。ままならないし、3歩進んで2歩下がるのがおれの日々なんだろうな。上手くいくのをイメージしすぎるとよくない。今日もなにかあるだろうしなにか後退もするだろう。気取らずに実直に俺のこのままならない愛らしい庭をそよがせて進もう。
しっかり勝つには、しっかり負けないとあかん。
カエルの賭博士が言った。ツキっちゅうもんはなんだかんだで均等や。だからしっかり勝つにはしっかり負けなあかん。人生もや。いつも勝たんでええ。みんな、いつも教、に入っとるけどいつも勝っていつもお洒落でいつもきちんとなっとらんくてええんや。6勝4敗で勝ち越せばええ。しっかり負けながらな。
なにひとつうまくいかないときでも、ごはんは美味しくできる。
憂鬱で不調の時でも
ごはんは美味しくできる。
なにひとつうまくいかないときでも
ごはんは美味しくできる。
赤だしのお味噌汁
辛子明太子のせごはん
ホタルイカの沖漬け
だし巻き卵
いちご
地に足をつける。
人生は必ずリカバリーできる。
世界の果てのある国では学校で、成功するための勉強ではなく、リカバリーを教えた。だからその国の子供たちは、みんな、転んでも、すくっと立ち上がった。傷にも失敗にも騒ぎたてず、すくっと立ち上がった。相手を傷つけてしまったら時間をかけてつぐなった。人生は必ずリカバリーできると教えられた。
白鳥のレコードを抱き抱えて。
きつねは、きょうも何もうまくいかなかった、と思いながら帰途についた。明日は憂鬱で将来は不安で過去は思い出したくなかった。きつねは前から欲しかった白鳥のレコードを買った。それを抱き抱えて夜遅い電車に乗った。眠りに落ちた。白鳥のレコードからオーロラがそよぎ、きつねの頬をなでた。